自衛隊といえば自然災害などで国民の目に多く触れる組織。しかし、彼らの本業は「国防」であって、一度有事があれば我々国民を守ってくれる組織である。そんな自衛隊には多くの専用車両がある。もちろん非常にタフで、実用性にも長けた車両が特別に製作される。そんな自衛隊用車両は役割を終えるとスクラップになるか、アジア圏に輸出されるのが通常。しかし埼玉県のとあるサバイバルゲームフィールドに"ホンモノ"の自衛隊の高機動車があるという。取材班は現地に急行した!!
文:ベストカーWeb編集部/写真:池之平昌信
■レプリカではないホンモノに昂ぶる!!
10月のとある平日。埼玉県の採石場の奥に高機動車がある、というウワサを聞きつけ取材班は埼玉県の寄居町へ。重機やダンプカーが往来するかなりの悪路を抜けると、古びたプラントのような建物が表れた。するとそこに突如として現れたのは紛れもなく自衛隊の高機動車!!
この形をみてきっと多くの人が想像するのは、米軍のハンヴィーという多目的軍用車だろう。しかーし!! この高機動車、ベースはトヨタのメガクルーザーである。れっきとした国産車なのだ。でも腑に落ちない。なんせ自衛隊の車両は一般には払い下げがされない。例外なくである。
だが目の前にはたしかに高機動車。車内には最後に所蔵した陸上自衛隊の部隊名まで書いてある。このクルマがあるのが埼玉県寄居町にあるサバイバルゲームフィールド「Rock254」。なんとオーナーはスーパーGTやスーパー耐久での活躍も記憶に残る、レーシングドライバーの青木孝行選手だ。さっそく核心にせまってみよう、なぜ高機動車がサバイバルゲームフィールドにあるのか?
「元々、サバイバルゲームフィールドの看板になるようなクルマがほしかったのもあって探していました。そうしたらある方から自衛隊の高機動車があるよ、と連絡をいただいて」と青木選手。しかし、である。前述したように自衛隊は払い下げ車両を民間に販売することはなく、基本的にはスクラップにされてしまうのが普通。このクルマも例に漏れずその運命にあったという。
「元々はスクラップになったバラバラになったクルマだったようです。それをパーツごとに復元していった形になるんでしょうね。なので書類もなく、公道で走るためのナンバー取得もできません」とのこと。いやはや、この個体をパーツから復元した業者さんもスゴイな……。
編集部の軍用車担当に聞くとアジア圏から自衛隊車両の"逆輸入"もあるそうだが、今回の個体に関しては入手先や価格については一切公開していないとのこと。
■試乗インプレッションで思わぬ快適性に気付く
出自についてはおいといて、高機動車の試乗インプレをしていこう。ドライバーは青木選手。ダイシンシルビアが大好きだった担当には夢のような時間。まずはインプレッションは後席から。4人が向かい合うリアベンチシートに腰をかけ、4.1Lの直4ディーゼルエンジンが唸りをあげる。
試乗会場はご覧のとおりのラフロードだが、乗り心地は至極快適だ。70ランクルのほうが固い乗りアジに感じ。とんでもない急坂をDレンジでスイスイ登っていく。4ATのみの高機動車はアクセルを踏めばグイグイ進む。デフロックも装備するが泥濘地でもない限りそうそう使うシーンはないのだろう。
また特筆すべきは4輪操舵の4WS。逆位相に後輪が切れるため、とっても小回りが効くのである。狭い国土の日本ではこの装備はありがたい!! ちなみにPレンジやサイドブレーキをかけていると4WSはキャンセルされる。青木選手は「ここの坂道なんかこのクルマでは朝飯前です。よほどの悪路でも大丈夫ですよ!!」という。クルマの性能が高いのもあって恐怖感はない。そして当然だが運転がうまい……。
次は担当が運転をさせていただくことに。運転したフィーリングは力強いトルクと、感動するほどの小回り性能。なんせ回転半径5.6mとレクサスLSよりも小さい。あとはそのイージードライブぶりには驚かせられる。自衛隊車両だからなにか"儀式"めいたものがあるのかと思ったがそんなものはなく、教習車並みに簡単に乗ることができる。たとえ負傷していても運転できる必要性もある自衛隊車両ならではの配慮なのかもしれない。
またエンジンのクランキング時間が短いことも驚いた。1.5秒くらいでエンジンが始動する。市販エンジンだから信頼性も高く、部品調達もスムーズにおこなうことができる。これこそが当時の防衛庁が国内生産を求めた理由であろう。余談だがほとんどの自衛隊車両は三菱やコマツなど国産メーカーで生産されいている。
足回りは最低地上高を確保するためありとあらゆるものがシャシー側に寄せられている。ディスクブレーキはインボードディスクでシャシー側に格納され、ドライブシャフトもオフセットされており、走破性能の追求の姿勢が見られる。
ただ軍用車なので仕方のないことだが後方の視界は極めて悪い。サービスエリアなどでわざわざ助手席の担任が誘導している理由がわかった。この個体は幌付きだったが、幌を取り外してピックアップ形状にもできるなど拡張性も大きい。ホンモノしか持っていない"凄み"を感じるこの高機動車、ぜひ自分の目で見てほしい。
この高機動車はサバイバルゲームフィールド「Rock254」で見ることができる。青木選手はトレーニングのために始めたサバイバルゲームにすっかり魅了されてしまったとのこと。エアーガンを持って野山を走り回るとかなりの運動量になるから、運動不足の解消にももってこいなのだ。
「Rock254」はレンタル装備も揃っている安全第一のサバイバルゲームフィールドだから、手ぶらの初心者の参加も大歓迎!! フィールド利用者は高機動車との写真撮影なども可能なので、もし気になる方は連絡してみてはいかがだろうか。「Rock254」のサバイバルゲーム定例会は男性3000円からとお安く楽しめるので、高機動車との記念撮影も兼ねていかがだろうか?
【取材協力】
Rock254 / ロック254
〒369-1225 埼玉県大里郡寄居町西ノ入1183
TEL:080-1985-0254
http://rock254.com/archives/30592
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