安全装備の進化は確実に交通事故の死者数を減少させている
2017年の交通事故による死者数は3694人と、史上最少となった。24時間以内死者数、30日以内死者数とも着実に減少、安全な交通に向かっていることが実感できる。とくに近年の交通事故による死者減少にはハードウェアの進化が大きく貢献しているといえる。
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衝突安全ボディに乗員の安全性を高めるSRSエアバッグ、そもそも事故の発生を抑えるABSやESCといった電子制御技術、そして衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術……これらの進化や普及が交通事故を減らしているのは間違いない。また、この10年で飲酒運転のよる交通死亡事故が半減していることが象徴するように、ユーザーの安全意識が高まっていることも自動車というモビリティの安全性向上につながっている。
さて、交通事故による状態別死者数のデータ(2017年上半期)を見てみると、もっとも多いのは乗車中(約36%)、次いで歩行中(約34%)となっている。この関係は年によっては入れ替わるほどで、まさに「生身」の歩行者を守ることは交通事故による死者数を減らすためには重要なテーマだ。それは、現代の先進安全技術におけるメインテーマでもある。
前方の状態によって自動で減速・停止を行う衝突被害軽減ブレーキは、今や歩行者検知タイプであることがスタンダードといえる状態。低速域で、対車両だけに対応する赤外線センサーだけのタイプは軽自動車でも少数派で、カメラなどを用いたタイプを搭載することは当たり前といった状況だ。
軽自動車ナンバーワンといえるホンダN-BOXでは、前走車・対向車だけでなく歩行者も検知してブレーキを作動させる。このN-BOXをはじめ最新のホンダ車が採用する「ホンダセンシング」には「歩行者事故低減ステアリング」といって、歩道がない道において歩行者側にクルマが向かっていると検知すると、歩行者を避けるように操舵アシストする機能も搭載されている。
さらに進化しているのがレクサスLSの「アクティブ操舵回避支援」だ。これは車線内にいる歩行者に対して機能するもので、衝突被害軽減ブレーキを作動させながら、同時に歩行者を避けるようなステアリング操作を自動的に行うというもの。
歩行中死者の多くが横断中で、半数以上に法令違反(信号無視、横断歩道以外での横断など)が見られたという統計からすると、「アクティブ操舵回避支援」のような技術が、プレステージモデルだけでなく大衆車にまで拡大することで交通事故死者数を減らすことが期待できる。
そして、実際に事故になったときの対策として死亡事故につながりやすい頭部への攻撃性を抑えることも重要だ。歩行者保護を設計に入れ込んだフロントフード(ボンネット)を採用することは法規で定められている。フロントフードとエンジンまでの物理的な距離を確保するといった手法、フードの衝撃吸収性などが主な技術要素だ。
そのほか、フードをポップアップさせることで衝撃をやわらげるといった手法も取られている。現時点で、究極といえるのが歩行者用エアバッグだ。国産車ではSUBARUだけが採用している、このシステムは歩行者との事故を検知してエアバッグを展開させることで頭部を保護しようというもの。とくに衝突安全性から硬くなりがちなAピラー部分をカバーすることいより歩行者への攻撃性を大幅に抑えることができているというのが注目点だ。
モビリティの普及によって交通事故が生まれてしまったが、それを必要悪として是認するわけにはいかない。技術の進化とドライバーのモラルによって交通事故と事故による死者をゼロにすることを目指して、今日も各社は研究を進めている。
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