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【セルシオもアリストも絶版】レクサスRX なぜ独立? ハリアーが生き残った理由

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【セルシオもアリストも絶版】レクサスRX なぜ独立? ハリアーが生き残った理由

 2019年8月29日、レクサスの大型SUV、「RX」がマイナーチェンジを敢行!

 改良では内外装のデザインを筆頭に、足回りにも手を加え、乗り心地も向上。外観では特徴的なスピンドルグリルが、L字モチーフのブロックメッシュパターンに変更され、一層迫力ある“ドヤ顔”になった印象だ。

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 実はレクサス RX、かつてはトヨタ ハリアーと全く同じ車だったという歴史を持っている。

 レクサス RXとトヨタ ハリアー。かつては同じ車だった2つのモデルが、別々の道を歩んだ理由とは?

文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA

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レクサスRXでもあった初代ハリアー

1997年発売の初代ハリアー。都会派SUVの先駆けとして人気を博し、1999年には年間で3万4087台を販売

 今の自動車メーカーは、ダイハツを除くと世界生産台数の80%以上を海外で売る。日本は20%以下の市場だから、商品開発も海外中心になった。

 しかし、2000年頃までの海外比率は60%前後だった。日本と海外で併売する車種も多く、国内市場も大切だから、バランスの良い開発を行っていた。

 ボディは3ナンバーサイズでも、むやみにワイドにならず、日本の街中で相応に使いやすい。走行安定性は、海外需要に対じてレベルを高め、日本車の進化を実感できた。

 1997年発売の初代ハリアーは、バランスの良い開発の典型だった。海外では初代レクサス RXとして売られたが、全長は4575mm、全幅も1815mmに収まる。少しワイドだが、運転しにくい印象はなかった。

 内装は当時のSUVには無骨な車種も多かったが、ハリアーはセダン感覚で仕上げられ、居住性も優れていた。

 その一方で、SUVらしく天井は高めだから、後席を含めて室内空間に余裕がある。荷室も広くて使いやすい。セダンの快適性と、ミニバン的な実用性を兼ね備えていた。

 発売時点の搭載エンジンは、V型6気筒3Lと直列4気筒2.2L。

 3Lは動力性能に余裕があり、なおかつ前輪駆動をベースにしたSUVだから、重心が比較的低く安定性も良い。SUVというよりワゴンの感覚で運転できた。当時これほど快適なSUVはほかになく、初代ハリアーは人気を高めた。

HVも追加! 人気高めた2代目までレクサスRXと「同じ車」

2003年発売の2代目ハリアー/全長×全幅×全高:4735×1845×1670mm。同車まで海外ではレクサス RXとして販売された

 2代目ハリアーは2003年発売。これも2代目レクサス RXと同じクルマだ。初代モデルの路線を踏襲しながら、ボディサイズは少し拡大された。

 プラットフォームは新開発され、電子制御式エアサスペンションを用意するなど、走行安定性と乗り心地のバランスを高めた。

 2005年になると画期的なハイブリッドを加えた。V6・3.3Lエンジンをベースにするので、ハイブリッドながら動力性能が高い。後輪にもモーターが備わり、雪道や悪路でも発進しやすかった。

 当時のハイブリッドは、プリウスに代表されるエコカーのイメージだったが、ハリアーハイブリッドの登場で変化してきた。モーター駆動が走行性能も向上させ、燃費を気にせず運転の楽しさを味わえたからだ。

 装備ではミリ波レーダーを使う世界初のプリクラッシュセーフティシステムが注目された。衝突の危険を検知すると、シートベルトを早期に巻き取り、ドライバーに注意を促すと同時に乗員の拘束力を強める。

 プリクラッシュブレーキアシストも作動して、ドライバーがブレーキペダルを踏むと素早く制動力を高めた。この時点で緊急自動ブレーキは採用されていないが、レーダーで危険を察知する機能は先進的だった。

 このほか内装の仕上げも一層上質になり、2代目ハリアーは人気をさらに高めた。

異例の注文!? レクサスRX日本発売もハリアー廃止に「待った」

2009年に日本発売されたレクサスRX/全長×全幅×全高:4770×1885×1690mm。2代目ハリアーもそのまま併売され、結局このレクサスRXからハリアーとは独立した別モデルに

