2024年ウインターシーズンは暖冬だと言いながら、やっぱり局地的に大雪が降り、立往生が発生したりしている。冬のドライブならSUVが心強いのだが、さて、最新人気のSUV、雪道での性能はどんなものなのか?
※本稿は2024年2月のものです
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2024年3月10日号
ZR-Vが最も安定!? CX-60は雪上でドリフトできる!? 雪道で最も頼れる最新SUVはどれ?
■4WDシステムを雪上で比較
暖冬傾向の今シーズンは積雪状況が心配されたが、ちょうどシーズン最強クラスの寒波が襲来し、群馬サイクルスポーツセンターはたっぷりの雪!
今回はミドルサイズSUVを中心に、さまざまな4WDシステムのモデルを用意して、それぞれの4WD性能の違いを見極めようというのがテストの狙い。
エクストレイルは前後に2つのモーターを搭載する4WD。CX-60はFRベースのフルタイム4WD、そしてZR-VとクロストレックはFFベースの電子制御フルタイム4WDだ。さて、どんな結果となるのだろうか!?
■今回テストしたのはこの4台のSUVだ!!
公正を期すため、全車ドライビングを新井敏弘選手にお願いした。ありがとうございます!
今回は人気のミドルサイズSUVをテストした。各車4WD方式が異なり、それによる走りの違いを確認していくのが狙いだ。ドライバーはラリードライバーの新井敏弘選手だ。
テスト前日に今季最大級という寒波が襲来し、テストフィールドの群馬サイクススポーツセンターはたっぷりの圧雪状態。
エクストレイルに乗った新井選手は「そもそもクルマとしての基本性能が高く、操安性能に優れています。足がよく動いてタイヤの接地性がいいので、しっかりとタイヤのグリップ力を活かせています」と絶賛。外から走りを見ていも、自由自在に姿勢を操っていることがわかる。
「アクセル操作やハンドルの切り方などで、ドライバーがどう走らせたいのかをクルマ側がわかっていて、それを実現するように前後モーターのトルクを緻密に制御しています。
アクセルを踏んでリアの滑りで曲がり具合をコントロールしようとすれば、そのとおりに動いてくれるし、滑らせないように走ろうとすれば、前輪モーターが引っ張って安定して曲がってくれます。
スノーモードにすると、アクセル操作に対するトルクの出方がややマイルドになって、雪道ではより安定します」と高評価。
FRベースのCX-60は綺麗にテールを滑らせながらコースを走る。
「いかにもFRベースらしい動きですね。アクセルを踏み込んでいくとテールスライドしますが、前輪にも駆動力が入っているので引っ張ってくれる感覚もあります。テールスライドしても安定感があります。オフロードモードにすると前輪のトラクションが大きくなって、より引っ張る動きになりますね」との評価。
「ZR-VはFFベースらしい動きです。最も安定していて、一般的なドライバーには安心感が高いと思います。アクセルを踏み込んでもリアが出る前にフロントが滑り出すので大きく挙動を乱すことはありません」との評価。
「クロストレックは安定していて雪道でも安心感が高いです。スノーモードにすると、ターンインでセンターデフの締結力が弱まるのでしょう。ノーズがスッと入るので動かしやすくなります」と評価する。
●日産 エクストレイル(電動モーター式4WD)
日産 エクストレイル
e-POWERを採用するエクストレイルの4WDは、前後に搭載されたモーターがそれぞれ緻密に電子制御され駆動力を発揮することで、自由自在に前後の駆動力を配分できるというのが最大のポイント。
アクセル開度や舵角などの情報から、ドライバーがクルマをどのように動かしたいのかを推測し、前後モーターのトルク配分のみならず4輪ブレーキの独立制御と統合制御することで、ダイナミックな走りにも対応する。
●エクストレイルG e-4ORCE主要諸元
・価格:474万8700円
・WLTCモード燃費:18.4km/L
・全長×全幅×全高:4660×1840×1720mm
・ホイールベース:2705mm
・車両重量:1880kg
・エンジン:直列3気筒DOHCターボ、1497cc
・最高出力:144ps/4400-5000rpm
・最大トルク:25.5kgm/2400-4000rpm
・Fモータ出力/トルク:203.8ps/33.7kgm
・Rモータ出力/トルク:135.9ps/19.9kgm
・トランスミッション:―
・最低地上高:185mm
・最小回転半径:5.4m
・タイヤサイズ:235/55R19
●ホンダ ZR-V e:HEV(電制カップリング式4WD〈FFベース〉)
ホンダ ZR-V
ZR-Vのe:HEVは、高速道路などでの速度域でエンジンが駆動力に参加するものの、一般道の速度域ではほとんどがモーター動力で走るメカ。
となると4WDは後輪用eアクスルというのが最近の流れとなるのだが、敢えて電制多板クラッチによるメカニカルなトルク配分としたのがポイント。常時前後トルク配分50対50が基本で、路面状況や運転状況に応じてリアに最大70%までトルク配分するメカニズムとなっている。
●ZR-V e:HEV Z AWD主要諸元
・価格:411万9500円
・WLTCモード燃費:21.5km/L
・全長×全幅×全高:4570×1840×1620mm
・ホイールベース:2655mm
・車両重量:1630kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1993cc
・最高出力:141ps/6000rpm
・最大トルク:18.6kgm/4500rpm
・Fモータ出力/トルク:184ps/32.1kgm
・Rモータ出力/トルク:―
・トランスミッション:―
