■4代目の反省を活かし、5代目は保守的なデザインに
トヨタ クラウンの失敗作とも言われ、革新的なあまりセールスでは不調だった4代目の後である5代目は比較的保守的にまとめられました。
これはヤバイ!トヨタ 新型「クラウン」はハイパワーユニット搭載でスポーツセダンに進化
1974年10月、トヨタ 5代目クラウンが発売されました。この頃起こった象徴的な出来事といえば、読売巨人軍の長嶋茂雄が「我が巨人軍は永久に不滅です」という言葉を残して引退した年として有名です。また、セブンイレブンの第1号店が東京・豊洲にできたのもこの年です。64年に及ぶ昭和もまもなく第4コーナーを曲がろうとしている、そんな時代です。
高度経済成長を経て、劇的に変化していった日本ですが、クラウンに求めていたのは伝統的な落ち着きのある高級感でしょう。元々、国産初の高級乗用車として登場したクラウンは、世界に先駆けた先進的な技術を搭載しているクルマでした。
しかし、先代の4代目クラウンでは、スピンドルシェープと呼ばれる挑戦的なデザインを採用した結果、保守的なデザインを好む層から敬遠されてしまい、ライバルである日産のセドリック/グロリアに販売台数で後塵を拝することになってしまったのです。
そこで、5代目クラウンでは、当時の王道中の王道と言えるデザインを採用、「美しい日本のクラウン」というキャッチコピーとともに世に出されることになったのです。
■風格と格調のニュークラウン、4ドアハードトップ登場
5代目クラウンのカタログには、「あくまでもクラウンの格調を大切にしました」という言葉とともに「風格と格調。ニュークラウンをごらんになると、まさにその言葉がぴったりと当てはまります」と記されています。
一方で、日本全体が豊かになってくると、富裕層の嗜好も多様化してきます。5代目クラウンでは、従来の4ドアセダン、2ドアハードトップ、ワゴン、バンに加えて、4ドアピラードハードトップが追加されました。伝統的な高級車としての地位を残しておきつつ、時代に配慮したバリエーションを用意するのは、クラウンの伝統といえるでしょう。
また、あえてモデルを増やすのではなく、クラウンファミリーとしてバリエーションを増やしていくところに、「クラウン」という名がいかに、ブランド力を持っていたかがうかがえます。
モデルとしての性質は異なりますが、現在のポルシェでも、911というビッグネームの下に、数多くのバリエーションを持たせています。当時の国産車で、クラウンほどのブランド力を持っていたモデルはそれほど多くはなかったでしょう。
■排ガス規制強化、時代の流れに翻弄されたモデル
5代目クラウンは、消費者のニーズに合わせたクルマということもあり、順調な売れ行きを見せました。しかし、当時世界的に環境問題が深刻化していった時代でもあり、米国では通称マスキー法と呼ばれる厳しい自動車環境規制法が成立、トヨタを含む自動車メーカーが対応を迫られていました。
日本でもその流れは進み、年々排出ガス規制が厳格化されていきました。同時代の多くのモデルがそうであったように、5代目クラウンも毎年のように年次改良を行い、規制へ対応していくことになります。
エンジンの基本構造を変更するには多大なる時間と予算が必要となるため、対応部品を後付けすることで規制に対応する方法をとりましたが、そのたびに乗り味が変化するなど、時代の流れに翻弄されたモデルでした。
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