スピードトリプル1200RRはレトロ志向ではなく、本気のスポーツバイクだ
2021年モデルとして登場したトライアンフのスピードトリプル1200RS。ネイキッドモデルでありながら、1160ccの3気筒エンジンは180馬力を発揮する驚異的なバイクである。
同車をベースにカフェレーサースタイルとしたのが、新型として登場するスピードトリプル1200RRだが、その実「外装違いのバリエーションモデル」ではない。
【画像14点】スーパースポーツと戦えるカフェレーサー!? スピードトリプル1200RRを写真で解説
そんなスピードトリプル1200RRにイギリス人ジャーナリストでマン島TT参戦レーサーでもあるアダム・チャイルド氏が、スペインの公道とサーキットで早速テスト。
「ライディングポジションの変化や電子制御サスペンションの搭載で、トライアンフが『スピードトリプル史上もっとも爽快なマシン』と言うのには頷ける」とのこと。以下、その試乗レポートをお伝えする。
スピードトリプル1200RRは、2021年初頭にトライアンフが発売したスピードトリプル1200RSをベースに、「公道を走れる究極のスポーツバイク」を目指し、トライアンフがカスタムとチューニングを施したマシンだ。トライアンフはこれを「スピードトリプル史上、もっとも爽快なマシン」と宣言しているが、スピードトリプル1200RRのスタイリングを見ていると、それはあながち間違いではないように思える。
ゴージャスさを感じさせるフェアリングとコックピット、カーボン製パーツ、オーリンズ製セミアクティブ式サスペンション・スマートEC2.0(電子制御式サスペンション)、前後タイヤはピレリのディアブロスーパーコルサSP V3。不思議な印象を感じさせる造形の丸型ヘッドライトの後方にまたがると、着座位置はそれなりに前方だが、ハンドルバーはわずかに遠い。
搭載されるエンジンはスピードトリプル1200RS/RRともに共通で、180馬力を発生する1160cc3気筒エンジンだ。また、ブレンボ製MCSマスターシリンダー、5インチTFTフルカラー液晶メーター、キーレスシステム、6軸IMU制御によるコーナリングABSなどの電子制御デバイスといった装備もスピードトリプル1200RSからそのまま引き継いでいる。
トライアンフが言う「クリップオンバーを備えた単なるスピードトリプルではなく、最新のカフェレーサー」であることを実証するため、私は南スペインのロンダ周辺にある息を呑むような道(そこはとても寒い!)を走り、午後からは1周5.5kmあるアスカリサーキットを走った。
スピードトリプル1200RRの外観はとても個性的で、SNSではその意見が二分している。しかし多くの人々はそのデザインを好意的に受け止めているようだ。スペインの早朝の太陽に照らされたスピードトリプル1200RRは、先だって公開された写真で見た印象と変わらず魅力的だった。
もしカフェレーサー系モデルに接するのが初めてだったとしても、違和感なく受け入れられるはずだ。
一眼ヘッドライトはちょうどいいアクセントになっているし、フェアリングはネイキッドバイクに取って付けたようなものではなく、カフェレーサーとして設計されただけのことはある。美麗なラインを描いて車両後方へと流れていくのだ。
サイドパネル、コックピット、ラジエターシュラウドなどに使われているカーボンはディテールの印象を深めつつ、軽量化にも貢献している。トライアンフによれば、スピードトリプル1200RSをベースにこれだけの装備を追加したにもかかわらず、RSとRRはほぼ同じ重量だという。
ただし、ディープレッドの塗装の仕上げは美しいものの、車両価格に250ポンドが追加されるが(訳者註:日本仕様では3万2500円高)。
カリスマ的な3気筒エンジンのほか、吸気系から排気系もスピードトリプル1200RSから変更はなく、RSと同じサウンドを吐き出している。ライド・バイ・ワイヤのスロットルを開けると、デジタル式のレブカウンターが踊るように動き、トリプルが奏でるエキゾーストノートがスペインの空に響き渡る。
他メーカーは控えめなパワーのロードスポーツ車をリリースしているというのに、トライアンフのヒンクレー工場はいったいどうやってユーロ5認定を取得したのだろうと疑問に思うほどだ。
