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【繁浩太郎の言いたい放題vol.40】ホンダ N-VANは、バンなのか? 新たな市場開拓型に期待

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【繁浩太郎の言いたい放題vol.40】ホンダ N-VANは、バンなのか? 新たな市場開拓型に期待

ホンダの元開発責任者の繁浩太郎さんが、注目を浴びるホンダの軽商用車N-VANをチェック。ホンダ在籍時代には軽自動車開発も担当していたので、舌鋒鋭くぶった切るのか? 早速お伝えしましょう。


商用バンの市場とホンダ

N-VANは夢が広がる新しい軽ミニバンでした!<by:藤本えみり/Emiri Fujimoto>

ホンダは好調なNシリーズに、N-VANを追加した。元々、ホンダは商用トラックのT360で1963年に四輪に参入し、その唯一無二のデザインとDOHCエンジンによる走りで、大きな話題となった。1977年からトラックは、アクティシリーズとなり、1979年に商用バンが加わり今に至っている。

だから、軽トラックとバンはホンダ四輪の原点といえるのだ。

今回、そのバンが伝統のミッドシップ・レイアウトからFFになり、アクティシリーズでなくNシリーズとして約20年ぶりに生まれ変わった。

ホンダの資料によれば、バン市場は右肩上がりで、特に、最近は20万台/年超えと好調だ。基本的に広い荷室や税金が安いことから、個人や法人ユーザーのダウンサイジング志向と、宅配などのニーズ増ではないかと思う。しかしその中で、ホンダのシェアは右肩下がりだった。

バンの特性、特質

バンは言うまでもなく、荷物や道具を多く載せて運べることが一番の要件だが、仕事の道具なので価格も大切な要素となる。そこで、軽商用を製造する自動車メーカーは、生産効率を考え4ナンバーの商用だけでなく、乗用タイプもラインアップし、そしてトラックともできるだけ共用部品を増やして、償却費を考えている。

今回のN-VANは、乗用のNシリーズがFFということもあり生産工場が変わることになった。ホンダの子会社である八千代工業はミッドシップ・レイアウトの車両を生産しており、アクティはここで生産されていた。だが、FFのNシリーズは鈴鹿工場で生産されており、N-VANがFFとなったことで、生産工場は鈴鹿工場に集約され、Nシリーズとしての生産効率は上がり、また、償却台数にもメリットが生まれるわけだ。

残されたミッドシップ・レイアウトのアクティトラックの生産は、もともと生産している八千代工業に残りそのまま残る。だが、その生産台数からして、効率的には厳しくなる。ちなみにS660も同じ八千代工業生産で、ミッドシップ・レイアウトだが共用性は少ない。

一般的にバンやトラックは広い荷室スペースを設計し、そこに重い荷物を載せるので、上り坂を考慮してリヤ駆動となっている。ダイハツやスズキのエンジンはシートの下にあるキャブオーバーとなっているわけだ。また、1961年から2012年まで自社生産、販売していたスバル・サンバーは、より駆動効率の良いリヤエンジンのレイアウトであった。

考えてみると、昔はエンジンも非力だったし、また過積載も多かったらしく、リヤ駆動は必然だったのだろう。

4ナンバーのN-VAN

さて、ホンダはなぜリヤ駆動が一般的な市場に、FFで乗り込んできたのか? 先程の生産効率やリヤ駆動の理由で半分は説明できたと思うが、ここからが本当の理由だ。

ホンダは乗用車では多くのヒット作があるが、商用車は少ない。有名な軽自動車のステップバンは販売台数2万台弱で終わっている。

これは、販売の仕方やコスト、乗用車中心の開発体制など様々な要因があるが、「台数が売れない、投資できない」「投資できない、台数が売れない」というジレンマから抜け出せなかったのだ。事実、現行のアクティバンは古い設計仕様のままで、約20年の間思い切った投資はできなかった。

それが今回、大ヒットのN-BOXとの共用化で、生産効率やコスト、投資などのジレンマから抜け出せて、生きる道ができたというわけだ。

N-VANがN-BOXと共用化となると、ユーザーの喰い合いが心配される。そこで、N-VANは4ナンバーだけとし、大開口のセンターピラーレス・スライドドアと底床フロアなど勝ち技となる専用設計をしたのだ。

試乗

ベーシックなGタイプと+STYLE FUNタイプ、さらに+STYLE COOL・ターボ タイプとラインアップの基本となる3車に試乗した。

まず、ドラポジだが、今までのアクティバンのようなトラック的なものではなく、かといって乗用車の位置でもなく、中間的なポジションとなるが、立派なインパネとあいまって運転感覚はほぼ乗用感覚で、「バンを運転している」感じは少ない。また動力性能からNVHまで、乗用的な感覚でドライブできる。

次に、自然吸気とターボだが、今どきのNAならCVTでエンジン回転は上がるものの、ガンガン走る。試乗車には、+STYLE FUNタイプに、100kgの荷物相当のウエイトを載せていたのにだ。

しかし、その後の+STYLE COOL・ターボにはウエイトもなかったせいか、エンジン回転もそんなに上がらない走りができて、ガンガン走るというより、スムーズで余裕の走りができた。

GタイプはNAの6MTで6速はオーバードライブになっており、高速が楽だ。またフル積載の時は、ローギヤードな1速は必要だろうが、急な上り坂もない普通の道では、NAでもエンジントルクがフラットなので、2、3、4、5速のうち1つや2つ無くても十分走れるくらいの余裕だ。

当然、お勧めはスムーズな走りができるという意味で、ターボCVT仕様になるが、ターボの設定は、+STYLE FUNと+STYLE COOLタイプにしか設定されていないのがチト残念。

残念ついでに、全車4ナンバーでタイヤが「バンタイヤ」となり、これは名のとおり乗用として使うと、当たり前だが、チト残念。

使い勝手

それにしても、センターピラーレス&スライドドアによる大開口、さらに前後シートを畳むと底床フロアと相まってホントに低くて積載性バツグンの荷室ができ上がる。

ホンダらしくて良いのは、シートを畳んだ際にできる前後シートの隙間もきっちりとカバーしていて、さらにこのカバーを使わない時には、なくさないようにストラップがついている親切設計だ。

さらに、ホンダらしい安全思想は運転席側と助手席側のフロアの間に、ちょっとした間仕切りがあり、バンの場合はどうしても小さな荷物やあき缶などが転がりやすく、それが運転席側に来ないようにと考えたものだ。これは、創業者、本田宗一郎最高顧問の安全思想となる。

もちろん、この荷室を活かしたアウトドアの遊びや車中泊などはお勧めで、そのための電源やトレーなど多くの用品も用意されている。

まとめ

長手方向の荷室の広さを確保するために、エンジン位置はシートの下というのが一般的なバンに対して、上下方向の広さや様々な使い勝手を究極まで突き詰めたのが、FFのN-VANだ。本当に、ものほし竿やサーフィンのロングボードのような長尺物以外は、載せやすく、より多く載せられるようだ。

N-VANは多くの荷物を載せるハードな使い方もちろん、そのシンプルさがセンス良くオシャレという今の感覚で、個人使用はもちろん、お花屋さんやパン屋さんのような、おしゃれな商用車を待っていたユーザーも多く、今までになかった幅広い市場に受け入れられそうだ。

ただ私は、こうなると市場開拓型の新商品だから、もう少しデザインに提案性があっても良かったかなとも思う。いずれにしても、久々のホンダの新マーケットチャレンジ商品に期待したい。

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