欧州の二酸化炭素排出量規制の強化でディーゼルは減少すると予測
乗用車のディーゼルといえば、ヨーロッパが本場。そうした常識が崩れ始めている。欧州の一般家庭では、夏季休暇などで国境をまたいで長距離ドライブすることが多い。また、スイスとフランス、オランダとベルギーなど、税金や物価の差が大きい国境近くに住んでいる人は、長距離の通勤をする場合もある。
【意外と知らない】燃費良好のディーゼル車がもつ5つのデメリット
そして、なによりヨーロッパではクルマにかかる経費についてシビアな感覚を持っている人が多く、少しでも燃料費を安くあげたいとの意識が強い。こうしたさまざまなニーズに対して、ジャーマン3(ダイムラー、BMW、VWグループ)は1980年代以降、乗用車のディーゼルエンジン開発を強化。そのため、欧州主要国では乗用車市場でのディーゼル車のシェアが40~60%にまでに達した。しかし、2010年代になって自動車メーカーにとって大きな壁が欧州で立ちはだかった。
それが、欧州委員会(EC)が施行しているCO2(二酸化炭素)規制の強化だ。具体的には、2021年にCO2排出量95g/kmという規制のインパクトが大きい。
日系自動車メーカーのエンジン開発総括役員は「ガソリン車やディーゼル車をマイルドハイブリッド化するだけでは、95g/kmを達成することは難しい」と厳しい表情を見せる。もし、欧州のCO2規制をクリアできない場合「ものすごく高額のペナルティを支払わなければならない」(同役員)という。
では、欧州CO2規制をクリアするための最善策は何か? それが、EVとプラグインハイブリッド車だ。EVは充電インフラを含めて、自動車メーカーが単独で普及を促進することが難しい。一方、プラグインハイブリッド車は既存の内燃機関との組み合わせが可能で、EVと比べて投資コストを低く抑えることができる。こうしたCO2規制を考慮したエンジン開発戦略のなかで、ディーゼルエンジンに対する投資コストメリットが低くなり、最終的には欧州市場からの撤退を余儀なくされた。
欧州市場でディーゼル撤退が進む、もうひとつの理由がフォルクスワーゲングループが中期事業計画で提唱するEVシフトだ。同社は2015年に北米や欧州で、ディーゼルエンジンの排気ガス測定に関する大規模な不正が発覚。現在も各国の当局による捜査が進んでいる状況だ。こうしたスキャンダルによってフォルクスワーゲンのブランドイメージを失墜した。そこからのV時回復を狙って、EVシフトを打ち出したのだ。
この流れに、ダイムラー、BMW、さらには自動車部品大手のボッシュとコンチネンタルが相乗りする形で、昨今のEVブームが生まれた。
また、VWとしては世界最大市場の中国で、2019年から新エネルギー車(NEV)に関する販売数の義務化が始まることを重視している。中国では乗用ディーゼル車の需要が少なく、欧州CO2規制を中国NEV法の双方を満たすために、ディーゼル車への投資を今後減らしていく可能性が高い。日系メーカーとしては、こうしたドイツ大手の動きを睨みながら、欧州市場で今後、ディーゼル車需要は一気に減ると見ている。
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