米のJDM人気は本物 追い風に乗る国内パーツメーカー
自由の国アメリカには、ブランドやイメージにとらわれず、本当に「良いモノは良い」と評価され、シェアを拡大していける土壌があると言われています。クルマの世界も同様で、アメリカにおける乗用車の販売ランキングには十数年に渡ってトヨタ「カムリ」や同「カローラ」、ホンダ「シビック」、同「CR-V」などの日本車が上位を独占しており、近年はクルマと同様に自動車部品の分野でも日本ブランドが高い支持を獲得しつつあります。
80 90年代日本車が北米で大人気のワケ 日本の実情にハマる「15/25年ルール」とは?
背景としては1990年代後半から徐々に盛り上がってきた「JDM(編集部注:Japanese domestic marketの略で、ここでは日本国内向けに設計、製造され日本国内で流通している自動車関連製品のこと)」人気が映画ワイルド・スピード(THE FAST AND THE FURIOUS)シリーズで決定的となり、さらに「15/25年ルール」といわれる中古車の輸入に関する規制を緩和するルールによって、北米における1980年代から1990年代の日本製中古車を輸入する障壁が低くなるなど様々な追い風もあるようです。北米で人気の自動車部品ブランドを紹介し、人気の理由を探ってみました。
日本製タイヤの雄、TOYO TIRES
まずは2019年1月1日よりブランド名である「トーヨータイヤ」に社名変更することが発表された東洋ゴム工業です。同社は世界最大の自動車アフターマーケットパーツの見本市、米国「SEMAショウ」に2000年代初頭から毎年ブースを出展しています。ブース面積は年々拡大し、近年ではどのタイヤメーカーより大きい、屋外、屋内に加えて建物と建物の間に「TOYO TIRES TREADPASS」という広大な展示エリアを確保。数十台のカスタム&チューンドカーを出展するのが恒例です。自社ブース以外にも、1000台を超える出展車に装着されているタイヤはほとんどがTOYO TIRESかハイパフォーマンスカー向けのNITTOタイヤです。
人気の背景に長い歴史あり
アメリカにおけるTOYO TIRESの人気にはどのような理由があるのでしょうか。東洋ゴム工業広報室に聞いてみました。
「弊社は1966(昭和41)年に日本国内業界のなかでいち早く米国に現地法人トーヨータイヤ・ノースアメリカを設立し、翌年には日本のタイヤメーカーとして最初に『米国自動車安全基準』の認定を取得しました。2005(平成17)年度末からは米国ジョージア州の単独生産拠点にてタイヤの現地生産を開始し、現在までにライトトラックやSUV、ハイパフォーマンス車向けタイヤを中心に約3500万本のタイヤを生産してきました。北米大手業界誌「TIRE REVIEW」の調査では総合評価、品質面でたびたびNo.1を獲得しています。アメリカの大型SUV用タイヤはガラパゴス化が進んでおり、当社のタイヤ製品『オープンカントリー』がマーケットに合っているのでしょうね。また近年はシェールオイルの台頭もあって原油価格が下がり、(燃費が悪くて敬遠されていた)SUVやライトトラックの販売台数が盛り返していることも影響していると思います」(東洋ゴム工業広報室)
アメリカでのトーヨータイヤ人気は実は長い歴史と実績に基づいていたのですね。米国で人気のマツダ「RX-7」やホンダ「シビック」、トヨタ「スープラ」、日産「スカイラインGT-R」をベースとしたJDMなチューニングカーにはやはり、TOYO TIRESのロゴが似合っていますね。
TEINの「車高調」とは?
日本では「車高調(車高調整式サスペンション)」という言葉はあまり一般的ではなく、マニアックなサスペンションチューニングという認識かもしれませんが、アメリカではサスペンションの改造が非常にポピュラーなので、「コイルオーバー(coilover、車高調の意)」の認知度は日本とは比較できないほどです。コイルオーバーで米国のユーザーに圧倒的支持を得ているTEIN(テイン) USAのジェネラルマネージャーである中井克真さんに話を聞きました。
「TEINは2002年から米国に拠点を持ってビジネスを開始しました。それまでTEIN製品の並行輸入が大変多く行われており、市場調査からマーケットがあると判断しました。1990年代から2000年前後の好景気・日本車人気から、リーマンショックまでは爆発的にマーケットが拡大しました。弊社が米国でお客様に選んでいただける一番の理由は、JDMブランドという安心感、信頼感がベースになっていると思います。加えて、『現地にて、常時製品開発を行うことができること』『TEIN USAにエンジニアを常駐させ、製品開発・モータースポーツサポート・苦情/クレームの現地対応ができるほか、お客様の製品のオーバーホールサービスを現地で行うことが可能なこと』『USA専用製品の開発を行っていること(US専用品番と言われるもの)』『完全自社生産を行えるので価格面でもさらに低価格化が可能』といったことが理由として挙げられると思います」(TEIN USA 中井克真さん)
筆者(加藤久美子:自動車ライター)も今回の取材で初めて知ったのですが、TEINでは日本と同じ車両向けの製品であっても、日本とアメリカで同じ製品というわけではないのです。日米では道路状況、仕上げたい車高などが根本的に違うため、日本仕様の製品をそのまま装着しても、パフォーマンスや乗り心地といった性能面では、本来の性能を発揮できません。そのため米国での使用に向け丁寧で繊細なセッティングを行い、さらにトラブルにも即対応という体制が敷かれているそうです。これらTEIN独自の対応がアメリカを初め、海外マーケットで絶大な支持を拡大しつつある理由なのでしょう。
「SEMAショウ」に50台、ボディキットのロケバニとPANDEM
ここ3年から4年のあいだに米国で人気急上昇なのが、リベット留めオーバーフェンダーで知られるボディキットブランド、ロケットバニー(通称:ロケバニ)と、その弟分のPANDEMです。「SEMAショウ」ではロケバニ・PANDEMのボディキットを装着した出展車が50台に達しました。人気の理由を製造元であるT.R.A京都に聞いてみました。
「米国での取り扱いは8年前からです。派手でインパクトがあるシルエットですから、アメリカで瞬くまに人気のアイテムとなりました。ド派手な外観ではありますが、計算し尽くされた繊細なラインを綺麗にだすために一流の樹脂素材を使って一流の職人が日本で作っています。米国での人気の理由はやはり、日本製パーツへの信頼がベースでしょうね。またワイドボディは日本では車検の関係でなかなかすんなり装着というわけにはいきませんが車検のないアメリカでは関係ありません(笑) お陰様で高い評価を頂いています。」(T.R.A京都)
TAKATAブランドは死なず
エアバッグの件でタカタは現在事業譲渡のさなかですが、同社のフルハーネス(競技用の5、6点式シートベルト)は米国で大変人気があります。タカタは1930年代に繊維織物会社として出発し、戦後間もない1950年代にシートベルト開発に着手。1964(昭和39)年に日本初の5点式フルハーネス(競技用シートベルト)を開発しています。シートベルトを搭載した一般車など、ほとんどなかったころの話です。タカタは2017年に米国でのフルハーネス事業を売却していますが、近年のJDM人気の影響を受けて、TAKATAブランドのフルハーネスの人気が再燃していることから、数年間はいまのブランド名のまま販売が続けられるようです。
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こちらに紹介した以外にも、Greddy(トラストの海外ブランド)、Defi(日本精機が展開する高級メーターブランド)、ファルケン(住友ゴム工業が展開するタイヤブランド。近年はエアレースのスポンサードでも知られる)などなど、海外で人気上昇中の自動車パーツブランドはまだまだあります。
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