日本メーカーはセダン復興のためあの手この手を打ってチャレンジしているが、その都度打ち砕かれている。
実際に日本車には魅力的なミドルクラスセダンがラインアップされているが、クラウンを除き販売面で成功しているとは言い難い。
いまや絶滅寸前…かつての多数派 後輪駆動車に今こそ技術革新で復活の兆し
そんな苦境にあえぐ日本のミドルクラスセダン、レクサスGS、日産スカイライン、ホンダアコード、マツダアテンザ、スバルレガシィB4、トヨタマークXの6台を松田秀士氏が斬る!
文:松田秀士/写真:ベストカー編集部
いいクルマが目白押のミドルクラスセダン、いったい何が悪い?
マーケットというのは複雑怪奇で、いいクルマなんだけど売れないんだよね。ありますね、そういうクルマ。特にミドルクラスセダンはヒットすればそこそこ売れちゃうんだけど、注目度低いとまったく売れない。
このジャンルは輸入車とクラウンなんだよね。
輸入車は見栄張れるし、確かにいいクルマが目白押し。
クラウンはやっぱりクラウンです。フロントグリルが示すように王様です。そこで売れていない国産ミドルクラスセダン6台を改めて評価しようというもの。1台ずつ具体的に見ていきましょう。
ドイツ車を追いかけている以上は追い越せないレクサスGS
まずはレクサスGS。レクサスはブランドをしっかりと構築して、街で見かけるレクサス車も明らかに増えてきている。特にSUVなどは人気のようだ。
しかしGSとなると確かに見かけない。GSのラインナップは幅広く2.0Lターボ、2.5Lハイブリッド、3.5L V6、3.5L V6ハイブリッドとバラエティに富んでいる。
ハイブリッド以外には8速ATが組み合わされ、上級車LSのパワートレーンがそのまま移植されている。いいかえれば小さなLSと言ってよいくらいにクォリティの高いモデルだ。
特にFスポーツモデルは後輪操舵を含めたLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)を装備し、コーナリングはより高速道路でもレーンチェンジも実に安定した身のこなしだ。
GS購入の際に比較するのがBMW5シリーズ、アウディA6、メルセデスEクラスといったドイツ車。ブランドイメージでまだ勝てないのが実情だろう。
そのベースはやはり内外のデザインではないだろうか。GSはドイツデザインを追いかけているように見える。追いかける以上は追い越せない。日本車らしい独自の雰囲気を掴んでほしい。
サーキットでも通用する走りに特化したGSFをラインアップしているが、ドイツ車スポーツプレミアムの後塵を拝していて、メルセデスベンツAMG E63 4MATIC、BMW M5真っ向勝負できるブランドに育てる必要があると思う。
☆レクサスGSの2018年1~12月の累計販売台数/2717台(月販平均226台)
中途半端な感じが否めない日産スカイライン
次に日産スカイライン。インフィニティブランドの欧州撤退が報じられているが、日産スカイラインなのにインフィニティのバッジを突然フロントグリルに付けて登場。
この時はインフィニティブランドをレクサスのように日本国内でも展開するのでは? という期待があったが、それもなし。国内でのブランド展開に? が残る。
しかし、クルマはいい。好きだ。その昔R32時代にGTS-tという名車があったが、あの頃を思い起こすモデル(GT-t)がラインナップされている。ただし、パワー不足は否めない。
いっぽう3.5L V6エンジンはハイブリッドとの組み合わせ。その走りは悪くないがドイツライバルと比較すると一歩引いてしまう。走りの性能をもっと進化させてラグジュアリー性をアップしたい。
そしてインフィニティの中途半端なブランド展開は日本国内には向いていない。歴史のあるスカイラインという車名を残すためにも。
☆スカイラインの2018年1~12月の累計販売台数/2570台(月販平均214台)
ホンダの売る気が感じられないアコード
