日本には個性の強いクルマが多くあった。スポーツ性能に秀でた車種、快適性に秀でた車種など、明確なキャラクターでクルマの個性を楽しめる時代もあった。
しかし社会情勢の変化もあり、なんでも1台で済ませたいというニーズが高まった。燃費も、走りも、快適性も、とあれこれ詰め込んだ車種も登場した。
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しかしそんなクルマたちはあれこれ欲張った結果、中途半端なものも多いのも事実。今回は「頑張ったけれどあれこれやりすぎたクルマ」をピックアップします。
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
■クルマのコンセプトがわからない!! ホンダジェイド
外観は3ナンバーサイズの5ドアハッチバックだが、2015年の発売時点では全車が3列のシートを備え、6名乗車が可能だった。そのためにカテゴリーとしてはミニバン分類された。
ところが全高を1550mm以下に抑えたから、立体駐車場を使いやすい半面、3列目は極端に窮屈な補助席になってしまう。2列目も座面の奥行が1列目に比べて55mm短く、大腿部のサポート性が悪い。
つまりミニバンに含まれるクルマなのに、満足して座れるのは1列目だけだ。2/3列目を畳んだ時の荷室高も低いから、自転車のような大きな荷物も積めない。
その結果、ジェイドには「狭くて使えないミニバン」という市場の評価が下された。2015年の発売時点における1か月の販売計画は3000台だったが、2017年の月販平均は166台だから、目標のわずか6%にとどまる。
ちなみにジェイドのセールスポイントは走行性能だ。ワイドで低重心のボディは安定性が優れ、1.5Lの直噴ターボや直噴ハイブリッドによって動力性能も高い。
ただしミニバンでは、走りの良さは一種の付加価値になってしまう。居住性や積載性で満足できることが第一条件だから、走りが良くてもジェイドの評価は高まらなかった。
そこでジェイドは2018年5月にマイナーチェンジを実施して、スポーティなRSを従来の3列シートから2列に変更した。固定された後席は、スライドが可能な3列シート車の2列目よりも座り心地が快適だ。
走りもいいジェイドだがミニバンとして見ると少し難しい車種だ。コンセプトが消費者に伝わっていないのも要因か?
今は走りの良い5ドアハッチバックになったから魅力が分かりやすいが、改良する時期が遅きに失した。
ジェイドが発売された時のコンセプトは「見て走って(エモーショナル)、乗って使って(ファンクショナル)、さまざまな側面で驚きをもたらすマルチ・サプライジング」だ。コンセプトを欲張りすぎて失敗した。
ジェイドが発売された時、個人的には「トヨタマークXジオの販売不振を知らないのかな?」と思った。マークXジオは2007年に発売されたLサイズモデルで、ジェイドと同じく天井を低く抑えた3列シート車だ。
「3列目を使うとミニバン、格納するとワゴン、2列目の後部を間仕切りで隔離すればセダン」という、これも機能を欲張っていた。魅力が分かりにくく、価格は割高で販売が低迷した。
ジェイドの発売は2015年だから、2007年に登場したマークXジオを研究する時間は十分にあったと思うが、同じ失敗を繰り返してしまった。
■なぜこのクルマにハイブリッドを!? スズキスイフト フルハイブリッド
スイフトが搭載するエンジンは、1.2Lのノーマルタイプ/マイルドハイブリッド/フルハイブリッド。1Lターボ、1.4Lターボ(スイフトスポーツ)と幅広い。
この内、分かりにくいのがマイルドハイブリッドとフルハイブリッドだ。
マイルドハイブリッドは、ISG(モーター機能付発電機/最高出力は3.1馬力)が減速時を中心とした発電、アイドリングストップ後の再始動、モーター駆動の支援(連続駆動時間は最長30秒)を行う。
トランスミッションはCVT(無段変速AT)で、JC08モード燃費は27.4km/Lだ。
フルハイブリッドでは、ISGの役割がアイドリングストップ後の再始動に限られ、MGU(駆動用モーター/最高出力は13.6馬力)が減速時の発電と駆動を担当する。
トランスミッションは、シングルクラッチを使う5速AGS(オートギヤシフト)だ。MGUはAGSを介さずに、駆動力を直接ホイールに伝える方式を採用した。JC08モード燃費は32km/Lになる。
5速AGSはツインクラッチ式と違って変速に要する時間が長く、加速が途切れやすい。そこで変速するタイミングを見計らって、MGUが駆動力を高め、加速が途切れないようにした。
フルハイブリッドは独自の工夫を施したが、車両価格はマイルドハイブリッドに比べて約23万円高い。
こだわったフルハイブリッドながらその価格差を考えるとコンパクトカーには不要か?
そしてマイルドハイブリッドも燃費が優れているから、フルハイブリッドとの価格差を燃料代の差額で取り戻すには、20万km以上を走らねばならない。そうなるとフルハイブリッドの存在価値が薄れてしまう。
コンパクトな車種はボディが軽く、ノーマルエンジンも全般的に燃費が良い。そうなるとフルハイブリッドの燃費優位性が薄れるが、価格差は縮められない。
フルハイブリッドには相応にパワフルな駆動用モーター、容量が大きな専用電池、制御機能などを備えるから、少なくとも20万円前後の差が付いてしまう。
その結果、コンパクトなフルハイブリッド車は、マイルドハイブリッドやノーマルエンジン車との価格差を取り戻すのに20~30万kmの走行を要する。
ノーマルエンジン、あるいは低コストで高い効率の得られるマイルドハイブリッドが有利になる。
逆にLサイズのセダンやミニバンは、燃費数値に約2倍の差が付くこともある。さらにノーマルエンジン車はエコカー減税の対象外になりやすく、価格も高いから、多額の自動車取得税を徴収される。
その結果、大きなクルマでは、全般的にフルハイブリッドが有利だ。燃費と税額の違いが大きく、10万km以下で、ノーマルエンジン車との価格差を取り戻せる場合がある。
■3つのバリエーションがわからない!! ダイハツキャスト
バリエーションを欲張って失敗したのがキャストだ。SUV風のキャストアクティバ、メッキパーツを多用する都会的なキャストスタイル、ターボエンジンのみを搭載したキャストスポーツを設けた。
1車種を開発するだけで、3車種に相当するユーザーをカバーできるハズだったが、共倒れになってしまった。2015年9月の発売時点では、キャストを1か月に5000台売る目標を立てたが、2017年の実績は平均3795台だ。
ライバル車となるスズキハスラーの6050台に比べると、63%にとどまる。キャストは3つの個性を設けたことで、車種のイメージが分散された。
キャストのイメージが3つに分散されたことは悪影響もあるという
運転感覚にも疑問がある。キャストスタイルは都会的で上質な車種なのに、操舵に対する反応が妙に過敏で、乗り心地は硬い。足まわりと15インチタイヤ(165/55R15)をムーヴカスタムRSから流用したためだ。
このようにキャストの機能は中途半端で、失敗を恐れて中庸に仕上げたい開発意図も透けて見えてしまう。軽自動車は日本のユーザーに向けて開発されるカテゴリーだから、本気度が乏しい車種は、簡単にバレてしまうのだ。
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