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三菱きってのリアルスポーツ!! GTOが復活しなかった理由 【偉大な生産終了車】

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三菱きってのリアルスポーツ!! GTOが復活しなかった理由 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は三菱 GTO(1990-2001)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:MITSUBISHI

■R32型 GT-R、NSXの対抗馬として生まれた本格派スポーツ


 さまざまな意味で「伝説」にはなったバブル末期の280psマシン。それが、三菱GTOです。

 いわゆるバブル景気で潤っていた1980年代終わり頃、国内自動車メーカー各社はさまざまなスポーツカーを発表しました。そのなかのひとつが、三菱スタリオンの実質的な後継モデルにあたる三菱GTOでした。

4輪すべてを使って駆動・操舵・制動をおこなう「三菱オール・ホイール・コントロール」の理念に基づき、走る、曲がる、止まるの各性能を、ハイテク装備満載でかつてないハイレベルまで追求した


 GTOは、まずは「HSX」という名称で1989年の東京モーターショーに参考出品。そして翌1990年10月、「三菱のフラッグシップクーペ」として発売されたのです。

 ミッドシップレイアウトのフェラーリを思わせるクーペボディは全長4555mm×全幅1840mm×全高1285mmという堂々たるサイズ。

 搭載されるエンジンは、当時の自主規制値いっぱいの最高出力280psを発生する3L V6ツインターボと、同エンジンの自然吸気版(最高出力225ps)。

 トランスミッションは、ツインターボ仕様には独ゲトラグ社製の5MT、自然吸気仕様には5MTと4速ATが採用されました。

 駆動システムは前後トルク配分を45:55に設定したフルタイム4WDで、ドライブシャフトには国産車初の高張力鋼材を使用。

 中~高速域で後輪と前輪を同方向に操舵する4WSなどを設定し、ブレーキもフロントに対向4ポットを組み込んだ4輪ベンチレーテッドディスクとするなど、そのスペックは一見するとかなりの本格派でした。

当時のクラス最強スペックを誇ったV6 3000DOHC24バルブ・ツインターボ・ツインインタークーラエンジンと、ナチュラルアスピレーションのV6 3000DOHC24バルブエンジンを搭載

 しかし三菱GTOが「本格スポーツ」であったかというと、疑問は残ります。

 まずシャシーはスポーツカーとして専用設計されたものではなく、4ドアセダンである三菱ディアマンテからの流用。そしてエンジンの搭載方法も「横置き」です(本格的なスポーツカーのエンジンは縦方向に置かれるのが一般的です)。

 そして車両重量は1700kg(※ツインターボの場合)と非常に重く、ボディサイドに設けられたエアインテークらしきものはダミーで、実際は空気取り入れ口ではありませんでした(後のマイナーチェンジで空気が抜ける孔は開いたのですが)。

 とはいえ「280psのツインターボなのに価格は約400万円」という部分と、いわゆるカッコいいフォルムが一部の層からは確実にウケ、三菱GTOはマイナーチェンジを重ねながら約10年にわたって製造が続けられました。

 しかしながら2001年3月には販売終了となり、その後「2代目の三菱GTO」は発売されていません。

■2代目が登場しなかったのは「熱狂を生み出せなかったから」?

 三菱GTOが生産終了となった理由。それは端的に言えば「販売不振」と「新たな側面衝突基準」という2つの要因が重なり合った結果です。

 2000年9月から新しい側面衝突基準が採用されることになったのですが、GTOはその新基準に適合しないことが、三菱社内の実験で明らかになりました。

視認性の良いゴーグルタイプの大型メータクラスタ、ドライバーに正対するようにレイアウトされた3連のサブメータなどが、ドライバーを自然に包み込むように設計されている

 売れ筋モデルであれば、新基準に合うような設計変更を行っても採算が取れます。

 しかしスポーツカー人気の低迷により、三菱GTOの販売台数は悪化の一途をたどっていていました。具体的には、1999年度の販売台数はたったの267台です。

 そんな台数しか売れないモデルに多額の費用をかけて設計変更を行ったところで、ソロバンが合わないのは火を見るより明らか……ということで三菱GTOは、弟分である三菱FTOと一緒に生産終了となってしまったのです。

 これが、さしあたっての理由です。

 ではなぜその後、しばらくの時をおいて「2代目GTO」は登場しなかったのでしょうか?

 同世代のライバルであったR32型日産スカイラインGT-Rはその後も順当に後継モデルが誕生しましたし、直接のライバルではなかったかもしれませんが、ホンダNSXも2016年に復活して「2代目」が登場したというのに。

走り方やドライバーの体格に合わせて最適な姿勢がとれるよう、8WAYの調節機構を搭載。シートはショルダーサポート付の本格バケットタイプで、動きやすさとサポート感を両立。ハードな走行でも常に安定したドライビングポジションが得られる(写真は後期型)

「本物であること」を愚直に追求したGT-RやNSXは、本物だけが持つ「熱」のようなものがユーザーに伝わり、熱狂的に愛されました。

 そして愛されましたから、必然的に後継モデルが登場したり、長い時をおいてですが「復活」したりしました。

 しかし、乗用セダンをベースに作った部分が色濃く見えてしまっていた三菱GTOは、そこまでの「熱狂」を作り出せなかったのです。

 とはいえ三菱GTOは、純粋なスポーツカーとしては欠点が多かったかもしれませんが、高速道路を快走する「GTカー」として見るならば、なかなかの資質を備えていた一台であったようにも思えます。

 それゆえ、三菱はGTOをリアルスポーツではなくGTカーあるいはスペシャリティカーとして売り出せばよかったのに……と思うわけですが、まぁそれは「後の祭り」ってやつですね。

■三菱GTO 主要諸元
・全長×全幅×全高:4555mm×1840mm×1285mm
・ホイールベース:2470mm
・車重:1700kg
・エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ、2972cc
・最高出力:280ps/6000rpm
・最大トルク:42.5kgm/2500rpm
・燃費:―km/L(10・15モード)
・価格:398万5000円(1990年式ツインターボ)

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