■存在感はあるものの、他を威圧しないクリーンなデザインのボルボ「V60」
北欧・スウェーデン生まれのボルボ「V60」は、ステーションワゴンの中核モデルとして人気です。今回は2018年9月にフルモデルチェンジした「V60」に改めて試乗しました。
ボルボ「V60」はスタイリッシュな実用派 SUVブームの今だからこそ、あえてワゴンに注目
新型「V60」に乗るのは、2018年に行われたインポーター主催の試乗会以来、2回目です。その時には気付かなかった事もあるので、やはりクルマというのは乗れば乗るほど理解が深まるものだなと実感しました。
今回運転した「V60」には「T5 インスクリプション」というバッジが付いており、2リッターのガソリンターボエンジンを搭載したモデルです。
「V60」は他に「T6」というプラグインハイブリッドモデルと、同パワーユニットのハイパワー版の「T8」をラインナップしています。また、「インスクリプション」というのは上級装備モデルに付けられるグレード名です。
「V60」の外観ですが、私は昨今のボルボのクリーンなデザインをとても気に入っています。
トールハンマーを模したヘッドライトのデザインを含めて存在感はあるものの、前走車を決して威圧しない全体の造形は、特に最近の“脅し顔”が多くなった日本車には、ぜひ見習って欲しいと心から思います。
このボルボ顔はSUVの「XCシリーズ」から採用されましたが、車高が低いエステートやセダンになるとさらに精悍さを増します。今回も「V60」と対面した瞬間に「綺麗なクルマだな~」という言葉が素直に出てきました。
■シンプルで明るい内装に加え、視認性に優れた大型モニターを装備
そして内装。相変わらず明るい、白に近いベージュのシートは、シンプルかつ人に優しい形状で目にも身体にも心地良いものです。
どちらかというと縦に長いコンソールモニターはナビを表示した場合、進行方向に広い地図空間を示せるので、この方がありがたいと思えてきます。
ただ、タッチパネル式のモニターは直観的には操作出来ないコマンドもあり、慣れないうちは視線を下に向けなければならず、これは最近のボルボ車に乗るたびに悩んでしまうところではあります。
オーナーになってしばらくすれば解決するのかもしれませんが、短い試乗時間でも操作がスムーズにできるクルマもあるので、個人的には改善されることを望みます。
さらにはオプションではありますが、ルーフに設置された大きな電動パノラマ・ガラス・サンルーフは、チルトもスライドも可能で、これは心からありがたいと思いました。
というのも、タバコのアレルギーがあって空気に敏感な私には、換気ができるチルトやスライド機能は必須で、室内を広く感じさせる開口部が広いガラスルーフに明るいベージュ内装という組み合わせが私のクルマ選びの絶対条件になっています。
この要望にボルボは応えてくれることが多く、十数年程前には「V70クロスカントリー」が愛車であった時もありました。
そうそう、シートヒーターだけではなく、背中に大量の汗をかく私に必要なシートベンチレーターも、このグレードには標準で付いていることを申し上げておかなければなりません。
■満足のいく加速性や乗り心地 燃費性能も上々
さあ、走りの印象に参りましょう。
「V60 T5 インスクリプション」の2リッターガソリンターボエンジンは、いわゆる、官能性といわれるものを感じることは、音に関しても回り方に関しても、皆無といって良いかもしれませんが、きちっと仕事をしてくれます。
低回転からしっかりトルクを発生させるので、発進時も加速時ももたつくことはありません。それでいて燃費は、今回の試乗区間では、渋滞のない木更津周辺で高速も全行程の2割位走った状況ではありますが、1リッター当たり12km弱をキープしたので、悪くはない数値だと思います。
ちなみに私は普段、ディーゼルエンジンのクルマに乗っているので、11.8Km/L、という数字をトリップコンピューターで見た時には、一瞬、「え?そんなに悪いの?」と驚いてしまいましたが、これはあくまで相対的な感想ですので、ガソリンエンジンとしては「悪くない」で問題はないと思います。
試乗中、わざとラフにコーナリングしてみたのですが、FFの悪癖を感じさせるようなこともなく(最近はそんなクルマはあまり有りませんが)、乗り心地も満足できるものでした。
■安全・先進装備を標準で装着するがボルボのポリシー
ただ、ちょっと気になったのはステアリングが軽すぎるとでも言えば良いでしょうか。アシストが強すぎるのか、思ったよりステアリングを回してしまい、慌てて戻す、という場面が数回ありました。
これは普段、乗っているクルマとの差もあるのでしょうが、やはり、これも初めて運転した時にも、そのように感じないクルマもあるので、「V60」の特徴といえるかもしれません。
その特徴のせいか、高速道路を走っている時には直進を保つのに少し気を使いました。個人的には、もう少し中心付近でドシッっと重く落ち着いて欲しいというのが正直な感想です。
もう一つ”個人的”には、「インスクリプション」にシフトパドルが付かないのもマイナスポイントです。これは私だけかもしれませんが(笑)
最後に価格の話を。今回のクルマは本体価格が599万円でオプション代含めて627万9000円。注目はこの価格差です。これはほとんど「全部載せ」の価格なのです。
特に輸入車ブランドの場合、オプション代だけで2~300万円という事も多く、本体価格は何だったの?と言いたくなる時があります。ボルボは全ての安全、先進装備は標準装備というのが基本で、かなり良心的と言えるでしょう。
「V60」は個人的に気になる所も有りますが、総評として、買って損はしない、いえ満足感を得られる事を保証できるクルマです。特に長距離を走る方にはお勧めです。
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