手間や中身や希少性を考えれば「億超え」は妥当な値段
先日、日産がプロトタイプ車「Nissan GT-R50 by Italdesign」を発表した。その名前からもわかるように、ジョルジェット・ジウジアーロが創設したカロッツェリア「イタルデザイン」と日産の協業によって生まれた、スペシャルなGT-Rだ。イタリア語のカロッツェリアという言葉には板金工場という意味もあるが、まさにイタルデザインの職人によるボディメイクを受けたのが、この50周年記念モデルだ。
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公開されている開発ムービーによると、たしかに最新のGT-R(発表によるとNISMOがベース)からパーツを取り外し、ホワイトボディ状態にして切り刻んでいる様子が確認できる。ピラーをカットしているのは、いわゆるチョップトップと呼ばれる手法で、すべての外板はハンドメイドにより生み出されたシートメタル(薄い鉄板)製となっているのは、まさにコートビルドと呼びたくなる。
この映像では、前後ピラーをカットしたことによるボディ剛性ダウンをカバーすべく、パイプによる補強がされているのも確認できる。また高速域でもしっかりとウイングを支える可変式ステーの構造も映っている。スタイリング重視で切った貼ったしたのではなく、走りにおける妥協もないことが見て取れる。
実際、GT-Rの象徴ともいえるVR38DETTエンジンはGT-R NISMOのスペックが600馬力、652N・mなのに対して、Nissan GT-R50 byItaldesignでは720馬力、780N・mまでアップされているのだ。日産とイタルデザインのダブルネームをつけたこと、GT-Rとイタルデザインの50周年を記念した特別なモデルであることを考えると、これだけの出力を受け止めるボディ、シャシーに仕上げていることは疑う余地もない。
しかも、このスペシャルなGT-Rは市販される。50台限定で、販売価格は90万ユーロ(約1億1000万円)と発表され、その価格に自動車ファンは騒然となったかもしれない。たとえエンジンが量産品をベースとしているといっても、内外装のほとんどすべてをイタルデザインの手によって変身させられた特別なモデルが1億1000万円というのは、製作に関する手間と希少性を含めて考えれば妥当といえよう。1億円以上を支払うオーナーからすれば、50台の生産台数は多い(もっと希少性を高めてほしい)と思うかもしれないが……。
ちなみに、あのフェラーリが50周年を記念して生み出したモデル「F50」は、5000万円程度の価格であったが300台を超える生産台数があり、希少価値という意味では50台限定のNissan GT-R50 by Italdesignは、その条件を十分に満たしている。
自動車ファン、日産ファンとしては投機対象としての購入はノーサンキューという感情になるだろうが、将来的にはオークションで車両価格を上まわるプライスが付くであろう可能性は高い。もっとも、そのためにはGT-Rというブランドが高いレベルで維持されている必要がある。50周年で終わりなのではなく、次のGT-Rにつながってこそ、このスペシャルなGT-Rの価値は高まるだろう。
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