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【試乗】スズキ新型「スイフトスポーツ」は現代のハチロク! その軽さの恩恵とは?

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【試乗】スズキ新型「スイフトスポーツ」は現代のハチロク! その軽さの恩恵とは?

「軽さ」こそがアイデンティティ!

「これは現代のAE86だ!」

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 スズキ 新型「スイフトスポーツ」のステアリングを握り、その俊敏な身のこなしと力強いエンジンパワーを味わって、私(山田弘樹:モータージャーナリスト)は素直にそう感じました。

 今でも86年式のトヨタ「スプリンター・トレノ」(通称ハチロク)に乗り続けている私がいうのだから、間違いありません!(笑)。新型「スイフトスポーツ」はそれくらい、痛快なコンパクトスポーツに仕上がっていたのです。

 その名のとおり「スイフトスポーツ」は、スズキのコンパクトカーである「スイフト」の、最もスポーティなモデルです。軽自動車を主体にするスズキにとっては大柄な部類に入る「スイフト」ですが、世界的な基準で見れば2番目に小さな「Bセグメント」に属するクルマ。日本だとトヨタ「ヴィッツ」やホンダ「フィット」、マツダ「デミオ」がそのライバルです。

 こうしたなかにあって現行「スイフト」のキャラクターを決定づけたのは、なんといってもその「軽さ」でした。スズキは2014年に「アルト」を発売したあたりからこの車体軽量化に大きく力を注ぐようになり、その勢いは群を抜いていました。ちなみに現行「スイフト」では先代モデル比で、なんと120kgの軽量化を実現。一番軽いモデル「XG」(5MT)では、実に840kgという車両重量を達成しているのです。

 ですからこれをベースに作られる「スポーツ」が優れた運動性能を持つことは、試乗前から容易に想像できていたのですが……。これがその予想を超えるほどのでき映えとなっていたのです。

軽量化+ターボによるトルクアップの恩恵で…!

「スイフトスポーツ」に搭載されるエンジンは、直列4気筒の1.4リッター直噴ターボ「K14C型」。これは先代「スイフトスポーツ」が搭載していた自然吸気1.6リッター直列4気筒「M16A型」から、排気量をダウンサイジングしたエンジンです。トランスミッションは6速MTと6速ATのふたつがあり、これを介し前輪を駆動して走ります。

 ちなみに新型「スイフトスポーツ」のパワーは140ps/5500rpmとなっており、排気量を縮小しながらも先代「スイフトスポーツ」より4psのパワーアップを達成しました。しかしその走りがより一層の鋭さを増しているのは、最大トルクが230Nm2500-3500rpmと、実に70Nmも増やされていることでしょう。これはなんと、マツダ「デミオ」の1.5Lディーゼルターボ(6MT 220Nm)を上回るトルクなのです(6ATは250Nm)。

 さらに「スイフトスポーツ」は、その軽量ボディを「スイフトスポーツ」用に鍛え上げながらも、6MTモデルで車重を970kgに抑えました(6ATモデルは960kg)。

 今回の試乗はクローズドコースではなく、千葉県・木更津市の一般道を使って行われました。いわゆる普通の道を快適に走らせただけなのですが、本当にそれだけでも、新型「スイフトスポーツ」の魅力をビシビシと感じ取ることができました。

 感激したのはその速さでした。いやもっと正確に言えば、小股の切れ上がったターボエンジンがもたらす「ピックアップ性能」が、非常に優れていると感じました。

 これにはエンジン単体の性能はもちろんですが、低回転から素早くブーストを立ち上げる「ノーマルクローズ式ウェストゲート」の効果も高いようです。タービンを回す排気圧力をコントロールするのがウェストゲート。このバルブを通常は閉じておくことで、アクセルの踏み始めから素早く過給圧を立ち上げます。そして高負荷領域ではバルブを開いて、適正過給圧にコントロールします。

 実際、そのピックアップレスポンスは先代「スイフトスポーツ」のNAエンジン以上にリニアかつトルキーで、そのままアクセルを踏み込んで行っても、レッドゾーンの始まる6000rpm+αまできっちりと吹け上がってくれます。ターボエンジンですから絶対的な回転数は低いものの、小排気量エンジンを無理矢理回している感じやトップエンドでの根詰まり感がないのも素晴らしい部分。またこうしたターボの特性を長く安定させるために空冷式のインタークーラーが備え付けられ、ラジエターは大容量化と共に二連電動ファンが新設されました。

「軽さ+ボディ剛性の高さ」が生み出す乗り味とは?

