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教習車はレーシングカー?! BMWが開催する「BMW M RACE TRACK GT TRAINING」とは?

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教習車はレーシングカー?!  BMWが開催する「BMW M RACE TRACK GT TRAINING」とは?

BMWは「BMW Driving Experience」と呼ぶ、さまざまなドライビング・プログラムを各国で実施している。とりわけドイツ本国では、半日コースのヤングドライバー向けのドライビングレッスンから、ニュルブルクリンク北コース(ノルドシュライフェ)の走行方法を丁寧に指導する「BMW M Fascination Nordscheleife」やX5で10日間アフリカ大陸を走りまわるツアーまで多彩だ。

今回、ニュルブルクリンクでのトレーニングに匹敵するエキサイティングなプログラム「BMW M RACE TRACK GT TRAINING」が新設され、早速筆者も参加した。「M4 GT4」を使い、マンツー・マンで指導する、BMW好きのみならずスーパーカー好きにはたまらない企画だ。

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トレーニングの内容を紹介する前に、M4 GT4について解説したい。

M4 GT4はBMWのモータースポーツ部門を担うBMW M社が手がけた本格的なレーシングマシンだ。日本のレーシングチーム「BMW Team Studie」も、M4 GT4でブランパンGTシリーズアジアに参戦し、好成績を収めている。

ベースボディはM4クーペであるが、インテリアはまったく異なる。内張ははじめからなく、本格的なレーシングバケットシートが備わり、ジャングルジムのようなロールケージをかい潜って乗り込む。

徹底的に軽量化した結果、車両重量は標準ボディより約200kgも軽い1430kgを実現。CFRP(カーボン強化樹脂)をルーフのみならず、ドア、ボンネット、プロペラシャフト、リアウイングなど各所に使ったほか、フロントウインドウとリアウインドウはなんとプラスチックだ。

エンジンはロードカーのM3、M4も搭載する直列6気筒ツインターボ。エンジンスペックの詳細は公表されていないが、最高出力は500ps以上をうたう。限定販売だったハイパフォーマンスバージョンのM4 GTSが500psだったから、M4 GT4のチューニングはこのGTSに近いはずだ。

トランスミッションは7速DCT(ダブル・クラッチ・トランスミッション)。タイヤはミシュランの「パイロットスポーツGT」で、しかも、スリックだった。

軽量、ハイパワー、スリックタイヤ……スペックを聞くだけで、どんな走りを見せるマシンか、期待が大きく膨らんだ。とはいえ、フツウのクルマとは異なる最新のレーシングカーだけに、ちょっと不安な気持ちもあった。

レッスンの舞台は、かつてのエステルライヒ・リンクを改修したレッドブル・リンク(RED BULL RING)。朝、まずはインストラクター先導によるサーキット走行からスタート。ここでは、標準のM4クーペで走る。メインストレートを使ったパイロンスラロームと、ABSを作動させての急ブレーキの練習で、ウォーミングアップをおこなう。

筆者も含め、ほとんどの参加者にとって、このサーキットは、はじめてだった。コースを理解のために、インストラクター先導の走行中、ホームストレートに来るたびにフォーメーションを入れ替えて、全員がペースカーの直後を走れるチャンスを作っていた。丁寧な指導を心がける「BMW Driving Experience」らしい配慮だ。

「RED BULL RING」は設備が新しく、自然環境と調和した美しいサーキットだった。アップダウンが思いのほかあって走るのが楽しい。ちなみに、コーナーは7箇所。第1コーナーは登りながらの右直角、第2コーナーもほぼ右直角のうえ、さらに登りがきつくなる。第3コーナーは右ヘアピン、第4&第5コーナーは左カーブ、第6&第7(最終)コーナーが右直角だ。1周4.3kmあまりだから走りがいがある。

M4クーペでスピードとコースに慣れると、今度はM5に乗り換える。ドライバーを含むと車重が1900kgに達するM5であるが、ブレーキング性能やコーナリング性能は高く、M4クーペほどの軽快感こそ望めないが安心感はあった。

これはxDrive(4WDシステム)のお蔭かもしれない。それを実感出来たのは、コーナーの立ち上がり。凄まじい加速で駆け抜けられたのだ。自信を持ってアクセルペダルを床まで踏み込める。次のコーナーへの入り口でのスピードは、M4より確実に速かった。なるほど、M4 GT4に乗るための準備として、“目の訓練”に役立ちそうだ。

とはいえ、M4より重量があるため、ハードな走りでラップを重ねると、タイヤ温度が上がり、グリップはダウンする。ブレーキパッドはレーシングタイプであるが、組み合わされるのが標準タイヤだから仕方ない。

ちなみに今回は24人が参加したが、うち2人はBMW M社の社長のフランク・ファン=ミール氏と同社のセールス&マーケティング担当上級副社長のペーター・クイントゥス氏だった。

