アジアに富裕層は押し出しの強い顔に魅了される
中国、タイ、インドネシアなどのアジア地域を訪問する機会の多い筆者。それらの国の主要都市を訪れると、決まったかのようにアルファードが日本並みかそれ以上の頻度で街なかを走っている姿に遭遇することが多い。車両価格はいずれも日本からの完成車輸入になることもあり、関税などの諸税も結構かかることもあり、1000万円を超える価格設定になるのが一般的。いまやアルファードは新興国向け戦略モデルとなっているといってもいいだろう。とにかく、あの押し出しの強い顔つきに、アジアの富裕層が魅了されているのである。
ベトナムでも、滞在を重ねていくと、街なかでその姿をチラホラ見かけることができた。ベトナム市場では2017年12月より正式発売されているとのことであった。
ベトナム市場において、アルファードの属するフルサイズラグジュアリーMPVカテゴリーで主導的立場となるのは、韓国ヒュンダイグループ傘下の起亜自動車のセドナとなっている。とにかく“街を歩けばセドナにぶつかる”といっていいほど、街にあふれている。しかし、あくまで筆者の個人的感想となってしまうが、やはりベトナムでもアルファードはこの国の富裕層にも“グサッと”刺さるのは間違いなく、セドナをただいま猛追しており、セドナを追い抜くのも時間の問題となるかもしれない。
しかし、セドナの車両価格が10億6900万ドン(約514万円)なのに対し、アルファードは40億3800万ドン(約1940万円)となり、アルファードの価格はセドナの約4倍となっており、もともとガチンコでのライバルにはなりえない関係となっているのである。
それなのに筆者がこの2台をあえて同じ土俵のクルマのように紹介しているのは、アジアの富裕層というのは、我われ日本人の想像をはるかに超える財産を築きあげているので、「セドナよりゴージャスなモデルがある」となれば、たとえ価格が4倍になろうが、ポンと乗り換えたりもするのである。
日本と同じ左側通行で右ハンドルの国では、アルファードが正規輸入販売されていても、わざわざ正規輸入仕様にはない、日本国内仕様のアルファードを個人輸入している業者から購入する富裕層も目立つ。彼らは日本仕様にわざわざ乗ることで、さらなる優越感を味わっているのである。
富裕層になればなるほど、“誤差(ここでは価格差)”の許容範囲が広がっていくのである。日本メーカーでトップブランドのトヨタがラインナップし、アジア各国の富裕層の間で人気が高いとくれば、ベトナムの富裕階層のなかでもアルファードを買おうというひとは決して少なくないはずである。
もともと、豪華さを全面に押し出す、高級ミニバンは日本メーカーの得意技であり、欧米メーカーでは、あのギラギラしたイメージは理解されないので、せいぜい韓国系や、中国メーカーが中国国内で展開しているぐらいで、はっきりいって日本国内のみならず、世界的にもアルファードのはっきりしたライバルは存在しないといえよう。アルファードはちょっと意味は違うかもしれないが、トヨタにとっては新興国マーケットでの、水戸黄門の“印籠”のような、“とっておきの武器”となっているのである。
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