現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 小さくても上質! トヨタ iQが挑んだ理想と現実 【偉大な生産終了車】

ここから本文です

小さくても上質! トヨタ iQが挑んだ理想と現実 【偉大な生産終了車】

掲載 更新
小さくても上質! トヨタ iQが挑んだ理想と現実 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

【伝統のスカGターボ蘇る!?】スカイライン 400Rは欧州勢を蹴散らせるか

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ iQ(アイキュー・2008-2016)をご紹介します。

●【画像ギャラリー】 デビュー当時のベストカー試乗の様子からトヨタ iQをチェック!!

文:伊達軍曹/写真:ベストカー編集部

■従来の概念を打破することを目指した“マイクロプレミアムカー”

「これまでの常識を根本から覆す新発想のクルマ作りをする!」ということで鼻息荒く登場したものの、販売的にはパッとしないまま終わってしまったマイクロコンパクトカーの意欲作。それが、トヨタiQです。

 2008年10月に登場したiQは、軽自動車より40cm以上短い「2985mm」という全長が最大の特徴となるコンパクトカー。

iQ(アイキュー)の名前や音には、「個性(individuality)」「革新(innovation)」と「知性(intelligence)」、「品質(quality)」「立体的な(cubic)」「(新しい価値観とライフスタイルへの)きっかけ(cue)」といった意味が込められた

 しかしながら、ちょっと似ているスマート フォーツークーペのような2人乗りではなく、乗車定員は4名でした。

 パッケージングの工夫やエアコンユニットの小型化、シートの薄型化等々により、「とっても小さいけど、成人3人+子供1人がまあまあ普通に移動できる上質な乗り物」を実現させたのです。

 パワーユニットは、可変バルブタイミング機能付き1Lガソリンエンジン+CVTという組み合わせ。最高出力68psを発生するそのエンジンの10.15モード燃費は23km/Lで、当時の軽自動車の平均的な数値は軽く凌駕していました。

 また、いわゆるもらい事故に遭った際に正直ヤバいかもしれないボディサイズだけあって、iQは安全性の向上にも力を注ぎました。

 衝突安全ボディの採用に加え、サイドエアバッグとカーテンシールドエアバッグ、リアウィンドウ カーテンシールドエアバッグなど、計9個のエアバッグは標準装備です。

超コンパクトなボディに4シートを実現

 このような意欲作であったトヨタiQは、発表直後は2500台の月販目標に対して約8000台の受注が入るなど、幸先のいいスタートを切りました。

 またジャーナリストからの評価も高く、2008年11月には「日本カー・オブ・ザ・イヤー2008-2009」を受賞しています。

 2009年には1.3Lエンジンが追加され、2010年11月には6MT版を追加。さらに2011年10月には英国の超高級ブランドであるアストン・マーティンが、トヨタiQをベースとする超プレミアム・コンパクトカー「アストン・マーティン シグネット」をリリースするなど、話題には事欠かないトヨタiQではありました。

 しかし実際の販売状況はお寒いもので、モデルライフ後半の販売台数は月販二ケタか、せいぜい「かろうじて三ケタ」ぐらいでしかありませんでした。

 そのためトヨタは2016年3月にiQの生産を終了。同年4月には販売も終了となりました。

■高評価を与えられながら、なぜ一代限りに?

 いちおう2008年から2016年までの長きにわたって生産はされたものの、結論としてアクアの2カ月分の販売台数とほぼ同じ3万1333台しか売れなかったトヨタiQ。

 その敗因は結局のところ、「理想が現実に負けた」ということになると思います。

 トヨタiQの理想というか理念には、素晴らしいものがありました。

 大きめな車に人や荷物が満載状態になっていることなど、実はほとんどない。であるならばミニマムなサイズの、それでいてすべてにおいて「上質」な車を提供できれば、人々の移動環境は変化するはず。

デザインには、巻き貝や波紋などを基に造られた数理モデルを用い、自然界の造形美を活かした線や面が内外装のデザインに採用された

 そしてその結果として人類社会のCO2は削減され、交通渋滞も緩和できるだろう……というのが、おそらくはトヨタiQの開発理念であったはずです。

 それはそれで結構ですが、その理念は大衆の心にはあまり刺さりませんでした。なぜならば、日本にはすでに「軽自動車」があったからです。

 「かなり高効率なパッケージングで燃費も良く、税金や整備費用の面でも有利な軽自動車がすでにあるんだから……それでいいじゃん?」という身も蓋もない「現実」を、トヨタiQという「理想」は打ち破ることができませんでした。

 またトヨタiQには、そんな現実を打ち破るだけの実力がなかった……というのも酷な言い方ではありますが、真実でしょう。

トランスミッション構造を変更しエンジンに対してタイヤ位置を前に、またギヤボックスの上方配置、燃料タンクをフラット化し床下に搭載するなどの手法を駆使し、超高効率パッケージを実現した

 「ディファレンシャルギアを反転して前方に配置!」みたいなマニアックな工夫がされているiQのパッケージングは、車マニアから見ると称賛に値する部分が多いものです。

 しかし「実際に乗る人」にしてみれば、そんなのはどうでもいい話でした。

 自分のお金を出して買う人からすれば、iQは「ヴィッツより極端に狭くて荷物もろくに載せられないのに、ヴィッツより高い車(で、乗り心地もイマイチ)」でしかなかったのです。

 しかしまあそんな「チャレンジ」も、トヨタのような超勝ち組企業だからこそできたことです。「iQ的な車を作って何年も売ってみる!」というような挑戦は、微妙な規模の自動車メーカーではとてもじゃないけどできないでしょう。

 「次の時代を担う何かステキなこと」というのは、挑戦と失敗の繰り返しの中からしか生まれません。その意味ではトヨタiQの挑戦(と失敗)にも、何らかの意味と価値はあったはずなのです。

■トヨタiQ 主要諸元
・全長×全幅×全高:2985mm×1680mm×1500mm
・ホイールベース:2000mm
・車重:890kg
・エンジン:直列3気筒DOHC、996cc
・最高出力:68ps/6000rpm
・最大トルク:9.2kgm/4800rpm
・燃費:23.0km/L(10・15モード)
・価格:150万円(2008年式100G)


●【画像ギャラリー】 デビュー当時のベストカー試乗の様子からトヨタ iQをチェック!!

