スムースで正確な操作ができる上に疲れにくい
国産車のアクセルペダルは、吊り下げ型ペダルが主流。そんななか、マツダでは2011年のCX-5以降、オルガン式ペダルを採用している。
この少数派のオルガン式ペダルを採用しているメリットをあらためてマツダ広報に確認してみた。担当者の話によると、マツダがオルガン式ペダルを採用している理由は、次の2点とのこと。
1)『正確かつスムースな操作ができ、長時間運転しても疲れにくい』
2)『ブレーキペダルとの踏みかえがしやすい』
「正確かつスムースな操作」というのは、オルガン式ペダルだと、足首とペダルの動きが一致するカタチになるため。ペダル操作は、オルガン式でも吊り下げ式でも、踵をフロアにつけて、踵を支点にしてつま先で踏むのが基本だが、吊り下げ式のペダルだと、アクセルを踏み込むたび踵が少しずつ前にずれていく傾向がある。その点、オルガン式はペダルの下端がフロアとくっついているので、踵が前にずれていくことはほとんどない。
工学的にいえば、吊り下げ式は搖動支点になりやすく、オルガン式は固定支点になるので、踵支点のシンプルな回転運動でペダルを操作できるので、「正確かつスムースな操作」をしやすくなるという利点がある。「長時間運転しても疲れにくい」というのは、具体的には脛の筋肉、前脛骨筋の筋緊張が減らせるようになっていること。
ペダルを操作する主な筋肉=脛・ふくらはぎの筋肉には、脛の前面にある前脛骨筋と、ふくらはぎの大きな筋肉、ヒラメ筋がある。一般的には、ペダルを踏むときは、ヒラメ筋が筋収縮し、ペダルを戻すときは前脛骨筋が働く。
マツダのオルガン式ペダルでは、アクセルを戻すとき、ヒラメ筋の力を抜けば、前脛骨筋に力を入れなくても、ペダルの反力だけでアクセルオフができるようにチューニングされている。つまり、踵を床につけ、ペダルの反力を足の重さで支えておけば、ヒラメ筋だけでペダル操作が可能だということ。
渋滞に巻き込まれ、長時間細かくアクセルを踏んだり戻したりすると、脛の筋肉=前脛骨筋が疲れた経験がある人も多いと思うが、マツダのオルガン式ペダルなら、前脛骨筋はアクセルオンでもアクセルオフでも脱力させっぱなしでOKなので、脛の負担は軽減される。
もちろん、オルガン式ペダルでも、アクセルオンのときはヒラメ筋が働く必要があるが、ヒラメ筋は抗重力筋のひとつで、普段、立ったり歩いたりするたびに鍛えられている筋肉なので、ペダル操作ぐらいの負荷では、そう簡単に音を上げない。それに比べ、細い筋肉で疲れやすい前脛骨筋の負担が減るのは誰にとっても歓迎できる。
もうひとつの「ブレーキペダルとの踏みかえがしやすい」というメリットも、前述のように、オルガン式ペダルは、アクセルオンで踵が前にずれることがないので、足首に余計な負担をかけずに、自然にペダルの踏み替えができるという理屈。
今主流のAT車の場合デメリットはコストぐらい
ではオルガン式のデメリットはないのか? コスト的にはオルガン式のほうが複雑なぶんだけ、吊り下げペダルよりも不利。フロアマットとペダルが干渉しやすくなるので、フロアマットも専用のものが不可欠。あとは、人によって(クルマによって)ヒール&トゥがやりづらいというケースもあるが、AT車には無関係。
また、マツダの担当者からは、「オルガンペダルは、かかとの位置が安定するほか拇指球で操作できることによっても、細かな操作が可能になるという点があります。また、アクセルペダルをオルガン化し拇指球で操作できるようになったことを受けて、ブレーキペダルについても、自然に踏み替えができるようペダル角度の最適化を行っております」というコメントもいただいた。
吊り下げ式ペダルでも、アクセルペダルは主として拇指球で踏んでいるような気もするが、ペダルの角度の最適化は、「人間中心の基本設計」を掲げるマツダらしい配慮で好感が持てる。
マツダ車オーナー以外も、機会があればディーラーに出かけて、試乗車に乗せてもらって、その違いを体感してみてほしい。
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