 しかし軽量なボディに力強いエンジンを搭載しただけでは、このどっしりとした走りは実現できません。ここで私が素晴らしいと感じたのは、駆動系とシャシーの見事なバックアップでした。

 そのカギを握るのは、ボディ剛性の高さです。前述の通り「スイフトスポーツ」の車体は、エンジンやタイヤ、空力パーツといった専用装備を備えながらも970kgという軽さを誇ります。これは先代モデルに比べて、実に70kgも軽い数値です。

 そしてスズキはこの軽量ボディに、高い剛性を与えています。

 新型プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を土台として、その上屋には軽さと強度に優れる超高張力鋼板を使いながら、先代比で17%も剛性を増やしたボディが載せられました。このボディは、現行「スイフト」に初めから「スイフトスポーツ」の登場を予定して開発しており、軽さと同時に高い剛性が発揮できるように設計されています。なおかつ「スイフトスポーツ」専用の補強として、ハッチバックの弱点となるリアドア開口部上部やテールゲート開口部下側に、合計12点のスポット溶接を追加しているのです。いわばこれは、ホンダが新型「シビック」を開発するときに、「タイプR」の追加を織り込み済みとしてその車体を開発した手法と同じです。

 こうした緻密な計算と努力によって新型「スイフトスポーツ」は、軽さのなかにどっしりとした乗り味を実現しました。さらにこのボディ剛性によって新型「スイフトスポーツ」はトレッドを前後で+40mm/+30mmも拡大することが可能となり、コーナリングパフォーマンスを向上。また全高をフロントで10mm低めることなどの相乗効果で、その重心高を下げることができました。

 私は歴代の「スイフトスポーツ」を高く評価していますが、その重心の高さにだけは違和感を覚えていました。そしてこれは、ベースとなる「スイフト」の性格(広くて快適な車内空間の確保)を考えれば仕方のないことだと諦めていたのですが、今回はこれが見事に払拭されていたのです。

 トレッドの拡大によって3ナンバーとなってしまったことは事実ですが、その取り回しに不便さは感じられず(最小回転半径は5.1mと先代より0.1mも小さいのです)、税制面でも問題はありません。むしろ排気量が下がったことで、若干安くなります。

改めて、なぜハチロクにたとえられるのか?

 さらに素晴らしいと感じたのは、装着タイヤにコンチネンタルの「スポーツコンタクト5」を採用していたことです。このタイヤは高いグリップ性能を誇りながらも路面をしなやかに捕らえてくれる懐の深いタイヤです。折しも当日は小雨が降る状況となりましたが、低い気温でもタイヤの接地感は失われず、極めて高い安心感をもってこれを走らせることができました。

 唯一残念な部分があるとすれば、このタイヤの剛性や質量に対して、ショックアブソーバーの性能が若干追いつかないこと。高い荷重領域ではピタッとそのグリップを受け止めるのですが、低い荷重領域での荒れた路面ではバネ下の振動を抑えきれない部分が少し見受けられました。これはまさにスズキのボディが世界的に類を見ないほど軽いから起きる現象で、世界的にも特異な軽さに対してタイヤメーカーがもっと対応してくれるようになれば、もしくはダンパー性能が上がることで解決できるはずです。

 こうしてできあがったエンジンと車体を、絶妙にクロスした6速MTのギア比で操ると、理屈抜きに楽しい操作性がもたらされます。今回はクローズドコースでその性能を限界まで引き出したわけではないですが、そのリニアなハンドリングを味わうだけでも、新型「スイフトスポーツ」の潜在能力が推し量れます。そして何より理屈抜きで感じられるワクワク感は、日本のクルマたちのあいだでいつの間にかなくなってしまっていた性能だと感じました。

 そんな運動性能(楽しさ)を持つクルマが、183万6000円(6MT、税込)で手に入る。だから私はこの新型「スイフトスポーツ」を「現代のハチロク」と表現したのです。

 新型「スイフトスポーツ」は、私たち日本人がリアリティをもって買えるスポーツカーです。古くはトヨタが「86」を出し、最近ではホンダが「シビック タイプR」を登場させましたが、本当はこうした身の丈感のある車種で、スポーツカーを出して欲しいと私はずっと思っていました。

 それをスズキは、新型「スイフトスポーツ」で見事にやってくれたと思います。

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