■狭くて見通しも悪い通行が難しい道路
「国道」といえば、地域の基幹をなす幅の広い幹線道路というイメージがあるかもしれません。実際、道路法第5条でも、「高速自動車国道と併せて全国的な幹線道路網を構成」するものとされています。
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しかし、そのようなイメージとはかけ離れた状態の国道もあり、国道をもじって「酷道」と呼ばれることもあります。そうした道を好んで走る人もいますが、実際どのような道なのでしょうか。その特徴をいくつか挙げてみましょう。
・道幅が狭く、大型車どうしのすれ違いが困難な区間・曲がりくねっていて見通しが悪く、山林で昼間も薄暗い。崖が迫る地形ながらガードレールがない区間も・路面状態が悪く、舗装の荒れや落石、落ち葉などの堆積が見られる。橋がなく道路上を横断する小さな川や沢を通る「洗い越し」の区間も・未舗装区間や自動車交通不能区間
「酷道」という言葉に定義があるわけではなく、人によっても捉え方は異なりますし、実際に酷い状態であるのは、その路線のごく一部というのが大半です。
では一般国道のなかで「酷道」が日本にどれほどあるのかという、数値的な目安を便宜的に挙げるとすれば、道路を新設・改築する際の技術的基準となる道路構造令に基づかない未改良区間かつ幅員3.5m以下の区間が約828km、そのなかで「幅員、曲線半径、勾配その他道路状況により、最大積載量4トンの貨物自動車が通行できない」自動車交通不能区間が約144km、および未舗装区間が約320kmあり(いずれも2016年4月現在)、これらを「酷道」の候補と見ることができるかもしれません。
また、なかには国道291号の群馬・新潟県境区間(清水峠)のように実質的には登山道、あるいは獣道となっているような区間もあります。当然ながら車両は通れませんが、国土地理院の地形図で幅員1.5m未満の道路として点線で記載されることから「点線国道」とも呼ばれています。反対に、狭い住宅街の路地やアーケード商店街が国道に指定されているケースもあり、これらも「酷道」に含められることもあります。
■「日本三大酷道」とは?
一般的に酷道とされるのは300番台や400番台の国道に多く、ファンのあいだで「日本三大酷道」と呼ばれるつぎの3路線も400番台です。
・国道418号(福井県大野市~長野県飯田市、総延長267km)
中部地方の山岳地帯を縦貫するように、いくつもの峠を越える国道です。国道157号との重複区間である福井・岐阜県の温見峠はガードレールのない隘路(あいろ)が続き、「落ちたら死ぬ!」という看板があることでも有名です。岐阜県の八百津町から恵那市に至る区間は、危険であることから通年通行止めとされています。
・国道425号(三重県尾鷲市~和歌山県御坊市、総延長193.5km)
紀伊半島を横断する国道です。ほぼ全線にわたって険しい山道が続き、すれ違い困難な場所やガードレールも設置されていない場所も多く存在します。地図上では紀伊半島の西側と東側をショートカットできるように見えるものの、実際には海沿いに国道42号を通行したほうが早いといわれます。通称「シニゴー」。
・国道439号(徳島県徳島市~高知県四万十市、総延長348.9km)
四国山地を東西に縦貫する長大な国道です。一部区間を除いて狭隘(きょうあい)で見通しの悪い区間が多く、いくつもの峠と山村集落を超えていきます。徳島・高知県経の京柱峠など、通行が難しいながらも絶景がみられることもあり、ここをチェックポイントに設定する自転車イベントも開催されています。通称「ヨサク」。
ここで紹介した3路線を含め、「酷道」と呼ばれる道路あるいは区間の多くは、はじめからそのように呼ばれていたわけではありません。こうした区間が特に多い300番台や400番台の国道は、もともと複数の県道などが1本にまとまり国道に昇格したケースも少なくないのです。
国道は「全国的な幹線道路網を構成」するものですが、現在「酷道」と呼ばれる道路の多くは、より地域の生活に密着した道路の集合体です。見方によっては「酷道」こそ集落と集落、街と街をつなぐ日本の道路の原風景であるといえるかもしれません。ちなみに、通行が厳しい県道も「険道」などと揶揄されることもあり、酷道以上に膨大な数が存在します。
また、道路改良によって「酷道」が解消されるケースもあります。たとえば、登山道同然の山道に国道の標識(いわゆる「おにぎり」)が立つことで有名だった国道289号の甲子峠(福島県南部)も、並行区間を橋やトンネルで通過する甲子道路が2008(平成20)年に開通したことで車両通行不能区間が解消し、山道の標識は撤去されました。このように道路の改良が進むにつれ、「酷道」はなくなっていく運命にあるのです。
なお、今回紹介した道路を実際に走行する際は、運転に十分注意し、少しでも危険を感じたら引き返すなど自重してください。
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