プジョーの500シリーズというと、昔からフランスの堅実派プジョーを代表するモデルで、カッチリとしたデザインの4ドアセダンがその歴史を担ってきた。余談ながら、僕が初めてパリを訪れた1975年、オルリー空港からパリの中心部に向かうために乗ったタクシーも、ピニンファリーナデザインのプジョー504だった。
その500シリーズプジョーがおそらく初めて大きな冒険をしたのが、新型508だ。そのキャビンはこれまでのようなノッチバックではなく、やや低めのルーフと流れるようなCピラーが特徴のファストバックで、その後端にテールゲートを備える。つまり、4ドアセダンではなく5ドアファストバックとして登場したのだ。
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一方、フロントは最近のプジョーに共通する表情をもっているが、その左右に設けられたヘッドライトの端から下に向かって流れるLEDデイライトのラインが、歌舞伎役者の切られ傷の化粧のようにも見えて、独特の表情を与えている。そういえば、ボンネット先端に装着された508のエンブレムは、前述の1970年代のパリの象徴のひとつ、504のボンネットにインスパイアされたものだという。
508が属するのはDセグメントだから、Cクラス、3シリーズ、A4といったドイツ御三家の主要モデルがひしめくカテゴリー。プジョーとしては、そこで存在感を発揮する方法を考えた末の答えが、ファストバックの5ドアセダンというスタイルだったのだろう。
508は全長4750×全幅1860×全高1420mm、ホイールベース2800mmというボディサイズで、先代に比べて80mm短く、5mm幅広く、35mm低くなっている。車重は日本仕様の場合、ガソリンモデルで1500~1510kg、ディーゼルモデルで1630kgという値だが、それでも先代と比べて70kgの軽量化が果たされているという。
テールゲート付きのラゲッジスペースは、場合によっては通常のトランクルームより使い勝手がいいから、ファストバック化によるデメリットはさほどないが、リアシートのスペースに関してはこのクラスとしては広い方ではないといえる。特にフルパッケージオプションのパノラミックサンルーフ装着車は天井にその収納部が出っ張るため、ヘッドルームが少々タイトに感じる。
新型508、パワーユニットは1.6リッター直4ターボと、2リッター直4ディーゼルターボの2種類で、前者が180psと250Nmを、後者が177psと400Nmを発生する。組み合わされるトランスミッショッンはいずれもアイシンAW製の8段ATで、もちろんいずれも前輪を駆動する。
日本でのモデルレンジは、ガソリンが508 Allure=アリュールと508 GT Line=ライン、ディーゼルが508 GTの3車種。プライスはそれぞれ417万円、459万円、492万円だが、GTラインとGTには、ナッパレザーシート、パノラミックサンルーフ、ナイトビジョン、フルパークアシスト&360°ビジョンがセットになった65万円のフルパッケージオプションを選択することができる。それを装着した場合、GT ラインは524万円、GTは557万円になる。
御殿場をベースとした試乗会で最初に乗ったのは、フルパッケージオプションを装着したガソリンエンジンのGTラインだったが、まず最近のプジョーに独特の上側もフラットな小径ステアリングと、その上から見るメーターにちょっと戸惑う。当方のようなバックレストを寝かすドライビングポジションだと、ステアリングを低くセットしてもメーターの下端が少し隠れるが、まぁ気にせずに走り出す。
ステアリングはかなり小径であるにもかかわらず、切り始めの反応は意外とマイルドに感じられるが、舵が効き始めるとレスポンスは充分にクイックになって、操舵感が適度に軽いのも好ましい。総じて、ボディサイズのわりに軽快な身のこなしを持ったクルマに思える。
フロントがストラット、リアがマルチリンクのサスペンションには、全モデルに電子制御のアダプティブダンパーが奢られているのも、新型508のポイントだといえる。脚のモードには、コンフォート、標準、スポーツがあり、もちろん表示の順に硬くなるが、さすがプジョーと感心させられたのは、ワインディングロードなどでスポーツを選んでも、決して脚がガチガチに硬くならないことだった。
そう、たとえスポーツモードを選んでいても、508の脚はしなやかさを失わず、フランスのミドルクラスに期待される、フラットで快適な乗り心地を維持するのである。だから当然、標準状態では乗り心地はますます快適になる。その一方、コンフォートでコーナーを攻めると、さすがにダンピング不足が感じられて、ノーズが上下動することがあった。
いずれにせよ、角の取れたしなやかでフラットな乗り心地は、昔からそうだったように、主に他の国のライバルに対するプジョーの大きな魅力であることを、新型508は実感させてくれた。2800mmという長めのホイールベースも、フラットな乗り味に効果を発揮しているはずだ。
しかもそれでいて、コーナーにおけるフットワークも良好で、かつての前輪駆動車にありがちだったアンダーステアを意識させられることなく、狙ったとおりのラインを辿ってコーナーの連続をクリアしていく。なかでもガソリンエンジンモデルは前輪荷重の軽いことが効いてか、ある種の軽快ささえ感じたほどだった。
その1.6リッター直4ターボエンジンは、8段ATと組み合わされていることもあって、1500kgの車重に対して特に不足を感じさせず、ほとんど望むとおりのペースでスピードを上げていく。特に深く踏み込んでワインディングを駆けた際には、高回転域のスムーズさと快音が印象に残った。
そこで、2リッター直4ディーゼルターボのGTに乗り換える。1.6ガソリンターボと比べて車重は120kg重くなる一方で、パワーは3㎰低くなるもののトルクは150Nm増強されるから、印象としてはこちらの方が加速感が明らかに力強い。ディーゼルターボ独特の、下からグググッと押し出すような加速が気持ちいい。
エンジン音と回転感は明らかにディーゼルのそれだが、そのボリュームはまったく気にならないレベルにあるし、回転感も滑らかだから、ドライバーもパッセンジャーも、ディーゼルであることを不快に感じることはないはずだ。
しかも、車重の増加は基本的に乗り心地に有利に働くから、ガソリンモデルと比べると文字どおり一段と重量感のあるライドを味わわせてくれる。その一方、前輪荷重の増加はハンドリングに関しては好材料ではないが、タイトコーナーの続く長尾峠を攻めてみても手に余るようなアンダーステアはまったく感じられず、ガソリンモデル同様に素直なコーナリングを見せてくれた。
新型508はもちろん今どきのニューモデルだから、アクティブセーフティブレーキ、アクティブクルーズコントロール、レーンポジショニングアシスト、レーンキープアシストその他の運転支援装置は全モデルが標準装備しているのに加えて、ナイトビジョンやフルパークアシストもオプションで装着することができる。
というわけでニュー508、激戦区であるDセグメントに切り込むプジョーの意気込みがストレートに感じられるクルマだった。最後にガソリンかディーゼルかという選択の話をすると、それぞれに美点はあるものの、508のサイズ感とキャラクターには、ディーゼルの走り味の方がマッチしていると僕は感じた。とはいえ、ガソリンを選ぶことに反対する理由も、特に考えられないが。
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