2018年9月にスバルの川崎市・東扇島物流センターと隣接する埠頭での北米向け輸出用の自動車運搬船への車両積み込みを見学するチャンスがあった。スバル車は、この川崎港以外に千葉、横浜、横須賀、茨木の常陸那珂港の合計5ヶ所の港で船積みが行なわれている。今回見学した日本郵船の「ヘラクレスリーダー」は、この川崎港でスバル車を積み込んだ後、の常陸那珂港でも車両を積み込んでから、太平洋を横断し、パナマ運河経由でアメリカ東海岸のボストン港を目指す。
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自動車運搬船とクルマの積み込み
スバルは2016年度で東扇島から27万台を船積みし、近年は輸出台数の増大に比例し、船積み台数は右肩上がりに増えてきている。もちろん現在では、アメリカ市場で需要が大きいフォレスターとXVがメインとなっている。
今回、川崎・東扇島埠頭に接岸したのは日本郵船の自動車運搬船「ヘラクレスリーダー」(6万3000トン)だ。船体は全長199.94m、全幅32.26m、全高44.98mで、自動車運搬船として標準的なサイズだという。
この船のスターンランプと呼ばれる船尾ゲートのランプ台(スロープ)から車両は自走で搬入される。かつてはクレーンを使用して貨物船に積み込む方法だったが、自動車の大量輸送の時代を迎えると、高効率な自動車専用のランプ式積み込みがメインになり、自走ランプ、多層デッキを備えた自動車専用の運搬船が使用されるようになった。
ヘラクレスリーダーは12層の車両甲板を備え、乗用車で4900台を積載できるという。船内の構造は大きな立体駐車場のようで、上下間隔の狭い多層甲板で構成されている。甲板の天井は2.1mと狭く、乗用車を想定した、多数の車両を積み込めるようにしている。一部の甲板は2.4m~3mと上下間隔が広く、トラックやバスも積載できるように工夫されている。このような自動車運搬船は重心が高く、空洞容積が大きいため、海に浮かぶ風船と呼ばれる。つまりそれだけ風や波の影響を大きく受けやすいので、海水バラストの調整はもちろん、操船は難しいという。
車両の積み込みを担当するのは荷役会社で、荷役員はギャングと呼ばれる。監督者の指揮のもとでドライバーが車両を一定の間隔で走らせ、デッキに積み込み、合図係の指示のもとで整列駐車させる駐車専任者、整列した車両をデッキにラッジングベルトで固定する担当者とそれぞれ役割を担っている。時間あたりに効率よく積み込むためには、荷役チームの呼吸の合った連携プレイが求められるのはいうまでもない。
甲板で整列駐車された車両は、ドアtoドア、つまり左右の間隔は10cm、バンパーtoバンパーの前後間隔は30cmが基準だ。つまり整列駐車した後にドライバーは左ドアからすばやく降りて、ドアを閉めると直ちに次の車両が隣にバックで駐車される。
先に駐車したクルマからすばやく降りないと、ドライバーはクルマから降りられないということになるので、連携作業の正確さが重要だ。そういうわけで、荷役作業担当者は、まさにいずれも職人技が求められている。もちろんびっしり駐車した車両の塗装面に傷を付けないように最新の注意も払われている。
65万ccの直列8気筒2ストローク・ディーゼル
今回は、ヘラクレスリーダーの最上甲板、ブリッジ、士官食堂、食料冷蔵庫から機関室まで見学することができた。ちなみにヘラクレスリーダーの乗組員は23人で、日本船籍だが全員外国人で船長、士官はルーマニア人、船員はインドネシアやフィリピン人だ。
さて、機関室にはメインの三菱重工製の直列8気筒、64万9980ccの2ストローク過給ディーゼルエンジンが搭載され、低速で直接スクリューを駆動する。ボア×ストロークは600mm×2300mmの超ロングストロークで、継続最大出力は2万1128ps/104rpm、通常出力1万8000ps/99rpm。最高熱効率50%レベルの舶用ディーゼルエンジンだ。このメインエンジン以外に、発電用のディーゼルエンジンを2基搭載している。
もちろん現在は船舶用ディーゼルにも環境・排ガス対策が採用され、フル電子制御化されており、各種の制御はリモートコントロールで、基本的には無人運転となっている。
目的地のボストン港に到着するまで約3週間の連続運転はもちろん、20年間の耐用年数を持っている。最も価格の安いC重油を燃料とし、最高熱効率50%を誇る高効率のこうした船舶用大型・低速ディーゼルエンジンは一つの究極のエンジンといえる。
日本で生産されたクルマのうち、普通乗用車は75%、小型車は20%が輸出されており、総輸出における自動車の比率は高い。自動車の輸出は輸出立国、日本の基幹であり、港での自動車運搬専用船へのクルマの積み込みはその象徴的なシーンといえる。自動車の船積み見学会も時々開催されているので、機会があれば一度は見ておきたい。
スバル東扇島物流センター 公式サイト
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