■4WDにはいくつもの種類がある?
2019年から2020年冬は暖冬少雪の予報が出ていますが、それでも雪国に行けば氷雪路から逃れることはできません。地元のドライバーなら心配はありませんが、都市圏からウインタースポーツや帰省などで雪国に行くというドライバーにとっては、氷雪路は不安がつきまといます。
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なかには「私の愛車は4WDだから大丈夫!」という人もいると思います。でも、本当にあなたの4WD車は雪道で無敵なのでしょうか。
じつは4WDだからといっても、一部のシステムでは留意しておかなければならないこともあるのです。
4WDシステムを大きく分けると、3つに分類することができます。まずは、世のなかにもっとも出回っている「フルタイム4WD」システム。次に、20世紀初頭に生まれた「パートタイム4WDシステム」。そして昨今のオフロードタイプSUVなどに見られる「フルタイム+パートタイム混合型4WD」です。
まずフルタイム4WDは、軽自動車をはじめとする乗用タイプのクルマ、スポーツカー、そしてSUVなど多岐に渡るジャンルのモデルに採用されています。
センターデフを有するため、乾燥した舗装路を走行しても「タイトコーナーブレーキング現象(ブレーキをかけたような状態)」が抑えられ、スムーズかつ安全に走ることが可能です。
パートタイム4WDはかつて多くのクロスカントリー4WD車に採用されていましたが、現行型の国産車ではスズキ「ジムニー」とトヨタ「ハイラックス」、そしてスズキ「キャリィトラック」やダイハツ「ハイゼットトラック」などの軽トラだけになりました。
2WD、4WD、4WD Lowの切り替えができるだけでなく、前後輪軸がプロペラシャフトによって直結状態になるため、常に前後50:50の駆動力が得られ、悪路走破性に優れているのが特徴です。
最後はフルタイム+パートタイム混合型4WDですが、センターデフを持ちながらも、4WD、4WD Lowの切り替え、もしくは2WD、4WD、4WD Lowの切り替えができるサブトランスファーも有しています。
ランドローバー「レンジローバー」やジープ「ラングラー」、トヨタ「ランドクルーザー」、三菱「デリカD:5」などがこれに当たります。
舗装路などではフルタイム4WDとして軽快に走り、未舗装路に入ったらセンターデフをロックしてパートタイム4WDとして走るといった使い方が可能で、走行状態に合わせて駆動トルクを細かく制御する電子デバイスも充実。もっとも先進的な4WDシステムです。
この手のクルマは最低地上高も十分に備えていますので、どんな道に出かけても無茶な運転さえしなければ、まずスタックなどの心配はないでしょう。
4WDは四輪にエンジンから駆動力を配分して、四輪の力で進むという駆動方式です。前2輪駆動のFFや、後2輪駆動のFRなどの駆動式と比較すると、「引っ張る力」と「押す力」の両方を有しているため、氷雪路や未舗装路などで安定した走りを得ることができるのです。
しかし、これはあくままでも理論上の話。愛車に「4WD」「AWD」「4×4」と書いてあるからといって、すべてのクルマがどんな路面でもガンガン走れるわけではありません。
たとえば、フルタイム4WD。じつはこれは非常にざっくりとしたカテゴライズなのです。「フルタイム」といえば常時という意味ですが、常に4WD状態で走っているクルマもあれば、普段は前2輪駆動で走っているクルマもあるのです。
通常は2WDで走り、駆動輪が空転し始めると、自由輪に駆動トルクを配分する4WDを「スタンバイ4WD」や「オンデマンド4WD」と呼びます。最近の乗用車に採用されているほとんどの4WDシステムがこれです。
スタンバイ4WDには、「パッシブトルクスプリット式」と「アクティブトルクスプリット式」が存在し、この前者のシステムに乗っている人は、雪道でとくに注意が必要です。
センターデフを有し、しかもそのデフに何の差動制限装置も持たないシステムの場合、4輪のうち1輪でも空転してしまうと、ほかの3輪は止まってしまうという機構上の弱点があります。
たとえば、雪国で駐車してドカ雪が降った翌日、出発しようとしたら1輪が空転しただけスタックして出られないということが起こりうるのです。
これを防止するのが、電子制御式ビスカスカップリングなどの差動制限装置をセンターデフに使ったアクティブトルクスプリット式のフルタイム4WDです。
1輪が空転しても、センターデフの動きを瞬時に自動的に制限、そして駆動トルクの配分調整をおこなうことで、前後駆動トルク50:50の直結(センターデフロック)状態、もしくはそれに近い状態にします。これにより、脱出性や雪道での走行安定性を図っているわけです。
パッシブトルクスプリット式の4WD車の場合は、スノードライブには必ずチェーンやスコップ、脱出プレートなどを携行し、もしものときの対策をしておきましょう。
アクティブトルクスプリット式4WDのクルマでも、氷結路ではスタッドレスタイヤが十分にグリップ速度を保って走るのも、重要なことです。もし滑り出したら、2WD車よりもリカバリーが大変な場合があります。
一般的に雪道や未舗装路に強いとされるパートタイム4WDですが、まったく弱点がないわけではありません。
まず乾燥路では4WDにすることができません。前後輪の回転差を吸収するセンターデフがないため、交差点など大きく曲がるときに「タイトコーナーブレーキング現象」が発生して、ガクガクと運転しづらい状態になります。
この状態が高速走行中に発生すると、転倒などの大事故につながるので、乾燥した舗装路で4WDにするのは基本的に禁止です。雪で路面が濡れ始めてきたら、そこで4WDにシフトしましょう。
雪道では安定して走るパートタイム4WDですが、前述の通り、前後輪の回転差を吸収せず、また駆動トルク配分も50:50のまま変化しません。
そのため、ラフなハンドル操作やアクセル操作をすると、いきなりテールスライドなどの不安定な挙動が発生します。
また深雪に入った場合は、常に2輪以上のグリップを保たなければなりません。パートタイム4WDの機構的な弱点として、前後輪を対角線に結んだ2輪が空転してしまうと、やはり残りの2輪は停止してしまいます。つまり、「対角スタック」状態となるのです。
このような状態に陥った場合は、空転している1輪のトラクションを回復して、対角スタック状態から抜け出す必要があります。
ブレーキを踏んだり、サイドブレーキを連続的に引いたり離したりすることで、トラクションが回復する場合がありますが、やはり慣れが必要なテクニックでもあります。
■雪国に行く際に覚えておきたいテクニックとは?
