8気筒以上のFRがフルサイズラグジュアリーの条件だった
国産ショーファードリブンといえばトヨタ・センチュリーを思い浮かべるが、センチュリーはドメスティックカーであり、グローバルマーケットで認知される国産ショーファードリブンとしてはレクサスLSの一択という状況が続いている。そして、このカテゴリーは北米では「フルサイズラグジュアリー」と呼ばれることが多い。
ミニバンやSUVは大型でもFFなのに高級セダンがFRを採用するワケ
ライバルとしてはメルセデスベンツSクラス、BMW7シリーズ、ポルシェ・パナメーラ、アウディA8といったところだろうか。北米系ブランドでは、リンカーン・コンチネンタル(フォード)やキャデラックCT6(ゼネラルモーターズ)といったところが、このカテゴリーに分類される。例外もあるが、かつては8気筒以上のエンジンを積んだFRプラットフォームのモデルが、フルサイズラグジュアリーの条件だった。
かつて、日産は同社の高級ブランドである「インフィニティ」において、このカテゴリーにチャレンジしている。それが日本では「インフィニティQ45」として販売された4.5リッターV8エンジンを積んだモデルだった。また、ドメスティックカーであるが、トヨタ・センチュリーに先んじて日産「プレジデント」というV8エンジンのショーファードリブンも用意していた。1990年代には、インフィニティQ45のロングホイールベース版が3代目プレジデントになったことも記憶に残る。
一方、国内ではフルラインアップメーカーのイメージが強いホンダだが、じつは「フルサイズラグジュアリー」については、これまで手を出していない。同社のフラッグシップである「レジェンド(アキュラRLX)」はカテゴリーとしては、「ミッドサイズラグジュアリー」とするほうが適切だろう。欧州風にいえば「Eセグメント」にあたる。フルサイズのセダンについては、ホンダは過去に遡っても手掛けていたとはいえない。
単にクルマを作ればいいわけじゃないのが「Fセグ」の難しさ
北米でいう「フルサイズラグジュアリー」とは、欧州的な分類では「Fセグメント」となる。このカテゴリーでは乗り心地や運動性能といった機能面だけでなく、Fセグメントにふさわしいブランド価値も求められる。いや、ブランド価値のほうが重要なカテゴリーといえる。
冒頭にあげていないブランドでいえば、ジャガー、マセラティ、アストンマーチン、ロールスロイス、ベントレーといったそうそうたるブランドが存在感を競い合うのがFセグメントなのである。資本が変わり、中身も伝統的とはいえなくとも、歴史に裏打ちされたブランドバリューがなければ勝負権さえ得られないのがFセグメントである。
そして「レクサス」はFセグメントでいえばブランドとしては新参者だ(ポルシェはFセグメントへの参入は最近だがブランドとしては古い)。このカテゴリーで認められる存在になったというだけでも大変なことである。『トヨタができたのだから、日産やホンダは何をしているんだ』と思ってしまうのは間違いだ。このセグメントへの参入はフォルクスワーゲンも試みたが、うまくいっていない。日産にしてもインフィニティ・ブランドにおけるセダンのトップモデルは北米では「G50(日本でいうスカイライン)」となっている。
トヨタだからこそ「レクサス」ブランドを育てることができ、「LS」を認めさせることができた、と考えるのが妥当だろう。他の国産メーカーが手を出さないのではなく、手を出せないといったほうが正しい。
なお、Fセグメントへ参入をはじめたのが韓国ヒュンダイの高級ブランド「ジェネシス」。たった数年でブランド価値を高めることは難しいだろうが、次なる新ブランドして認められるかどうか、注目といえる。
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