2月後半に15度前後の日が続いたのが嘘だったかのように、ドイツの首都ベルリンは冬に逆戻り。連日10度も超えない日々が続いています。天候自体もなかなか晴天に恵まれず、曇りがちな空の時々雨がパラパラ…というのが最近の傾向。春は目前に迫っているはずなのに、なかなか一気に暖かくならないところが、さすがは北ドイツといったところでしょうか。
ところがそんなある日、突然午後からカラッと晴れた日がありました。気分良く散歩していると、ドイツでも珍しい、かつ年々数を減らしているクルマに遭遇。日本へは並行輸入でわずかな数しか渡っていない希少車、ランチア・リブラをご紹介します。
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愛嬌のある丸目2灯のフロントマスク
まず目を引くのは、丸目2灯の愛嬌のあるフロントマスクでしょう。かつてのローバー75やW210やW211の頃のメルセデス・ベンツ・Eクラスを思わせる、丸目フェイスにプレーンな造形のリアエンドは、2000年代初頭に流行したモチーフの一つです。
ランチア・リブラの基本デザインを手がけたのは、ピニンファリーナ在籍時からランチア・テーマなどのデザインに関わり、ピニンファリーナ退社後はランチアのデザインセンター(チェントロスティーレ)を立ち上げ、初代イプシロンのデザインをまとめ上げたエンリコ・フミアでした。リブラは当初、初代イプシロンと共通のデザインコンセプトのデザインをまとっていて、とくにフロントマスクやリアビューは、同じブランドとしてのアイデンティティを感じるものでしたが、リブラの完成前にエンリコ・フミアは突如、退社してしまいます。
一説によると、エンリコ・フミアはランチア首脳部とデザインについての折り合いが悪く、意見が対立しがちだったと言われています。結局、エンリコ・フミアの後を継いだ後任のマイケル・ロビンソンがフロントマスクを中心にデザインを変更、発表にこぎつけています。
ランチアでは珍しい、丸みのあるデザイン
ランチアといえば、WRCでの伝説的な活躍が今でも強烈な印象として残っている方も多いのではないでしょうか。ストラトス、037ラリー、デルタS4、デルタHFインテグラーレ…しかし、これらのモデルはどちらかというと角ばったデザインのクルマばかり。とくに、市販されていたデルタHFインテグラーレ・エヴォルツィオーネ2などは、太いタイヤを収めるためのオーバーフェンダーがこれでもかというほど張り出した、迫力あるルックスが特徴でした。
それに比べると、ランチア・リブラのデザインはずっと大人しく、むしろランチアの上品な面が前面に出たデザインと言えるでしょう。写真に収めたのはステーションワゴンタイプですが、フロントガラス上面~ルーフからリアのテールランプにかけて、シルバーの2本のルーフラインが貫通しているのがわかるでしょうか?このデザインはランチア・テーマにも採用されていたもので、水はけの向上や水汚れの排除を行う機能性をも備えています。
さらに、セダンと同じデザインのドア形状をそのままステーションワゴンにも流用し、荷室の容量を増大させている手法もランチア・テーマと同様です。ちなみにこれらのデザイン手法は、先述したエンリコ・フミアがピニンファリーナ在籍時に行なっていたものでした。
不調に終わった販売
ランチア・リブラが登場したのは1999年。同じフィアット・グループのアルファロメオ・156のプラットフォームを流用しつつ、新規設計のサスペンションやアルファロメオ系とは異なるエンジン、そしてランチアらしい豪華な内装などを採用することで独自のクルマを作りあげました。レイアウトこそ一般的な横置きエンジンのFFでしたが、最上級グレードに採用されていた2.4リッターの自然吸気直列5気筒DOHCエンジンは、その独特な回転フィーリングとサウンドで一部のマニアから今でも評価が高いパワーユニットとなっています。
アルカンターラ製のシートは乗り心地もよく、リブラ独自のサスペンションはワインディング走行も楽々こなすフラットで軽快なハンドリングを実現。5MTと4AT、そしてセダンとステーションワゴンから選択できたリブラはしかし、ランチアが思っていたほどの成功を収めることはできませんでした。
2005年に生産中止になるまで生産されたリブラは、合計で約16万5千台。そのうち、ドイツで販売されたのはわずか約1万台とされています。とくに中古車市場で人気が高いわけでもなく、生産終了から10年以上が過ぎて、今後ますます個体数が減ることは避けられないでしょう。
2019年現在でも、ランチアの今後について明るいニュースは入ってきませんが、「名門ランチア」の復活を願っているファンは世界中にいるはず。マセラティやアルファロメオのような華麗な復活を遂げて、再び私たちが心からワクワクするようなクルマを発表してほしいですね!
[ライター・カメラ/守屋健]
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