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「MaaS(マース)」とは「Mobility as a Service」の頭文字を使った造語で、日本語では「移動のサービス化」と訳されている。では、移動(交通)のサービスとは何を意味するのか? A地点からB地点に移動する時に、さまざまな交通手段を活用する最適な移動方法の提案から、より合理的な移動手段を選択し、料金支払いをスマートフォンで一括して実行できるサービス事業のことだ。
■MaaSって何だ?
A地点からB地点への移動には、タクシーかクルマ(シェアリングカー)がいいのか、シェリング自転車が最適なのか、あるいは市街電車か、バスか? などなど最も合理的で早い移動経路はどれか? スマートフォンのアプリがベストな案を教えてくれ、予約でき、料金の決済も自動的に行なわれるワンアクションのサービスをMaaSと呼ぶ。
こうしたシステムでは、利用されるクルマや自転車はすべてシェアリング用の車両を意味する。タクシーもタクシー会社のクルマとは限らず、Uber(アメリカ発のグローバル企業)、滴滴出行(ディディチューシン:中国)のような白タク配車システムも含まれる。
このMaaSのシステムが意味することは、移動に最も効率が良い方法が選択可能で、予約や料金の支払いがスマートフォンのアプリで簡単にでき、さらに自転車であれ、クルマであれ、もはや個人が所有する必要がないという点に意味があり、これがMaaSの目指す姿なのだ。
調査会社の予測では、このMaaSの市場は、2050年にグローバルで約331兆円規模になるともいわれており、自動運転、ライドシェア、コネクテッドカーといったモビリティに関する新しい技術やサービスをすべて包括している。言い換えれば次世代の移動(モビリティ)を包括する概念ともいうことができる。
フィンランドのMaaSグローバルの衝撃
実はMaaSという言葉は、2016年にフィンランドで初めて登場している。フィンランドのベンチャー企業「MaaSグローバル」のMaaSがこの言葉の源流なのだ。
もともとこのMaaSグローバルの事業はフィンランドの官民学が連携したプロジェクトで、人々の移動に関するサービスを統合スマホアプリ「Whim(ウィム)」ですべて実現しようとするものだ。もちろんこのアプリ「Whim(ウィム)」は官民学が連携したオープンデータとオープン・ソフトウエア・インターフェースから成り立っている。
そしてWhimアプリを使用すれば、カーシェア、タクシー、鉄道、バス、シェア自転車など、あらゆるモビリティサービスが統合され、使用者にとって最も効率的で快適、割安な移動サービスが実現するのだ。
この運用にあたっては、運輸と情報通信を所管する「フィンランド交通通信省」、首都ヘルシンキ周辺で営業する公共交通の路線計画や切符の販売を行なう「ヘルシンキ地方交通局」、各種交通機関の情報通信ネットワークの高度化を官民学で検討する「ITSフィンランド」なども全面的にバックアップしている。
つまりMaaSは、交通行政を担当する政府や地方機関が抱えている交通問題や環境対策などに関する負担を大幅に低減でき、都市部の住民には多様な移動手段がネットワーク化され、Whimで移動の計画を立て、移動手段を予約し、料金の支払いも行なうことができる利便性がある。
即実現可能なMaaS
そして、このMaaSを実現するためのテクノロジーは、すでに存在している点も注目すべきだろう。MaaSの実現のために新たな投資や、ハードウェア開発の必要がないのだ。
4G回線を使用するスマートフォンやバックエンドサーバーと情報をやり取りできるネットワーク、サーバーにおけるAI、ディープラーニングなどの活用、さらにはクルマの電動化、自動運転や運行ルートの自動設定技術、そしてカーシェアリングや配車サービス・アプリ(Uber、滴滴出行など)はいずれも現存している。
強いて言えばシェアリングサービス用の自動運転車はまだプロトタイプの段階ということくらいだ。つまりMaaSは自動車メーカーが開発している自動運転車や電動車、カーシェアリングや配車サービス・アプリなど、既存の事業者をすべて包括する社会的なビジネス・コンセプトなのだ。そのためMaaSの与えたインパクトはきわめて大きく、デンソーやトヨタは直ちにMaaSグローバル社に出資したのだ。
またダイムラー社やフォルクスワーゲン社などはモビリティサービスの実現と拡大にスタートを切っており、トヨタは2018年1月に自動車製造ビジネスから「モビリティ・サービス・カンパニー」へと舵を切ることを発表した。
そしてトヨタのモビリティサービスの近未来像であるe-パレット・プロジェクトのアライアンスにAmazon、滴滴出行、マツダ、ピザハット、Uberをスタートアップ・パートナーとして選んでいる。