最近のパートタイム4WD車の多くは、ブレーキとエンジン出力を自動的にコントロールすることでタイヤのトラクションを回復させる「ブレーキLSDトラクションコントロール」が付いていますので、こうしたクルマの場合は、アクセルを逆に踏んだ方が早く脱出できる場合があります。
いずれにせよ、パートタイム4WDとはいえ、スタックするケースは発生しますので、最低でもスコップは持っていきたいものです。
昨今の4WDシステムは、どんどん電子制御式になっています。先日発表されたばかりのダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」もリーズナブルな価格ながら、電子制御式センターデフを持った4WDが採用されています。
こうしたクルマは、スリッピーな路面でも安定した挙動を確保し、少々の深雪でも脱出することが可能です。しかし、昨今の異常気象を考えると、クルマの性能を超えてしまう雪が降ることも希ではなくなりました。そうなると、どんなに進んだ4WDシステムを持つクルマでも太刀打ちできません。
そこで、雪国に行く際に覚えておきたいテクニックがあります。
ひとつめは、かならず駐車時は「前向き駐車」をすること。クルマのトランスミッションのギア比は、後退、つまりバックギアが一番低くなっています。
そのため、深雪になった場合、前進するより後退する方がより大きな駆動力が得られるのです。ワイパーを立てておくことも大切ですが、駐車方法はもっと大切です。
大雪が降った翌日は、車体の上に載った雪下ろしをする同時に、タイヤが動く方向の雪を丁寧にスコップなどで除けましょう。
とくに最低地上高が低いクルマの場合は、すぐに亀の子状態になってしまいます。車体の下や横の雪もできるだけ除けて、平らな地形を作ってあげることがポイントです。こうすることで、FF状態で発進するパッシブトルクスプリット式の4WDでも、ラクに出庫することできます。
もしスタックした場合は、まずタイヤが進む方向の雪を十分に除けて、それでもダメな場合は「もみ出し」というテクニックを使用します。
これは前後どちらに進む場合も同じですが、まず前進でも後退でも、例え1cmでもタイヤが進む方向にゆっくりクルマを動かします。
そして、進まなくなった状態、もしくはタイヤが空転をし始める状態になったら、即座に逆のギアに入れて、また前進か後退をゆっくりおこないます。
停止、または空転したら、すぐに逆のギアに。これを何度も繰り返すことで、クルマの振り子のように前後に動き、その動く範囲が徐々に大きくなっていきます。
そして、ある時点でスタック状態から脱出できるようになるのです。このテクニックは、2WD、しかも夏タイヤで降雪に遭った場合も使えますので、覚えておいて損はありません。
これを使っても脱出できない場合は、タイヤのサイドウォールが少し歪むまで空気を抜いて、空気圧を下げてやります。これでタイヤのトラクションが回復する場合がありますが、それでもダメなら、他車にロープを使ってけん引してもらうしかないでしょう。
4WD車は優れた悪路走破性を持っている一方で、悪い条件でも走れてしまうためにどんどん深みにはまり、スタックしたときは非常に状況が酷くなっていることが多々あります。
「まずいな」と少しでも感じたら、すかさずバックして戻るというのが、難を逃れる最良のテクニックです。愛車の4WDの弱点を知り、決して最強ではないということを頭に入れておくことが、安全なスノードライブの第一歩といえるでしょう。
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みんなのコメント
夏タイヤで雪道は危険です。迷惑です。
ブレーキLSDの搭載。2018年の新型ジムニーにようやく搭載されて、
サイドブレーキを使った上級者技術を使わなくても、
「対角線スタック」から誰でも簡単に「アクセルを開ける」だけで脱出できるようになった。
当然生活4WDが陥る「1輪が脱輪しただけでスタック」も防いでくれる。
この優秀で便利な機構。先代ハスラー4WDやキャストアクティバ4WDの方に先行搭載されていたんですね。
より氷雪道に不慣れな人が使うクルマほど進化した機構を先行搭載していた事になります。