ボディラインをはっきりと見せられるという現実的な側面も
第45回東京モーターショー2017が終了し、多くの人で賑わった。さまざまな出展車両が注目を集めるなか、もっともスポットを浴びたのは、各メーカーがこの時のために仕上げてきたコンセプトカーに違いないだろう。
将来的に商品化を目指すものから、夢を見させてくれるものまで多種多様だが、大半のコンセプトカーのボディカラーは、シルバーやグレーが多いということにもお気づきだろうか。
今回、モーターショー初体験の筆者が、いくつかのブースにてデザインや開発関係者にインタビューし、ボディカラーに込められた意味を探ってきた。
まずは、レクサスの「LS +Concept」から紹介していこう。レクサスのフラッグシップセダンLSの将来像として、実用化を見据えた最先端の自動運転技術を搭載している。
レクサスのデザインフィロソフィー「L-finesse(エル・フィネス)」に基づいてデザインされたダイナミックなフロントのスピンドリルグリルが印象的なこのモデル。ボディカラー名はとくにないとのことだが、独自の何層にも重ねた塗装技術により、光の当たる角度によって色味が変わるシルバーを採用している。
コンセプトカラーとは別色ではあるが、市販車にもこの塗装技術は使用されており、自然光の下では青みがかったものへと表情を変えるそう。今回なぜこの色を採用したのかについては、お話を伺ったスタッフからは聞くことができなかったが、“先進的で威厳のあるデザイン”と謳っていることから、次世代を意識させたかったのではないだろうか。
次に紹介するのは、人工知能的機能などを持つ「AI」を搭載したアウディのAudi Elaine concept(アウディ エレーヌ コンセプト)。ボディの前後に設置されたマトリクスLEDユニットによる多彩な光の演出が特徴的であり、またレベル4の自動運転技術を搭載した生産型電気自動車の先駆けとなるモデルだ。
アウディのエンブレムデザインの“フォーリングス”は、「アルミニウムシルバー」という色が使用されており、この色がシンボルカラーだそう。今回のコンセプトモデルにも同色が採用されており、アウディの持つイメージと先進的・未来的なビジュアルを表現しているそうだ。
次に紹介するクルマも、シルバーをイメージカラーに持つメルセデス・ベンツのコンセプトモデル、コンセプトEQAだ。同社のEVに特化した新ブランド「EQ」の第2弾となるモデルで、3ドアハッチバックのEVコンパクトカーである。
メルセデス・ベンツと言えば、伝説となっている「シルバー・アロー」をご存じだろうか。グランプリカーの車両規定が最大重量750Kgと定められた1934年、デビューマシンがたった1Kg重量オーバーとなってしまい、純白のボディ塗装を徹夜で剥がし、軽量化したマシンでレースに臨み、そして見事完全勝利したという実話だ。
そのアルミの地肌そのままのシルバーで走り抜ける姿から、“銀の矢”を意味する「シルバー・アロー」と呼ばれるようになったのである。また、情熱的な部分とクールな部分を併せ持つ色として、シルバーが使用されているそうだ。
続いて紹介するのはマツダ。日本の美意識を追求した「エレガントで上質なスタイル」をつくり上げることを目指す魂動デザインの、次世代デザインビジョンモデル「マツダVISION COUPE(ビジョン・クーペ)」。
コンセプトカーに使用されている色は市販車に使用されている「マシングレー」とは別物であるが、金属感や硬質感を表現した深みがありながら、それでいて重みのないグレーに身を包んでいる。また、工場にて機械塗装される量産車と違い、職人による手塗りで仕上げられているそうだ。
濡れるように滑らかなボディの上を、光の雫が垂れるように流れていく様子は、最も光を味方につけられるグレーのボディカラーによって表現されているのである。
最後は、ワールドプレミアとなるSUBARU。「VIZIV PERFORMANCE CONCEPT(ヴィジヴ・パフォーマンス・コンセプト)」の色の秘密を見ていこう。
現行WRXのフロントデザインのイメージを受け継ぎながら、よりエッジを効かせた力強いエクステリアとなっており、ボディ全体はマットシルバーで包まれている。他メーカーと比べて青みが強いのは、SUBARUのイメージカラーである青を少し混ぜているからなんだそう。
このシルバーは、刀鍛冶が熱い鉄を叩いて鍛え上げて作る日本刀を連想させるとともに、刀の力強さや日本らしさ、切れ味の良いスタイリッシュさを表現しているそうだ。
また、今回のコンセプトモデルは、ルーフやホイールアーチ、トランクリップに艶ありカーボンを装着し、マットなボディの質感とのコントラストが美しい仕上がりとなっている。
さらに、角ばったデザインを効果的に見せるために、陰影がはっきりとわかるシルバーを選んでいるのも理由にひとつだと教えていただいた。
思いや歴史などさまざまな背景を持って塗られたボディカラー。つい造形のほうに目が行きがちだが、色味の違いなども意識したり感じたりすることも、コンセプトモデルを見る楽しみ方のひとつとして提案したい。
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