トヨタだけでなく世界の主要な自動車メーカーは、最後の巨大市場であるアフリカの開拓を終えた後に残されるのは、主要な巨大都市(メガシティ)への人口集中による大気汚染の悪化、交通渋滞の激化など、クルマを使用する環境が厳しくなるのに加えて、少子高齢化現象により自動車の販売台数は大幅に落ち込むと予想されている。
こうした理由から自動車メーカーも2030年~2050年に向けての生き残り戦略のためには、クルマを製造、販売するビジネスから、クルマのシェアリングを前提とするMaaSへの取り組みは不可欠とされている。
ダイムラー、フォルクスワーゲンの動向
ドイツではスマートフォンのタクシー配車アプリ「mytaxi(マイタクシー)」が普及している。アメリカ発の事業で、世界70ヶ国を席巻しているUberではなく、自治体や官庁、地元のタクシー会社ともうまく関係を築きながら、ヨーロッパで最大の勢力となっている配車サービスが「mytaxi」だ。
このmytaxiは2014年以来ダイムラー社の傘下にある。一方、2008年にスタートした世界最大のカーシェアサービス企業「car2go(カーツーゴー)」もまたダイムラー社の傘下だ。現在、car2goはヨーロッパやアメリカ、中国など世界8カ国でカーシェアサービスを提供している。
car2goの登録ユーザー数は330万人に達している。car2goは、決められたエリア内でどこでも乗り捨て自由という便利なカーシェアのサービスだ。今ではそれを世界の24都市で、公的な認可を得て実施している。Uberのように無許可の白タク営業支援システムは、国によっては禁止、あるいはグレーな存在と位置付けられているのとは一線を画しているわけだ。
ダイムラー社は、メルセデス・ベンツという高価格帯のプレミアム・ブランドの自動車メーカーでありながら、2007年に「ダイムラーモビリティサービス」を設立し、自動車商品だけではなく、MaaSの可能性を探りつつビジネスを実行に移している。
フォルクスワーゲン・グループは、2017年に電動・完全自動運転(レベル5)のプロトタイプ・ミニバン「セドリック(Self Driving Carの文字による造語)」を発表した。
当初セドリックは、電気駆動で、ハンドルもペダルもないレベル5の完全自動運転車として注目されたが、パーソナルカーではなく、音声コマンドで目的地の設定ができるなど、シェアリングカーを目指していることは明らかだった。
セドリックは様々な形態が提案されているが、2018年にハノーバーで最新のセドリック・アクティブを発表した。ここで、通学用途、移動小型店舗などの新たな使い方の他に、MaaS向け車両であることを明らかにした。
つまりフォルクスワーゲンはMaaSにおけるシェアリングができる自動運転車の製造を担当し、それを包括する存在としてMssaを位置付け、MaaSを牽引するのはコンテンツ・プロバイダー(デジタルコンテンツをWEB、スマートフォンで提供する事業者)だとしている。
■そして日本は
トヨタはeパレットを始めとするモビリティに関連するプラットフォームとして「MSPF(モビリティサービスプラットフォーム)」を掲げ、サービス、クラウドサーバー、モビリティをつなぐ広範なMaaSを自ら主導して展開する構想だ。
トヨタ以外では、日産、ホンダもすでにカーシェアリング事業者や、滴滴出行など配車アプリ事業者と提携を進めており、MaaS構想を打ち出すのも時間の問題だろう。
ただし、MaaSに関する疑念として、地域性も無視することはできない。例えばアメリカのロサンゼルスは、クルマなしには生活できない自動車社会のメガシティであるのに対し、東京は世界随一の公共交通網が充実した巨大都市である。だからロサンゼルスの方がはるかにMaaSの普及の可能性は高い。ヨーロッパの都市も公共交通網が東京や大阪のように密ではないため、MaaSの普及ポテンシャルは高い。
逆に日本では、大都市部ではなく、過疎化、高齢化が進む地方でのモビリティが大きな課題になっており、その対策手段としてMaaSのコンセプトは受け入れられる可能性がある。
総務省のMaaSに関する調査結果では、「MaaSは、地方の過疎地域でサービスカーとして自動運転車が導入されたり、データの活用によって最適なバスなどの運用が実現すれば、交通手段が少ない地域に住む人々にとって、駅や停留所と目的地までのラストワンマイルの移動が可能になる」という可能性について触れている。
いずれにしてもMaaSのコンセプトが明確になると同時に、これからは自動運転車やシェアリングカーを手段としてどのような社会のモビリティを目指すのかが問われることになる。
Uber 公式サイト
滴滴出行 公式サイト
MaaSグローバル 公式サイト
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