■1990年代から2000年代初頭に人気だった「バニング」とは?
バニングの発祥はアメリカで、英語ではVanning(バンの改造車)となります。
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日本ではバブル時代に人気だった「バニング」と呼ばれる改造車が激減しています。巨大なエアロパーツを装着したり、スピーカーを埋め込んだりと、さまざまなカスタムカーが登場しましたが、現在ではなぜ減ってしまったのでしょうか?
バニング文化は1970年代に日本に持ち込まれたとされていますが、当時は車内で寝泊まりできるように室内を改装するスタイルが主流で、外観はアメリカ西海岸のサーファースタイルというかヒッピースタイルというか、カラフルなペイントで飾られたスタイルでした。
そのようなアメリカンなバニングが日本に持ち込まれて独自の進化を遂げたのが、日本におけるバニングです。
1990年前後のバブル時代には、フロント部分の窓以外、すべての窓を埋めるなど大胆にカスタムしたスタイルのバニングが目立つようになります。また、エアロパーツの範疇を超えた巨大なツノが生えたようなスタイルもこの頃に生まれました。
1990年半ばには、デコトラのパーツを取り入れた派手な装飾や、窓を埋めた後部ドアに長渕剛やX JAPAN、浜崎あゆみなどがエアブラシで描かれているバニングも見かける機会が増えました。
さらに1990年代半ばになると、大小さまざまなスピーカーやウーファーを埋め込んだカスタムで、現在では「音響族」と呼ばれる車も同時期に増えてきます。
1989年にオープンした大黒パーキングエリアが、車好きの聖地として認知され始めた時期と重なります。
■バニングが急速に消えて行ったのはなぜ?
1970年代から1980年代のバニングが「車での自由な旅」を実現するスタイルであったのに対して、1990年代から2000年代のバニングは、威圧感で押しまくるタイプのカスタムが主流でした。
そのほとんどがキャンピングカーとして登録された8ナンバー車で、税金などの維持費が軽減されるほか、ベース車が1ナンバーか4ナンバーの場合は、8ナンバーにすることで車検期間が1年から2年になるなどの圧倒的なアドバンテージがありました。
さらに、8ナンバーとして登録し直すことで、あの大胆なカスタムスタイルの外装も車検に通りやすくなるという事情もあったようです。
しかし中には8ナンバーを不正に取得するユーザーが後を絶たず、国土交通省はそれまでの構造要件を2003年3月末で廃止し、構造要件の厳格化に踏み切りました。
キャンピングカーとして比較的簡単に8ナンバーを取得できていたバニング車も、新しい構造要件では取得がかなり困難となり、任意保険の引き受け審査も厳しくなったのです。
■「200系ハイエース」の登場もバニング衰退の一因
2003年にキャンピングカーの構造要件が厳格化された翌年、200系の「ハイエース」がデビューしました。「2004年に『ハイエース』が200系になってからバニングは一気に消えた」という傾向もあるようです。
関西のハイエース専門店いわく、「バニングのベース車として絶大な人気を誇った100系ハイエースに比べて200系は一回り大きく、またデザイン的にもバニングにしづらい」とのことでした。
実際200系の登場を機にバニング製作をやめた業者が一気に増えたことは間違いないようです。
もちろん、時代の流れ、人気スタイルの変化もあるでしょう。バニングは車検という枠の中で知恵と工夫を凝らしながら日本独自の発展を遂げて来たJDMスタイルのひとつですが、当時、「バニングハイエース」をビルドしていた業者の多くは、2000年代半ばからラグジュアリースタイルの「ハイエース」に転向しました。
2019年1月の東京オートサロン、2月の大阪オートメッセにも、豪華にカスタムされた「ハイエース」が多数出展されました。
■バニングが消えたもう一つの理由とは?
すっかり見かける機会の少なくなったバニング車ですが、現在もわずかにバニング車を扱っている中古車店があります。
福岡県にあるカーショップヤマグチに、「バニングハイエース」の現在の様子を聞いてみました。
「現在でも『200系ハイエース』をベースに公認車検で作れないことはありません。しかし、現実的にはバニングを作れる業者が激減しているので難しいでしょうね。
また、巨大なバニング車の場合、塗装スペースは『ハイエース』2台分くらいが必要になります。200系は100系に比べてボディサイズも一まわり大きくなっていますから、塗装スペースを確保することからして厳しいでしょう。
なお、規制強化される以前に8ナンバーを取得したバニング車については、2003年の対象外ですから旧基準のままで車検に通せます。今からバニング車が欲しいという場合は、規制強化以前に作られた中古車として出回っている『バニングハイエース』を購入するのが良いでしょうね。」
バニング車が激減してしまったのには、様々な理由があるようです。実は筆者(加藤久美子)が「バニングハイエース」の取材をしていた時、たまたま海外のテレビ局から、「日本のカスタムカーを取材したい。とくに、バニング車」という依頼を受けました。
海外からも注目される、珍しい存在の日本のバニングスタイルが完全に消えてしまうのは少し寂しい気がしますね。
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