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住んでわかったドイツの運転マナー。せっかちなドイツ人に効くドイツ流「あおり運転」対策とは?

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住んでわかったドイツの運転マナー。せっかちなドイツ人に効くドイツ流「あおり運転」対策とは?

ドイツに引っ越すまで、筆者は度々出張でドイツ各地を訪れていた。旅のお供は、贅沢にも会社が予約してくれた最新のアウディA4や、VWパサートのようなDセグメントのレンタカーだ。

交通マナーは日本よりもよいと思っていたドイツ出張時代

「煽られたらどうする」よりも「煽られないために」を考えてみる

レンタカーの常で、最小排気量のディーゼルモデルで、メーター読み時速200キロ出るか出ないかのパフォーマンスだが、アウトバーンの無制限速度区間でミサイルのように後ろから迫ってくる大排気量モデルやスポーツカーを除いて、運転に特段気を使うこともなく、ドイツは比較的交通マナーのよい国だと思っていた。

コンパクトカーに乗って分かった、ドイツの自動車ヒエラルキー

ところがどうだろう。ドイツに引っ越してからしばらくの間、Aセグメントのコンパクトカーに続けて乗ることになったのだが、手のひらを返したように周りのクルマの運転マナーが悪くなった。

具体的にいうと、脇道から合流するクルマが減速せず目の前に突っ込んできたり、車間距離を詰めて煽られたり、黄信号(ドイツでは赤信号から青信号に変わる際、黄信号がでる)で動き出さないとクラクションを鳴らされるという事象である。

一番危険な脇道からの合流

ドイツの路上で常に危険を一番感じるのは、脇道から合流してくるクルマである。脇道側に一旦停止線がない限り、ほとんどのドライバーは減速せずスピードを殺さないまま突っ込んでくるのだ。脇道からのドライバーは、合流する側の流れが見えた一瞬で、そのまま合流できるかブレーキをかけて待つべきか判断するので、近づいてくる相手が遅そうなコンパクトカーであったり、価値の無さそうなボロ車だと、十分に合流できると思い、突っ込んでくるのである。

私の知る某ドイツメーカーの熟練テストドライバーですら、公道でテスト車両を運転中に、上記の判断を誤って優先車線を走るクルマの側面に突っ込む事故を起こしているほどだ。

読者の皆さんで、今後ドイツを走る機会がある方は脇道からの合流のクルマには十分注意していただきたい。

車格のヒエラルキーと先入観

車格や車種、ブランドによって、周囲のドライバーの態度が変わるのは、日本でも感じることがある。しかし、ドイツの場合はもう少しあからさまだ。日本よりも、乗っているクルマによって、ドライバーの社会的地位が分かりやすいからである。

古くはトルコや東ヨーロッパから、近年は中東と北アフリカから大量に移民が流れ込んでいるドイツ。ドライバーと、乗っているクルマとナンバープレートだけで、簡単にカテゴライズされてしまうくらいの先入観が一般的に形成されてしまっているのである。

例を挙げると、私がドイツに来て最初に購入した初代ランチア・イプシロンは、いま日本で見かければ、確実に好んで乗っている趣味の実用車だが、こちらだとイタリア系移民が仕方なく乗っているか、お年寄りが乗っていると思われているようだ。ドイツのお年寄りのクルマといえば、メルセデス・ベンツW124やW190もポピュラーで、老人ホームの駐車場によく停まっている。年式的に仕事をリタイヤする前後に購入したクルマを大切に乗っているのだろう。

メルセデス・ベンツのEクラスやCLSクラスの大排気量ガソリンエンジンモデルは、トルコ系のやんちゃなお兄さんに人気があるし、AMGやベントレー、マセラティのセダンは中東系のリッチマンに人気だ。逆にアウディRSシリーズやBMW Mシリーズは、ドイツ人のヤングエグゼクティブに人気である。最新のポルシェ911は、ストイックな走り屋は少なく、裕福そうな60代のマダムが乗っていることが意外に多かったりする。

発展途上国から来た人にとって、クラシックカーはただの古いクルマに見えるようだ。難民・移民としてきた中東の女性には、圧倒的に日本車と韓国車の中古車が人気である。アルファロメオは、エンブレムのミラノの紋章に描かれた蛇に飲み込まれている人間が、十字軍と戦っていたイスラム教徒だという話があるためか、イスラム系のドライバーは見たことがない。

脈絡も無く書いてしまったが、日々ドイツでクルマを運転するなかで、私の得た先入観はこんな感じだ。先入観という意味では、ドイツ御三家のDセグメントのクルマは一番バックグラウンドを特定されにくい。強いて言えば、会社から支給されたカンパニーカーに乗っていると思われるくらいだ。長くドイツに住んでいるアジア出身の同僚たちは、偶然なのか皆ドイツ御三家のDセグメントに乗っている。

ドイツ人の「あおり運転」対策

日本でも「あおり運転」が横行する柄の悪い地域で、軽自動車やコンパクトカーを運転するドライバーの中には、「なめられないように」自衛のためリアウィンドウに多種多様なステッカーを貼っていたりする。すでに日本の自動車文化の一部になってしまった感があるが、ちょっと悲しい。

欧米でも、同じロジックでリアウィンドウやバンパーにステッカーを貼るドライバーもいる。

たとえばアメリカだと、「全米ライフル協会」のステッカーが貼ってあるクルマを煽ってイラつかせようとは誰も思わないだろう。ドイツだと、なんと「ニュルブルクリンク」のステッカーが最強である。変り種で、「ホッケンハイムリング」や「ノリスリンク」のステッカーを貼っているのも見かけるが、ニュルブルクリンクのステッカーほど水戸黄門の印籠のように分かりやすいものはない。今は小さいクルマに乗ってゆっくりと走ってるように見えるかもしれないが、実はニュルブルクリンクを走り回ってて本当は狂ったように速いんだぞ、っとステッカーが自己主張してくれるのかも知れない。

ドイツ人が急ぐロジック

ドイツのドライバーがせっかちなのは間違いないが、彼らの思考ロジックが分かってきたとき妙に納得できるセオリーが見つかった。

家族や友達との余暇の時間は、仕事より何よりも大事にしているドイツ人。運転での移動時間は、できるだけ最小限にして、さっさと目的地に到着したい。アウトバーンが1929年に建設され、現在も多くの区間で速度無制限ゾーンが残っているのは、ドイツ人がスピード凶だからではなく、とにかく移動時間を節約して、1分でも多く余暇を過ごしたいからである。

当然せっかちなドライバーたちが、路上を一緒に走るわけだから、交通トラブルによる口論や説教は日本よりも断然多い。だが、赤信号の間は激しく口論するも、両者の最優先事項は一刻も早く目的地に着きたいことなので、腹の虫が収まっていなくても、青信号になると各々さっさと目的地に向かって爆走するのである。

そう考えると、ドイツで煽られても、信号でクラクションを鳴らされても、割り込まれて急ブレーキを踏まされても、それほど深く気にしないで済むような気がするのであった。

[ライター・画像/林こうじ]

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