ハイブリッドカーや電気自動車は多量のバッテリーを積む
量産ハイブリッド第一号をトヨタ・プリウスだとすれば、ハイブリッドカーの市販から22年になろうとしています。量産・電気自動車(EV)にしても三菱アイミーブの発売が2009年ですから、もう10年の歴史を重ねていることになります。
もちろん、ハイブリッドカーについてはホンダも多くの台数を出していますし、日産リーフは世界一売れているEVといえる存在です。こうして、日本で生まれた電動車両の数が増えていくと、徐々に廃車となるクルマも増えています。ハイブリッドカーでいっても初代プリウスや初代インサイトの姿を見ることはほとんどないほど。はたして廃車となる電動車両は、バッテリーをどのように処理しているのでしょうか。
初期のハイブリッドカーが積む駆動用(二次)バッテリーはニッケル水素電池が主流でしたが、いまではリチウムイオン電池を積むケースが多くなっています。車両サイズや重量によって二次バッテリーの電力量(単位はWh・ワットアワー)は変わってきますが、初期のハイブリッドカーやコンパクトなハイブリッドカーでは500~1000Wh程度のことが多く、最近のリチウムイオン電池の二次バッテリーは1000~2000Wh(1.0~2.0kWhという表記のほうが多いかもしれません)くらいとなっています。
ハイブリッドカーは回生ブレーキといって減速エネルギーで発電する分を溜めておけばいいので、さほど大きな二次バッテリーを積む必要はありません。
一方、外部充電に対応してエンジンをかけずにEV走行できる距離を伸ばすことが期待されるプラグインハイブリッドでは、二次バッテリーの電力量は3.0~12.0kWhほどが求められます。さらに電気だけで走るEVでは軽自動車ベースの近距離ユースでも10.0kWh以上は必要ですし、最新の日産リーフe+では62kWhという大きなバッテリーを積んでいます。
ちなみにリーフのバッテリー電力量を振り返ると、2009年に誕生した初代の初期モデルが24kWh、初代のマイナーチェンジで30kWhのグレードが追加され、2代目になって40kWhへと増量、そしてe+が登場したという流れになっています。
各社リユースやリサイクルの整備を進めている
こうして、どんどん電動車両も進化しているわけですが、そうなると初期モデルは商品力がなくなってしまいます。そうなると中古車で流通させても買い手は少なくなり、廃車ということになるわけです。プリウスをはじめとするトヨタ・ハイブリッドカーの国内累計販売は500万台を超えていますから、少なくない台数が廃車になっているはずです。
ボディをスクラップにするにしても、バッテリーもいっしょに処理されているわけではありません。少々古いですが、2013年の資料によれば、その時点で約3万台分のバッテリーが回収されて全量が再利用されています。
その使い道はさまざま。まだまだ使えそうなバッテリーはダメになっている一部のセルを入れ替えることで修理交換用バッテリーとしてリユースしています。
また、太陽光発電などの蓄電システムとしてもリユースしているということです。リユースできない状態のバッテリーについては、レアアースやレアメタルを抽出して、金属素材としてリサイクルしています。廃車になってもバッテリーは無駄になっていないわけです。
同様の試みは日産も行なっています。その中心となるのが、日産と住友商事の合弁会社であるフォーアールエナジー社が、2018年に福島県浪江町に作った「使用済みEV用バッテリー再製品化専用工場」でしょう。事故や性能低下など様々な理由でリーフから取り外されたバッテリーパックが、浪江町の工場に集められ、そこで性能試験をしたうえで、リユースしているのです。
リユース用途は大きく3種類。まずは、十分な性能を維持しているセルを選んでEV用の駆動用バッテリー(補修用)として組み直します。そのほか、フォークリフトやゴルフカートなどで使われるもの、定置型バックアップ蓄電池として使われるものもあります。自動車用バッテリーというのは、もともと高性能ですから、EVで使うには力不足でも据え置き型の蓄電用としては問題なく使えるというわけです。
もちろん、ホンダにしてもハイブリッド用バッテリーのリユースやリサイクル・資源再循環についてプロジェクトを進めていますし、実際にリチウムイオン電池のリサイクルについは2017年より実績を重ねています。さらに電動車両には必ず使われている駆動モーターのリサイクルシステムについても技術を磨いています。
リユース、リサイクルビジネスというのはなかなか表に出てこないものですが、環境負荷の軽減はすべての自動車メーカーにとって重要なテーマであり、このように電動車両を多く販売してきた各社は、しっかりと対応しているのです。
日産はリユースした補修用バッテリーパックを新品の半額以下となる30万円で販売するなどしていますが、電動車両の普及に合わせてリユース・リサイクルビジネスも拡大することでしょう。とくに発電量が不安定な再生可能エネルギー(自然エネルギー)による発電が増えていけば、蓄電システムのニーズも高まることが考えられます。ハイブリッドカー先進国である日本は、蓄電システムを安価に構築できるという点において、再生可能エネルギーによる発電との相性が良いといえるのかもしれません。
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