リチウムイオンバッテリーがクルマに使われてまだ10年
リチウムイオンバッテリーが当たり前の存在となって、まだ20年経つかどうかである。はじめは携帯電話やノート型PCなどに利用され、それら移動機器の小型軽量化や薄型化がなされた。クルマで使われるようになったのは、2009年の三菱i-MiEVが最初だ。電気自動車(EV)が市販されてまだ10年である。
ガソリンエンジン自動車がドイツのカール・ベンツによって発明されたのが1886年(19世紀)であり、それから10年後の1896年にはまだクルマは普及していない。20世紀の1908年になり、米国フォードからT型が発売され、その量産効果によって普及に漕ぎつけたのが1914年あたりからだ。発明から30年近く経ってのことである。
全個体バッテリーは実用化可能か
ガソリンエンジン自動車普及の歴史を振り返れば、EVの時代はこれからが本格化を迎えるはずだ。リチウムイオンバッテリーも、最適な使い方を含め成熟期を迎えるのはこれからのことで、全個体バッテリーなどの次世代といわれる話も出てきているが、それが実用化し、普及を迎えるにはあと10~20年はかかるだろう。
かといって、エンジンの時代が長く続くとは思えない。すでに海水温度が上昇してしまったことで異常気象が世界的に毎年起こり、それが常態化することが気象関係者を中心に予想されている。日本でいえば、大型台風が勢力を落とさず本土に上陸し、北海道にも向かうかもしれない。線状降水帯による集中豪雨は国内各地に起こる可能性がある。一方で、35度を超す猛暑が夏を脅かすだろう。
クルマに限らず、そもそもエネルギー源である発電を含め、排ガスゼロ=ゼロエミッションとすることは待ったなしの状況にある。単なる市場予測から、EVの普及を予測することは意味をなさない。
CASE(コネクテッド・オートノマス・シェア・エレクトリック)や、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などが流行り言葉のように語られるが、それらは単なるお題目ではなく、必然であり、そこを目指さなければクルマは生き残れないほど差し迫った時代に我々は生きている。
数十年後に全個体バッテリーが実用化すれば、陸海空の電動化も可能になるとの展望がある。もはや、地上のクルマだけでなく、船舶や、少なくともドローンのような航空機は電動化の道を歩むことになるだろう。そのような時代に、エンジンから排ガスを出すクルマが走っているだろうか?
いま世界13億台といわれる自動車の保有台数が1/7に減れば、リチウムの資源も賄えるとの試算がある。数が減っても、共同利用(シェアリング)をすればクルマによる個人移動の利便性は残される。
クルマの価値が大転換していく時代が目の前に見えてきている。
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