◎ベストカーwebの『LINE@』がはじまりました!
(タッチ・クリックすると、スマホの方はLINEアプリが開きます)

こんな記事も読まれています

日産「新型“最大級”バン」公開! “大胆”顔が超カッコイイ「タフモデル」! 6.3m超えボディもある「インタースター」独に登場
日産「新型“最大級”バン」公開! “大胆”顔が超カッコイイ「タフモデル」! 6.3m超えボディもある「インタースター」独に登場
くるまのニュース
【速報】こ、超えた……トヨタ2024年3月期で営業利益が日本企業史上初の「5兆円」超え、来期減益予想は「足場固め」
【速報】こ、超えた……トヨタ2024年3月期で営業利益が日本企業史上初の「5兆円」超え、来期減益予想は「足場固め」
ベストカーWeb
アドベンチャーバイクの入門編! アメリカホンダが「NX500」の2024年モデルを発売
アドベンチャーバイクの入門編! アメリカホンダが「NX500」の2024年モデルを発売
バイクのニュース
ベントレーの12気筒エンジン最終章、世界限定16台の『バトゥール・コンバーチブル』発表
ベントレーの12気筒エンジン最終章、世界限定16台の『バトゥール・コンバーチブル』発表
レスポンス
ラグジュアリーSUVセグメントを牽引するレンジローバーの2025年モデルが日本での受注を開始
ラグジュアリーSUVセグメントを牽引するレンジローバーの2025年モデルが日本での受注を開始
カー・アンド・ドライバー
【MotoGP】マルケスを手放すはずがない! ペトルッチ、マルケスのドゥカティ・ファクトリー昇格を予想
【MotoGP】マルケスを手放すはずがない! ペトルッチ、マルケスのドゥカティ・ファクトリー昇格を予想
motorsport.com 日本版
ジャパントラックショー2024、パシフィコ横浜で開幕 過去最多の156社出展 11日まで
ジャパントラックショー2024、パシフィコ横浜で開幕 過去最多の156社出展 11日まで
日刊自動車新聞
愛されて祝30周年 Kranze(クランツェ)ブランド最新作にして集大成「Versam」発売
愛されて祝30周年 Kranze(クランツェ)ブランド最新作にして集大成「Versam」発売
ベストカーWeb
新型メルセデス「EQS」の航続距離は800km超!驚くほど便利になってSクラスよりもドライバーズカーだ
新型メルセデス「EQS」の航続距離は800km超!驚くほど便利になってSクラスよりもドライバーズカーだ
AutoBild Japan
ついに発売! 注目のトヨタ新型「ランドクルーザー250」人気グレードは何? プラドオーナーの評判は? 販売店に聞いてみた
ついに発売! 注目のトヨタ新型「ランドクルーザー250」人気グレードは何? プラドオーナーの評判は? 販売店に聞いてみた
VAGUE
訪日外国人にとってアルファードは豪華だけど狭い! インバウンドが望む「メルセデス・ベンツ スプリンター」とは?
訪日外国人にとってアルファードは豪華だけど狭い! インバウンドが望む「メルセデス・ベンツ スプリンター」とは?
WEB CARTOP
サインツJr.、元チームメイト・ノリスのF1初優勝を祝福。セーフティカー出動が味方も「幸運は相応しい人に訪れるモノ」
サインツJr.、元チームメイト・ノリスのF1初優勝を祝福。セーフティカー出動が味方も「幸運は相応しい人に訪れるモノ」
motorsport.com 日本版
白バイも導入するKOODのクロモリシャフト なぜ採用? デメリットはないの?
白バイも導入するKOODのクロモリシャフト なぜ採用? デメリットはないの?
バイクのニュース
見逃せない! ブレーキダストが語るブレーキパッドの重要なサイン~Weeklyメンテナンス~
見逃せない! ブレーキダストが語るブレーキパッドの重要なサイン~Weeklyメンテナンス~
レスポンス
メルセデス・ベンツ GLB【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
メルセデス・ベンツ GLB【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
打倒ホンダEクラッチ&DCTへ! BMWが「自動シフトアシスト=ASA」を発表、AT限定免許で運転可能か
打倒ホンダEクラッチ&DCTへ! BMWが「自動シフトアシスト=ASA」を発表、AT限定免許で運転可能か
WEBヤングマシン
ホンダ新型「高級ミニバン」登場! めちゃ「豪華リアシート」×専用“黒すぎ顔”採用! 516万円の「新型オデッセイ 最上級仕様」はどんなモデル?
ホンダ新型「高級ミニバン」登場! めちゃ「豪華リアシート」×専用“黒すぎ顔”採用! 516万円の「新型オデッセイ 最上級仕様」はどんなモデル?
くるまのニュース
ホンダのロードスポーツ「CBR650R」が精悍でモダンなスタイルへと変身! 「シフトペダル操作だけで変速できる」斬新メカも新設定
ホンダのロードスポーツ「CBR650R」が精悍でモダンなスタイルへと変身! 「シフトペダル操作だけで変速できる」斬新メカも新設定
VAGUE

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

132.7355.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.8488.0万円

中古車を検索
iQの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

132.7355.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.8488.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村