近年、クルマのモデルチェンジサイクルが明らかに延びているクルマが多い。
トヨタエスティマや日産キューブなど、現行型の登場から10年以上フルモデルチェンジされていないケースも多く、メーカー側に売る気があるのか疑わしくなるほど、魅力がスカスカとなっているクルマもある。
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どうしてモデルチェンジサイクルが長くなったのか。
そこには、あまり知られていないメーカー側なりの事情があるのだ。元自動車メーカーの開発エンジニアであった筆者が解説する。
文:吉川賢一
■自動車メーカーが“モデルチェンジ”したがらない理由
フルモデルチェンジをする最大の理由は、燃費や走行性能、使い勝手といった魅力性能を磨き、商品力を維持することである。
しかし、モデルチェンジにかかる巨額の投資(主に型費などの設備)が捻出できない場合、中止や延期をすることも多々ある。
日産フーガは2009年11月の発売。現在9年半が経過しているが、次期型の情報は流れてこない
モデルが古くなっても販売台数がある程度維持できているならば、既存設備を使い続けてクルマを作ったほうが、当然一台分の生産コストは下がる。10年選手のクルマたちは、こうした理由で残っていることが多い。
しかし、新型車開発にかかわっていた筆者の経験から、外的要因でモデルチェンジ“したがらない”場合がある。それが、第一に排ガスなどの環境性能、第二にNCAPなどの法規対応の衝突性能である。
■自動車メーカーは知らないところで苦労している
地球温暖化に影響する環境問題に対し、EUを中心とした各国政府は、“超“真剣だ。
通常、法規が適用される数年前に、排ガス目標値や衝突試験の数値ガイドラインが公開され、メーカーはその試験法規の適用日程と、新型車投入の時期をみて開発概要を決める。基準値を満たさなければ、自動車メーカーは、多大なる罰金を負わされ、その国において新型車を販売することができないからだ。
この排ガス規制を満たす新型エンジンや触媒を積むためには、ボディのパッケージングにまで手を加えないとならない場合が多い。そうなると、マイナーチェンジではカバーしきれないほどの大改修が必要となる。日本でも、惜しまれつつシルビアやRX-7が廃棄ガス規制で消滅していったことはご存知であろう。
キューブの登場は2008年11月。すでに10年半が経過した。登場時は斬新なスタイルでコンパクトカー業界を牽引する存在だったが、現在はさすがに古さが隠せない。e-POWERを搭載すれば不死鳥のように復活する可能性もあるだろうに…
また、衝突試験においても同様で、新型車にはクルマの評価値が数字(スター)で評価される。「スバル・インプレッサが2017年ユーロNCAPでファイブスター達成」など、聞いたこともあるかもしれない。一般に公開される試験なので、その結果次第では、クルマおよびメーカーの信頼性を左右するほどに大きな影響を及ぼす。
この環境性能と衝突性能が、新型車の開発スケジュールを多大に左右しており、グローバルに販売する車種を持つ自動車メーカーであるほどに、重い足かせとなっている。自動車メーカーとして、環境と安全を蔑ろにすることはあり得ない。
年を追うごとに劇的に厳しくなっていくこうした法規に、パーフェクトな成績を取っていかないと、メーカーの信頼度を上げられない。そのためには、多大な開発費や時間がかかる。これこそが、昨今のメーカーがモデルチェンジを“積極的に行わない”もうひとつの理由なのだ。
■モデルチェンジサイクルが伸びるとどうなる?
顧客としての立場では、不満以外の意見はないかもしれない。目新しい商品がなく購買意欲が湧かない、定期的にモデル更新がなされないため次期型の購入計画が立てにくい、買いたいクルマの選択肢が無い、など多様にあるだろう。
エルグランドの登場は2010年。こちらももうすぐ10年選手。ライバルであるアルファード/ヴェルファイアは2015年デビュー。もっと早めに切り替えていれば、今ほどの差はつかなかったのでは…と思うと、日産ファンにとっては複雑な気分
メーカー側としてはどうだろうか。先述したように、モデルチェンジをせずに少しずつでも売れ続けてくれる方が儲かる。自動車メーカーは株式会社であり、株主に対して収益を上げる責務がある。「そうはいかない」のが実情なのだ。
■まとめ
ただ、メーカー側もこれでいいと思っているわけではない。もともとクルマ好きが多い自動車メーカーで働く社員達の中には、モデルチェンジしないことにヤキモキしている人も多くいることも、知っておいていただきたい。
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