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【マツダ新型EVにロータリーの秘策あり!!】 MX-30の航続距離が200kmしかない訳

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【マツダ新型EVにロータリーの秘策あり!!】 MX-30の航続距離が200kmしかない訳

 マツダの新型EV「MX-30」の航続距離は僅か約200km。その裏にロータリーエンジンの存在あり!!

 東京モーターショーでベールを脱いだ話題のMX-30。観音開きのドアなどマツダらしさがふんだんに盛り込まれている。しかし、EVとして走行距離が200kmというのはいかがなものか? という疑問が投げかけられている。

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 各社のリリースするEVは、近年どんどん走行距離を伸ばしていて300km以上が常識となりつつあるなか、なぜMX-30はそのようなトレンドとは逆行するような走行距離なのだろうか?

 その理由を探るとともに、マツダ関係者も存在を明言するロータリーエンジンを活用した「レンジエクステンダー」について合わせて解説したい。

文:松田秀士
写真:編集部、MAZDA

【画像ギャラリー】RX-8以来の観音開き採用!! 超個性的ルックのマツダ MX-30

マツダの新型EV「MX-30」はなぜ航続距離が短い?

東京モーターショーで初公開された新型EVのMX-30。欧州では2020年後半から発売開始し、日本でも追って導入予定(時期は未定)

 自動車にまつわるCO2発生は3種類あると思う。

【1】EVのエネルギーである電気を作り出すときのCO2
【2】EVの製造で出すCO2
【3】クルマや部品の輸送で出すCO2

 【1】は、ほとんどが天然ガスや化石燃料から製造しているので、EVが全くCO2を出さない環境車だというのは間違っている、ということが最近になってようやく一般的に浸透しつつある。

 【3】は、常に運搬のためにはCO2を出すので全てのクルマに共通している。そこでマツダが注目しているのは、【2】のEV製造で発生するCO2だ。

 現在、多くの規制は排気ガスだけが対象になっている。そのためEVは全く排気ガスを出さないので環境に非常に優しい車ということになっている。しかし、それは本当なのだろうか? というのがマツダが持つ長年の疑問。

 そこだけに注目するのではなくて車の生産で生じるCO2、つまり車のライフサイクルで考えた場合にEVは、本当に環境に優しいと言えるのだろうか? というところから始まっている。

 とりわけEVの心臓とも言えるバッテリー。こちらはリチウムイオン電池が一般的なのだが、このバッテリーの製造にもたくさんのCO2が発生することがわかっている。

 そこで、今回MX-30ではEVの生涯走行距離を16万kmと想定し、製造から廃棄までを考えて環境に優しい、つまりCO2排出量とのバランスで理想的なバッテリー容量を「35.5kwh」としたのだ。

 バッテリー容量が小さければ自ずと走行距離は短くなる。そのため走行距離を確保するには何が必要かというところから、軽量化、モーターパワーの特性といったところを研究して MX30が誕生したのだ。

ポルシェのEVが「大排気量車」ならマツダ MX-30は「小排気量車」的?

かつての名車RX-8と同様、個性的な観音開きドアを採用したMX-30。他の量産EVより航続距離に劣るが、そこに秘められた理由とは?

 走行距離を伸ばすために40kwh以上のバッテリーを搭載したEVは、逆に環境レベルが下がると考えられる。しかし、最近リリースされたポルシェのタイカンやテスラ、そしてジャガー F-PACEなどは90kwh以上のバッテリーを搭載している。

 例えるなら、でっかいガソリンタンクを搭載して航続距離を延ばしているわけ。ガソリンは短時間で満タンにできるけれども、「EVのバッテリーは大きくなればなるほど充電に時間を要する」というデメリットも考慮しておく必要がある。

 リーフはe+で62kwhを搭載して大幅に航続距離を延ばしている(編注:リーフの航続距離は標準が322km、e+が458km=WLTCモード)。

 筆者が最近ワールドカーオブザイヤーの試乗会で乗った韓国車のKIA Soul EVも64kwhのバッテリーを搭載していた。

2019年9月に世界初公開され、11月20日に日本でも初公開されたポルシェ タイカン。ローンチコントロール使用時の最高出力は761psに達し、0-100km/h加速は2.8秒と驚異の性能を誇る

 これらEVの共通点は、瞬間的に発生させることのできる強力な加速。電動モーターは0rpmから最大トルクを発生することができるという特性を持っている。その特性を利用してスタンディングスタートから強烈な加速を生み出すことができるのだ。

 つまり、EVの魅力は加速にある、というのが現在の共通した一般的な見方。

 加速も良くて環境にも優しい。本当にそうか? エネルギー保存の法則から言えば、EVが強烈な加速を発生させるには相当な電力が必要なはずで、そのために大きなバッテリーを搭載する必要があるのだ。

 つまり、今トレンドとなっている大容量バッテリーを搭載したEVからは「環境」という文字を取り去る必要があるのではないか? 少なくとも化石燃料を使わずに電気が製造できるときが来るまで。

 ポルシェ タイカンもLAで試乗したのだが、その加速力には舌を巻く。もうこの手のEVは違うジャンルのクルマだ。環境車ではなく、新しいジャンルのスポーツカーなのだと。

距離を補う秘策はロータリーエンジン! PHEVとしての活用も視野

写真はロータリーエンジンを用いたレンジエクステンダーのカットモデル。BMW i3もピュアEV仕様の295kmからレンジエクステンダー車では466kmまで航続距離を拡大しているだけに期待大!

 話を戻そう。以上のようなことから、EVが環境車であるために何が重要で必要かという原点に立ち戻って開発されたのがMX-30なのだ。そこには煩悩を揺さぶるような強烈な加速はない。

 ただし、これは本当はガソリン車なのでは? と疑いたくなるほどに自然な加速フィールと、EVだからこそ実現しているスムーズな加速。

 そして言われないとわからない、言われても実感できないかもしれない特許技術「Gベクタリングコントロール+」は、電動モーターゆえに減速時にもより精密なコントロールが行えるようになっているのだ。

 それでも航続距離200kmは短い。そこでマツダが選んだのはレンジエクステンダーというチョイスだ。

 小型の新開発ロータリーエンジン(1ローター)を搭載し、発電して走るという方法。これは BMWのi3でも採用している。

「CX-30の皮を被った」新型EVプロトタイプのe-TPV。これを土台としたMX-30はEVだけでなく、ロータリーを用いたレンジエクステンダーとPHEVも視野に入れ開発中だ

 ロータリーエンジンは、もともとコンパクトだし、構造上出力軸がハウジングセンターにあり、回転方向を変えずに発電機を回せるメリットがある。つまり、システム自体を軽量コンパクトにまとめることができる。

 オスロー(ノルウェー)で開催されたMX-30(当時はCX-30の皮を被っていた)試乗会で、このレンジエクステンダーのカットモデルが展示されていたのでじっくり観察してみたが、新開発のロータリーエンジンは、サイド排気で左右デュアル出しのエクゾーストを集合させて1本にまとめて排気させるようにレイアウトされていた。

 それ以上のことはわからないが、この新ロータリーエンジンは将来リリースされると噂されるロータリーエンジン車の礎となっているのか? 興味深いところだ。

 マツダでは、このレンジエクステンダーを現在開発中で、レンジエクステンダー以外に、発電用のロータリーエンジンはそのままに発電機の出力を上げ、逆にバッテリー容量をさらに小さくしてプラグインハイブリッドとする構想もあるという。

 本当に環境に優しいEVとはなにか?

 何が正論なのかをマツダはMX-30で世に問うているのではないだろうか。

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