毎年8月、アメリカ合衆国カリフォルニア州モントレー半島でおこなわれるクルマの祭典「モントレー・カー・ウィーク」のなかでも、もっとも重要なイベントが「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」である。
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスは、クラシック・カーの美しさを、そのコンディションやヒストリーをふくめて競いあうクラシック・カー・イベントである。会場は「ペブルビーチ・ゴルフリンクス」。USオープンの会場にも使われる名門ゴルフ・コースに、文化遺産級のクラシック・カーとそのオーナーたちが全世界から集まる。
毎年1000台以上の参加申し込みがあるというが、ペブルビーチ・ゴルフリンクス18番ホール周辺につくられた特設会場に出展を許可される車両は、有識者で構成される選考委員会の選考によって、約200台に絞られる。
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスのメイン会場は、ペブルビーチ・ゴルフリンクス18番ホール周辺。ゆえに、29のクラスに出展された車両は、どれも素晴らしいものばかりだった。とくにクラス1位を獲得したクルマは、来歴からコンディションに至るまで、完璧とも言える仕上がりだった。
ここでは、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスを取材した筆者が、第2次世界大戦前/後からそれぞれ5台ずつ、計10台の“美しき文化遺産”たちを独断でセレクト(すべてクラス優勝モデル)した。まずは戦前モデルから、紹介する。
【クラスF4】1931年型ベントレー 8Litre ガーニー・ナッティング製スポーツツアラー
今年、創業100年を迎えたベントレー。今回のペブルビーチ・コンクール・デレガンスではF1~F6まで6つの特設クラスが用意され、約50台がエントリーした。
なかでも、創業者W.O.ベントレーが自ら開発に携わった「W.O.時代」の最上級モデル「8Litre」が対象になる“F4クラス”で1位に選ばれたのが、第2次世界大戦前にロールス・ロイスやベントレーのボディ架装を得意としたコーチビルダー「ガーニー・ナッティング」社製の豪壮なツアラーである。しかも、このクルマは総合優勝に相当する「ベスト・オブ・ショー」にも輝いた。
ベントレー8Litre ガーニー・ナッティング製スポーツツアラーとともに壇上にあがったオーナーは、「ザ・ペニンシュラ・ホテル」を所有・運営する「香港&上海ホテルズ」グループ総帥のマイケル・カドゥーニー卿。彼は、生粋の自動車愛好家としても知られている。
彼はまた、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの前日に開催されるコンクール「ザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング」の実質的主催者でもある。そんなカドゥーニー卿の愛車にベスト・オブ・ショーを授与したのは、ともに手を携えて「モントレー・カーウィーク」を盛り上げていきたいとするペブルビーチ主催者の意思表示ではないか? との見方もあったようだ。
【クラスP1】1932年型マセラティ V4ザガート製スパイダー
ベントレーとおなじく、今年創業100年を迎えたイタリア・ミラノのカロッツェリア「ザガート」にも、記念の特別クラスが戦前・戦後にわけて設定された。
戦前クラスで1位に選ばれたクルマは、ザガートが、マセラティの伝説的モンスター「V4」にスタイリッシュなスパイダー・ボディを架装したモデルだった。
1929年に開発されたマセラティV4は、別名「Seidici Cilindri(16気筒)」がしめすように、同時代のマセラティGPマシン「ティーポ26」の直列8気筒2.0リッター・エンジンを2基連結して搭載。スーパーチャージャーを装着し、300psオーバーを達成した。
そして、ティーポ26用フレームを拡大・強化し、シンプルなグランプリスタイルのボディを組み合わせた。
V4は、排気量無制限で戦われたイタリアおよび欧州のサーキット/都市間公道レースなどで活躍したほか、1930年には北米・インディアナポリス500マイルレースにも出走した。
今年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスに登場したモデルは、インディアナポリス500マイルレース出場車のボディを降ろし、そして1932年、ザガートがスパイダーボディを架装した個体である。
【クラスJ1】1938年型タルボ ラーゴT150SSフィゴニ・エ・ファラッシ製カブリオレ
タルボ ラーゴT150系は、第2次世界大戦直前に少数つくられたフランスの高性能スポーツカー/レーシングカーである。
数多くのカロジエ(コーチビルダー)が競作したなか、もっとも有名かつ芸術的評価の高いのが、「フラム・ボワイヤン」(火焔様式)と呼ばれたアール・デコ的スタイルの旗手「フィゴニ・エ・ファラッシ(Figoni et Fraschi)」社の「グート・ドゥ(Goutte d’Eau)」だった。英語名「ティアドロップ」と命名された一連のクーペ/カブリオレである。
フィゴニ・エ・ファラッシ製のタルボ・ラーゴは、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスで例年、高い人気を誇るモデル。
2019年のヨーロッパ製オープンクラシック部門で1位に輝いた出展車両は、「ベスト・オブ・ショー」の最終候補4台中の1台にも選ばれた。
【クラスI】1936年型メルセデス・ベンツ 540Kエルドマン&ロッシ製スペシャルカブリオレ
第2次世界大戦前のゴージャスなメルセデス製ツーリング・カーとして有名なモデルが、1930年代後半につくられた「Kヴァーゲン」である。
とくに、1936年登場の「540K」は、スーパーチャージャー付5.4リッター直列8気筒OHVエンジンを搭載。同時代のライバルを凌駕する性能を誇った。
メルセデスKヴァーゲンのボディは、大多数がダイムラー・ベンツ社のジンテルフィンゲン工場の特装部門で架装されたが、顧客の要望があれば、ドイツ国内外のコーチビルダーにも委ねられ、ワンオフのスペシャル・カーが製作された。
2019年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで戦前型メルセデス・クラスの1位に輝いたのは、特別な540Kだった。ベルリン「エルドマン&ロッシ」製の流麗なボディを持った4シーター・カブリオレである。
【クラスK2】1933年型ブガッティ T59
2019年のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで、筆者がおどろいたのは、ブガッティが1933年に4台のみ製作したグランプリマシン「T59」の4台すべてが集結したことだ。
ブガッティT59GPは、当時の最強マシンだったアルファロメオ「ティーポB」に勝つため、開発されたマシンだった。
しかし、パワー不足でティーポBの性能に及ばなかったうえ、しかも翌1934年から参戦したドイツ勢(メルセデス・ベンツやアウトウニオン)にも性能で見劣りしたマシンだった。もちろん、戦績もふるわなかった。
とはいえ、エットレ・ブガッティこだわりのデザインが、随所に見られることもあって、高い人気を誇る。
ちなみに今回、表彰ステージで4台がそろったなか、最前列に置かれた1台は、クラシック・カー・コレクターとしても知られるラルフ・ローレン氏のコレクションだった。
文と写真・武田公実
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