ホンダアコードはいつの間にか日本国内ではハイブリッド専用モデルになってしまった。中低速域ではエンジンで発電してモーターで走行し、高速域ではエンジンが直接駆動するというホンダのi-MMDを採用している。
その走りはこれまでのハイブリッドカーのイメージを一新する加速フィール。市街地での加減速は驚くほど俊敏だ。そんな走りをしていてもある一定レベルの優秀な燃費性能を叩き出す。
はっきり言って性能面では素晴らしい。価格も性能を考慮すれば問題ないレベル。しかしデザインがイマイチだ。デビュー当時は可もなく不可もなく、落ち着きと都会的なスポーツ性を感じたが、時間とともに色あせている。
レジェンドもそうだが、ホンダはこのクラスのセダンを本気で売ろうとは考えていないのでは? 軽自動車やSUVをしっかり販売していればそれでよいのか、アフターフォローが薄い。
とりあえず一度作ったらそのままという感じなのだ。グレードもLXとEXの2種類。これでは購買意欲も湧いてこない。
☆アコードの2018年1~12月の累計販売台数/1902台(月販平均159台)
華がないのが惜しいマツダアテンザ
マツダアテンザセダンはマイナーチェンジで乗り心地と室内静粛性を大幅にアップさせた。やればできるじゃん、という感じでこれまで気になっていたロードノイズなどの低減をしっかり果たしている。
エンジンもガソリンとディーゼルが選べ、さらに4WDモデルもある。またACCやLKAなど最新の運転支援システムも採用している。軽快感がありハンドリングもスポーティ。四輪操舵や可変減衰アブソーバーなどの特別な技術アプローチがあるかというと別にないのだが、トータルして性能が高い。
デザインも悪くなく、よくまとめられていてどこに乗って行っても恥ずかしくない。ただし、スタイリッシュな外観の割にインテリアは普通。
マツダは引き算の美学だから仕方がないところだが、どこか華が添えられればもっといいのにと感じる。ちょっと暗いんだよね。
☆アテンザの2018年1~12月の累計販売台数/3603台(月販平均300台)
選択肢の少なさがもったいないスバルレガシィB4
スバルレガシィB4。スバルのボディ造りは素晴らしい。おそらく国産では一番のボディ造りのノウハウを持っている。
シンメトリカルAWDのハンドリングと安全性、そして安価で高い運転支援を実現するアイサイトと魅力はいくつもある。
しかし、気になるのはスバル車すべてのラインナップに対して共通のプラットフォームを採用していること。
さらにレガシィB4にはハイブリッドもなければ選べるエンジンも1種類。ボクサーエンジンは人気があるが、やはりミドルサイズのセダンには他にも選択肢がほしい。
残念ながらホンダアコード同様、日本国内は捨てているように見える。これでは売れないだろう。
☆レガシィB4の2018年1~12月の累計販売台数/1790台(月販平均149台)
なぜかハイブリッドが設定されていないトヨタマークX
最後はマークX。いろいろと努力していて、改良などを行っているのだが、自社内にライバルがいて影がどんどん薄くなってきている。テレビCMもついこの間までは放映されていたような気がするが最近は見ない……。
GRが設定されるくらいにベースはよく、日本の交通事情に合ったサイズだが、ハイブリッドモデルを持たないのが残念。
スポーツセダンは本当に走りを楽しみたくて購入する人と、とりあえずカッコがよくて燃費がいいモデル購入派のカスタマーがいて、後者の方の数が圧倒的。
トヨタの販売網があるのだから、高みばかりではなく降臨するようなモデルも設定して、間口を広げるべきではないだろうか。
☆マークXの2018年1~12月の累計販売台数/4108台(月販平均342台)
★ ★ ★
日本車のミドルクラスセダンの置かれている状況は正直言って厳しい。
学生時代にいたんだよね、見た目は整っていて、とても真面目でちゃんとしているのに人気がなく、飲み会とか誘われない奴。
一緒に居ても普通で面白くない。日本車ミドルクラスセダンは、そんなクルマが多いのではないだろうか。
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