運転の醍醐味を語るうえで欠かせないのがトランスミッション、即ち変速機だ。今や圧倒的少数派となったマニュアルトランスミッション(MT)ながら、実は欧州では依然として主流派の変速機でもある。
交通環境の違いはあれど、未だに欧州で高い支持を受けるのは、MTならではのメリットがあるからこそ。日本でも近年はマツダが積極的にMTを導入し、ジムニーの先代モデルはMTが4割を占めるなど、意外にも根強い支持がある。
では、同じ車種ならMTとATどちらが良いのか? MTとAT、双方のトランスミッションをラインナップするマツダのCX-3、そしてアクセラを題材に、それぞれのメリットとデメリットを検証。
実際にテストしてみると、意外な“相性”も見えてきた!
文:松田秀士/写真:平野学
ベストカー 2018年9月26日号
CX-3は「ATよりMTのが良い」ワケ
CX-3の1.8Lディーゼルはこれまでの1.5Lにあったウィークポイントをかなり改善。何がよくなったかというと低中速域のトルクが断然厚くなった。このエンジンのメリットを生かす走りにおいて、ATとMTどちらがベターかという点を考えた。
答えはMTだ。その理由は1500rpmあたりから充分なトルクを発生し、2000rpm以上だとかなり力を感じる加速力を1.8Lディーゼルは持っているから。
ちなみに最大トルクは1600rpmから27.5kgmを発生し、3速ギヤの40km/hは1600rpm、4速ギヤの50km/hは1500rpm、5速ギヤの70km/hは1500rpm。各々この速度域から加速するのにほとんどストレスを感じさせない。そして2000rpmを超えれば圧倒的な加速力。
これに対してATはどうか? 各ギヤと速度を比較した時、トルコンの滑りによる誤差はあるけれど、ATもMTもほぼ同じギヤ比である。
ATの場合、アクセルの踏み加減によってシフトコントロールが緻密に頻繁に行われている。これはマツダの6速ATが優秀であるからなのだが、普通に加速していった時、2000rpmを超えると急激に加速力が強まる。
これを控えめにしたい時は、あらかじめアクセルの踏みシロを浅くすればいいのだが、そうすると、どんどん上のギヤにシフトアップするので想定外に加速力が弱まる。そこでアクセルを踏み込むと一気に2速ダウンシフトすることがあった。当然3000rpmを目指した加速に変わり、“トゥーマッチ”になったりするのだ。
つまり、ATの場合、スムーズに走らせるにはこのようなクセを予測して学習しておく必要がある。言い換えればそれだけエンジンのレスポンスがいいのだ。
MTの場合、クラッチは重すぎず軽すぎず(ガソリンエンジンよりは重い)、そしてシフトのストロークとクラッチの重さ&ストロークがシンクロしているので、シフト操作がスムーズに決まる。
また、車庫入れなどの場面でも1速ギヤの左上にシフトレバーを押してRギヤに入れるタイプなので、操作が楽で早い。
MTで唯一残念なのはエンストした時にクラッチを踏んでも、アイドリングストップから始動する時のようにスターターが始動しないことだ。
逆にアクセラはATがMTよりストレスレス
直4、1.5Lのガソリンエンジンは基本ロードスターと同じだが、アクセラの1.5L用には重量の違いもあり、低中速域にフォーカスして改良したものだという。そのアクセラ1.5LモデルのMTとAT、どちらがベストチョイスか? 松田秀士的にはATがベストチョイスだ。
この1.5Lエンジンは14.7kgmの最大トルクを3500rpmから発生。3500rpmがこのエンジンの実用使用域分水嶺だと頭に入れ、実際にアクセルを踏んだ。
まずMTから。3000rpm以下でも比較的トルク感があり、ひとり乗りならほとんど問題ない。ただし、多人数乗車になるとどうか? MTで各ギヤのエンジン回転と速度を見ると2速40km/hが2800rpm、3速40km/hが1900rpm、3速60km/hが3000rpm、4速60km/hが2300rpm。この各ギヤの回転数が一般道での実用域だ。
4速60km/hの2300rpmでの市街地走行は最高速が60km/hの比較的直線道であれば問題なし。ちなみに5速ギヤだと60km/hは1900rpm。これも百歩譲って問題なしとしよう。ただし、ここからやや強い加速を求めると3速3000rpmにダウンシフトしたくなる。多人数乗車ならこれは必須。
そこで、AT車に乗り換えると、ATにはスポーツモードスイッチがあり、これをONにすると3000rpm前後を維持するように6速ATがギヤをセレクトしてくれる。このチョイスがかなり優秀で、特に市街地ではストレスを感じさせない加速力を見せてくれる。これなら多人数乗車にも耐えられるはずだ。
また、ノーマルモードにすると、ギヤセレクトは高いギヤになるので、それなりにストレスは感じるのだが、信号が少なくストップ&ゴーがあまりない田舎道であれば問題ない。スポーツモードにして回転数の高い域を使っていても、このエンジンなら高回転域までバイブレーションが小さくストレスがないので気疲れすることもないはず。
ただ、ストレスは覚悟のうえで燃費を優先したい人にはMTがお薦め。やはり、アクセルの踏み込み量と回転数を繊細にコントロールすれば燃費は飛躍的によくなるからだ。
【結論】MTとAT、それぞれの長所と短所は?
欧州では今でもMT比率が高い。その理由は加減速感がナチュラルなことと、各ギヤのセレクト権がドライバーにあるから、加減速のコントロールが行いやすいこと。この環境に慣れ親しんでいるからだ。
もうひとつ、MT車のほうがAT車に比べて構造がシンプルなので圧倒的に軽量であることも要因だ。そして車両価格も安い。
今ここで日本人もMTを再認識するべき、と筆者は考える。MT車なら高齢者によるアクセルの踏み間違いも、かなり高い確率で抑止できる。
今回感心したのはマツダ アクセラ1.5LのMT車にはACC(先行車追従型クルコン)とLKA(車線逸脱回避支援システム)が装備されていたこと。
このふたつの装備があれば、高速道路で疲労をかなり軽減できる。カローラスポーツのMTにはACCの設定はあるがLKAはない。MTモデルにもLKAは必須と考える。
この点、マツダは理解が深いと感じる。さらにアクセラでは発進でエンストしても、クラッチを踏み込めば自動的にスターターが回り、エンジンがかかる(CX-3の場合はNGだったが)。でも、日本人はAT車を買うだろう。そういう民族なのだ。
では、最近2ペダル車、AT以外にDCT(デュアルクラッチトランスミッション)、CVTとあるがこちらはいかがなものなのか? 正直、燃費を優先するのならCVTを選ぶべき。CVTの無段変速コントロールは効率がいい。
ただ、長い下り坂でのエンジンブレーキが弱く、マニュアル操作を覚えておいたほうがブレーキの負担を減らすことができる。
その点、DCTは加減速フィーリングが最もMTに近いのでお薦め。ただ、こちらもCVT同様にクラッチおよび変速機構を動かすための補器類(オイルポンプなど)を必要とし、構造が複雑になり重量が増す。
特にエンジン横置きのFF車ではフロント重量が増え、ハンドリングに影響することは覚悟しなくてはならない。
今回、両車ともにAT車の乗り心地が硬く感じた。おそらくMT車に比べて重くなるATへのサスペンション系の変更があったのだろうか。
◆MT、ATをともにラインナップする国産車
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