■16年の沈黙を破って登場の3代目GT-R
幻ともいわれた2代目「GT-R(KPGC110)」のあと、GT-R登場の噂はあっても実現しないまま時代は過ぎてしまいました。そして、『昭和』が終わった1989年(平成元年)に8代目「スカイライン」へのモデルチェンジとともに、3代目「GT-R(BNR32)」が登場。フルタイム4WDと2.6リッターターボのエンジンを搭載し、ツーリングカーレースでは無敵の時代を迎えました。
3代目「GT-R」は、初代や2代目「GT-R」と同様にスカイラインのいちグレードとして発売。その当時の日産は、1988年に「シーマ現象」という流行語を生み出すほどヒット車を連発しています。『走り』や『デート』にも使えるシルビア、CMが話題になったセフィーロ、スカイラインの姉妹車だったローレルなどを相次いで発表。その流れの中でスカイラインも1989年5月に8代目が発売されました。
当時、日産は1990年代までに技術力で世界一を目指すスローガン『901運動』の真っ最中。ノリに乗った状態での登場だけに、8代目「スカイライン」も走りに関しては期待をされていました。
7代目「スカイライン」が万人向けにボディが肥大化していたことに対して、8代目「スカイライン」はぎゅっと締まったボディを採用。先代よりもトランクルームの狭さや室内の狭さというマイナス面は、ほとんど指摘されませんでした。
そんな中で、走りの良さをスタイリングでも表現していた8代目「スカイライン」に「GT-R」のブランドが復活するとなれば、期待は大きくなるというものです。通常モデルよりも3カ月遅れた1989年8月に3代目「GT-R」が発売されました。
■レースを見越した2.6リッターエンジン
8代目「スカイライン」の登場した1989年は4月に『消費税』がスタートしただけでなく、クルマの税制が大幅変更となり、それまでと違って3ナンバー車でも維持費が極端に高くなることはなくなります。
3代目「GT-R」も、2リッター超えとタイヤ部分の張り出しのおかげで3ナンバーになりましたが、2リッターエンジンの他のスカイラインとそれほど維持費が変わらずに乗れるようになりました。
しかし、自動車税が1段階上がった2.5リッターのエンジンを投入するクルマが多いなか、2リッターエンジンに比べて2段階も自動車税が上かった2.6リッターという排気量になったのはレースの基準に合わせたことによるものです。
そして、ただ排気量を上げただけでなく、レースにも対応できる耐久性を備えていたことも「GT-R」に搭載されたRB26DETT型エンジンの特徴です。
また、「GT-R」には走りのための最新メカニズムを満載しました。なかでも、「GT-R」のフルタイム4WDは、それまでのように受動的に前後の駆動配分をするのではなく、各種センサーの値から電子制御で駆動配分をする方式を採用。
悪路を走行するためのものではなく、あくまでエンジンの力を余すことなく路面に伝え、サーキットを早く走るためのものとなっています。
レースにも対応できるほどのエンジン、その出力を確実に路面に伝えるシステムを持った「GT-R」ですが、バブル経済と言われた好景気だったこともあり、約450万円という小型高級輸入車と同価格帯にも関わらず、多くの人を販売店へと向かわせたのです。
■無敵の活躍をしたツーリングカーレース
3代目「GT-R」の人気は、レースでの活躍でさらに加速していきます。1990年から全日本ツーリングカー選手権に参戦、デビュー戦から圧勝ともいえる勝利を飾り、その後、無敗記録を伸ばしていきます。
1993年までの全日本ツーリングカー選手権は、 国際自動車連盟 (FIA) の定める「グループA(量産車部門)」規定のクルマが参加していました。 市販車に近い状態で参加しているため、自分に身近なクルマと同じ形のクルマがサーキットで圧倒的な力を見せていることに興奮を覚え、「GT-R」の人気をさらに高めました。
3代目「GT-R」を参戦車両として採用するチームが増えるほか、レース環境の変化や参加カテゴリに関わらず、最後まで圧倒的な走りを見せたのが3代目「GT-R」の最大の特徴ともいえます。
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