サーキットの本コースを走らないあいだ、2人とともにドリフト走行を楽しんだ。パドック裏に低ミュー舗装の円形スキッドパッドが用意してあり、インストラクターからいきなり「ドリフトでまわれ!」と、指示があったからだ。

筆者は難なく走れたが、ほかのプレス参加者は苦戦していた。そんななか、M社の社長も副社長も綺麗なドリフトでまわり続けたのだ。優れたドライビングテクニックを持つトップがいるからこそ、BMW M社が手がけるクルマの走りは魅力的なのかもしれない、と、思うばかりであった。

ドリフトのあと、いよいよM4 GT4に乗り込む。ただし、普段の服で乗れないのがレーシングカーだ。ヘルメット、レーシングスーツ、シューズ、グローブ、ハンス、アンダーウエア、マスク、ソックス……あらゆるギアが必要になるが、それらはすべて貸してもらえる。しかもサイズは豊富だ。なお、今回に限らず「BMW Driving Experience」は、多くのプログラムが手ぶらで参加出来るのも大きな特徴である。

M4 GT4に乗り込んでドライビングポジションを合わせるが、シートは動かない。固定式のシートは、ドライバーの体格が変わっても車両の重心位置が変わらないといったメリットがある。なおドライビングポジションは、前後にスライド可能なペダルボックスによって調整していく。

ハンドルは「レーシングステアリングホイール」と呼ぶタイプで、ワンタッチで取り外せる(チルトとテレスコピック調整機構付き)。シートベルトはもちろんフルハーネスだ。ちなみに、M4 GT4はドライバーの快適性を考慮し、エアコンも備わる。筆者がかつて乗っていたレーシングカーでは考えられない快適装備だ! 現代のレーシングカー恐るべし、である。

クラッチペダルはないから発進は簡単だ。普通のM4クーペと同じく、セレクターレバーを右に押して1速に入れ、アクセルペダルを踏めば発進する。ドライブモードで走れば自動シフトも可能だ。

エンジン特性はフラットトルクで扱いやすい。たとえギアの選択を高い方に間違えたとしてもストールせず、なんとなくごまかして走れてしまう柔軟性を持っている。

また、アクセルペダルの反応も過敏でなく扱いやすい。ちょっと踏んで“バーン”と力が出てしまうと、たとえばコーナリング時のラインコントロールが難しくなるが、M4 GT4の反応は実にナチュラルだったのも美点だ。

ただし、ブレーキ踏力はかなり必要だ。通常のクルマでは、ABSが効いてしまうほどの強い踏力でも、M4 GT4では“スルスルッ”といった程度のブレーキにしかならない。だから“ガツーン”と、相当強く踏む必要がある。

ハンドリング性能は素直で扱いやすい。あらゆる場面でブレーキ、アクセル、ハンドルの動きに素直に反応してくれた。コーナーの途中でハンドルを切り足しても、きちんと追従するので安心感も高い。また、急な操舵に対してもノーズは“ヒョイヒョイ”動き、しかもリアはしっかりグリップするから不安定な姿勢にもならなかった。もちろん、トレーニングカーだからセッテイングは安全重視であるものの、それでも相当速いペースで走ることができた。

1日目の走行終了後、アナライザーのデータを見ながらアドバイスを受けた。横軸に距離、縦軸に車速のグラフ以外に、必要に応じてGPSがモニターした走行ラインもチェック出来るし、車載ビデオの映像も確認出来る。こうして、自らの走りを振り返り改善を図る。筆者の場合、「ブレーキングポイントが少し早い(手前)」とのこと。コーナー進入時にもっと突っ込め、というわけだ。

2日目は、前日の反省点を改善すべくサーキットを走る。初日と異なり、インストラクターカーの前を走るラップもあり、無線で指導を受ける。常に間近で監視されていると思うと、一瞬たりとも気が抜けない。

筆者は前日の指摘を踏まえ、丁寧なライン作りを心がけるとともに、ブレーキングポイントを意識した結果、「ブレーキングポイントOK!」と、無線が入り一安心したのであった。

ここで驚いたのは、インストラクターが運転するクルマがM5だった点。しかも、タイヤは市販品だ。V8ツインターボとxDriveの威力は相当で、加速はM4 GT4より速かった。だから、第1コーナーから第2コーナーまでの登りは追いつけなかったし、第3コーナーに向けての鋭いダッシュにもついていけなかった。「M4 GT4ならM5より断然速い」 と、予想していたがそれは誤りだった。今回のサーキット走行で、M4 GT4のみならずM5のポテンシャルの高さまで実感できたのは大きな収穫であった。

1日半のトレーニングは大変充実した内容だった。レーシングカーに対する不安も杞憂に終わり、むしろその扱いやすさに感心するばかりであった。

現場の話では、BMW M社の現社長と現副社長がいる限り「BMW M RACE TRACK GT TRAINING」は、おこなわれるようだ。腕にちょっと自信があるならぜひ参加するのをお勧めする。

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