 2005年にはレクサスが日本国内でも開業して、ソアラの最終型はマイナーチェンジでレクサス SCになった。

 アリストはレクサス GS、アルテッツァはレクサス IS、セルシオはレクサス LSという具合に、順次トヨタブランドからレクサスに変更されていった。

 この流れに沿うなら、ハリアーもレクサス RXの国内発売と併せて、2009年に終了するはずであった。

 ところがトヨペット店は、ハリアーの廃止に反対した。

 発売から約5年を経過した2008年頃でも、ハリアーは月に2000~3000台を安定して登録し、SUVの販売1位をエクストレイルと争っていたからだ。

 この頃になると、トヨタの売れ筋はカローラ、ヴィッツ、パッソといったコンパクトな車種になっていたから、高価格で堅調に売れるハリアーは大切な存在だった。

 しかもトヨペット店は全国に約1000店舗だが、レクサスは170店舗足らず。トヨペット店もレクサスの出店母体になっていたが、RXは販売ネットワークが大幅に限られてしまう。

 そこで2代目ハリアーを存続させながら、レクサスでは新型RXを扱うという、車名の異なる新旧併売を実施することになった。

 2009年発売のレクサス RXは大柄で、価格も高まった。レクサス RXはV6・3.5Lエンジンを搭載して、装備も充実。価格は最も安いグレードでも460万円だ。

 ハリアーは直列4気筒2.4Lエンジンだが、前輪駆動の最上級グレードが約300万円に収まる。

 実質的に旧型となるハリアーが明らかに割安だ。店舗数の違いもあり、売れ行きは新型のレクサス RXよりも旧型のハリアーが圧倒的に勝る皮肉な結果になった。

 両車の登録台数は、2010年の時点でレクサス RXが1か月平均で500~600台、対するハリアーは1000~1100台に達する。

 レクサス RXが前年発売の“新型”、ハリアーは発売から7年を経た“旧型”という違いも踏まえると、人気と売れ行きはハリアーの圧勝だった。

国内専売車誕生! レクサスRXとハリアーは「別の車」に

2019年8月に改良されたレクサス RX/全長×全幅×全高:4890×1895×1710mm。パワーユニットは3.5Lハイブリッドと2Lターボの2種。価格も513万円~とハリアーとは異なる路線に進化

 こうなるとハリアーは廃止できない。2013年にはレクサス RXとは異なる国内専売の現行ハリアーを発売した。

 開発者は「左ハンドル仕様のないSUVを手掛けたのは、これが初めてです」とコメントした。この後ハリアーは右ハンドルの一部地域に輸出されるが、販売台数を見ると国内中心だ。

 現行ハリアーは、従来路線を踏襲しながら質感をさらに高めた。日本のユーザーがイメージする高級感で仕上げられ、インパネの見栄えは、合成皮革とは思えない。イミテーションでも、ここまで上質に造り込めば立派だ。

 売れ行きも好調で、発売から6年近く経過した今でも、月に3400台前後を登録。レクサスRXは2015年にフルモデルチェンジを受け、登録台数は500台前後だ。

2013年発売の現行型ハリアー/全長×全幅×全高:4725×1835×1690mm。日本に特化したモデルとして、かつて同一車種だったレクサス RXとは別の道を歩む

 この売れ行きの違いは、トヨペット店を含めたトヨタブランドと、レクサスブランドの実力を象徴している。

 日本のどこでも公平に購入できるのがトヨタの魅力で、トヨペット店は全国の各地域において、1000店舗が入念なサービスを実施する。

 一方、レクサスは今でも170店舗程度に限られ、出店は東京都など都市部が中心。未だに1県に1店舗の地域が残る。レクサスはトヨタの上級ブランドなのに、どこでも公平に、という顧客に向けた優しさが乏しい。

 しかも一般の中古車店でレクサス車を購入したユーザーが、車検でレクサスの店舗に訪れた時は、レクサスオーナーズラウンジを使わせない差別待遇も行っている。

 本性はこういった些細な事柄に露呈するもので、トヨタらしいハリアーが好調に売れるのは当然だ。

 改めて思い返せば、レクサス LSはセルシオ、GSはアリストとして売られていた時代の方が、ユーザーも販売会社も幸せだった。

 今でもハリアーと同様、日本のユーザーに寄り沿うセルシオやアリストを復活させたら、共感を呼んで好調に売れると思う。

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