・最低地上高:190mm
・最小回転半径:5.5m
・タイヤサイズ:225/55R18
●マツダ CX-60 XD(電制トルクスプリット4WD〈FRベース〉)
マツダ CX-60
エンジン縦置きのFRをベースとした4WDというのがCX-60の特徴だ。常時前輪へのトルク配分はされており、通常は10~30%で、雪道などでの発進時にも「最初のひと転がり」から前輪でも駆動するため後輪のホイールスピンは抑えられ、低μ路面でも安定した発進加速を見せてくれる。
前後トルク配分は電子制御トルクスプリットで、最大50対50で、滑りやすい雪道のコーナー立ち上がりなどでは前輪がぐいぐい引っ張る。
●CX-60 XDハイブリッドプレミアムスポーツ AWD主要諸元
・価格:567万0500円
・WLTCモード燃費:21.0km/L
・全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm
・ホイールベース:2870mm
・車両重量:1940kg
・エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ、3283cc
・最高出力:254ps/3750rpm
・最大トルク:56.1kgm/1500-2400rpm
・Fモータ出力/トルク:16.3ps/15.6kgm
・Rモータ出力/トルク:―
・トランスミッション:8AT
・最低地上高:180mm
・最小回転半径:5.4m
・タイヤサイズ:235/55R19
●スバル クロストレック(電制トルクスプリット4WD〈FFベース〉)
スバル クロストレック
クロストレックの4WDはスバルお得意のアクティブトルクスプリットAWD。FFベースに多板クラッチ式カップリングを電子制御する4WDシステムだ。
前後トルク配分は常時60対40としながら、路面状況やドライビングによって100対0から50対50をリニアにコントロール。Xモードでは走行モードの切り替えもできる。スバルらしく弱アンダーステアをベースとした操縦性は滑りやすい雪道でも高いスタビリティを発揮。
●クロストレックLimited AWD主要諸元
・価格:328万9000円
・WLTCモード燃費:15.8km/L
・全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm
・ホイールベース:2670mm
・車両重量:1580kg
・エンジン:水平対向4気筒DOHC、1995cc
・最高出力:145ps/6000rpm
・最大トルク:19.2kgm/4000rpm
・Fモータ出力/トルク:13.6ps/6.6kgm
・Rモータ出力/トルク:―
・トランスミッション:CVT
・最低地上高:200mm
・最小回転半径:5.4m
・タイヤサイズ:235/55R19
■TEST1/雪上発進加速テスト
●しっかりトラクションして加速するのはどれだ?
雪上発進加速テスト(50m)
発進加速テストでは、発進時のトラクション性能、加速時の安定性などがはっきりと確認できる。パワーユニットの性能がよくても、トラクション性能が悪ければ安定した加速性能を発揮することはできない。
「エクストレイルのモーター制御は絶妙で、トラクションコントロールをOFFにした状態でアクセルをベタ踏み加速しても、適度なホイールスピンをしながら、しかし姿勢を乱すことなくグイグイ加速していきます。安心感があるし、体感的にも速いです」と新井選手は高く評価。
「CX-60は3.3Lディーゼルターボのトルクが大きく、エンジン回転を上げなくてもしっかり加速する。FRベースなので後輪が押し出す感覚で、滑りそうになると前輪が引っ張ってくれるのでテールが暴れるようなことはありません。
オフロードモードも試しましたが、もうちょっと前輪が引っ張る設定だと安定感が増します」という評価。
「ZR-VはFFベースの電制カップリング式。常時後輪にもトルク配分しているので、発進時からしっかりと後輪が押し出すので安定感があります。
クロストレックはエンジンパワーが比較的おとなしいこともあって、発進加速で大きくホイールスピンすることもなく、安心してアクセルを踏んでいけます」という評価だった。
■TEST2/雪上ブレーキングテスト
●安心して止まれるクルマは余裕のドライブに繋がる
雪上ブレーキングテスト(初速50km/h)
雪道を走る際、最も重視すべきは制動性能だ。雪道はちょっとした路面コンディションでグリップに大きな差が生じるので、毎回走行レーンを変えて、なるべく新たな雪面でテストをした。
「特に安心感が高いのはエクストレイル。ABSの制御が緻密で、空走感がほぼなく、しっかりと減速します。対してCX-60はABSが作動すると減速感がやや抜ける場面があります。車重の重さも影響していると思いますが、タイヤの接地面が活かし切れていないようにも感じます」という評価。
「ZR-Vは制動時に前輪に荷重が乗らない感覚で、空走してしまう。サスジオメトリーの問題かもしれません。グッとノーズダイブするくらいフロントに荷重をかけたいです。クロストレックも同様で、ちょっと前輪の接地面積を活かし切れていない印象です」
■ TEST3/雪上燃費テスト
●抵抗が大きくアクセルコントロールが複雑になる雪上は燃費には不利
雪上燃費テスト
走行抵抗が大きくなる雪道。それだけではなく、アクセルを踏みすぎればホイールスピンを発生し、緻密なアクセルコントロールも求められる。
1周6kmの群サイのコースを3周、18km走行して各車の実燃費を計測した。コースはアップダウンが大きく、深く雪が積もった場所がほとんどだ。
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