スピードトリプル1200RRの電子制御サスペンションは、特性切り替えが実践的
気温が氷点下を上回りはじめたころ、ようやく新しいトライアンフを味わう瞬間がやってきた。装備されているグリップヒーターがありがたい。
しかし路面とタイヤはまだ冷え切ったままだったので、電子制御サスペンションのモードを「コンフォート」に設定して走り出した。そのせいか、スピードトリプル1200RRのハンドリングはやや重く感じた。だが、気温がぐんぐんと上がっていき路面状態がよくなってくると、コンフォートモードのサスペンションは柔らかすぎ、快適ではあるがスポーツ走行に向かないことがわかった。
なお、ライディングモードを「ロード」と「レイン」にすると、サスペンション設定は自動的にコンフォートになる。ハンドリングにはやや鈍さがあるが、乗り心地は本当に快適そのものだ。
ライディングモードを「スポーツ」にすると、スピードトリプル1200RRはその本領を発揮した。減衰力が硬めとなったサスペンションによってシャシーのホールド性が高まり、ハンドリングはシャープで正確になる。さらに攻めた走りを楽しむことができるのだ。
ライディングモードの切り替えは決してギミックではなく、実際の走りに大きな違いをもたらす。特にセミアクティブサスペンションの反応や動き──電子制御式サスペンションを経験したことがないライダーであっても、サスペンションからのフィードバックやフィーリングが大幅に変化することに気が付くだろう。
1000ccスーパースポーツ以上のトルクを生かせば、超スポーティに走れる
サーキット走行もできるほどにタイヤが温まってくると、スピードトリプル1200RRはいよいよ底力を見せはじめ、アップダウンのある峠を華麗に走るようになった。RRのライディングポジションは、RSよりもこのエンジンとシャシーの底力を引き出せる。
ライダーとマシンの一体感が強く、身を乗り出してコーナーに進入するたび、ヒザのスライダーがスペインの路面に触れたがる。
トライアンフの自信に満ちた発言は本当だった。
彼らはすばらしいバイクを作った。シャシーは過激すぎず、エルゴノミクスはスポーティだが極端さはない。ハンドリングは安定しており、コントロール性もいい。そしてブリティッシュトリプルが奏でる素敵なサウンドが、ライディングの楽しさを倍増してくれるのだ。
この3気筒エンジンの最大トルク(125Nm≒12.7kgm)は、ドゥカティ・パニガーレV4をはじめとする200馬力級のスポーツバイクを凌駕している。4速と5速を使っているだけで十分にパフォーマンスを引き出すことができ、クイックシフターをせわしなく使う必要もない。
時折ノークラッチでギアをいくつか落としながらエンジンを吠えさせた後、ウィリーコントロールを効かせながら急加速するのもおもしろいが、一般公道でのライディングではトルクがすべてだ。これこそがスピードトリプル1200RRの切り札であり、シンプルに速いペースできびきびと走らせることが心地いい。
ライディングモード「スポーツ」では低速域でやや急激さがあるが、「ロード」や「レイン」に切り替えると解消される。セミアクティブサスペンション同様、ライディングモードによるエンジン特性の切り替わりも明確だ。
私が感じたただひとつの不満は、見栄えのいい5インチTFTフルカラー液晶パネル(スピードトリプル1200RSに似ているが、電子制御サスペンションの設定表示がある分だけ少々異なる)の表示画面を直感的に判断しにくく、慣れるまで時間がかかった点だ。
何度か素早くモードを変えようとしたとき、本来なら1秒ほど路面から目を離すだけで済むことなのに、常にそれを数回繰り返さすはめになった。そういえば、私の家のテレビのリモコンでも同じようなことをしている……。
ゆったり流しても気持ちよく、快適なスピードトリプル1200RR
ロンダのワインディングロードはスペインでも知名度が高く、バイク乗りが大勢やってくる道だ。しかし私はこれ以上のパワーやハンドリングがほしいとは思わなかったし、よりスポーティなマシンに乗りたいとも思わなかった。
私がバイクを停めると、集まっていたバイク乗りたちが、まるでカモメにエサを撒いたように群がってきた。
スピードトリプル1200RRにはプロテクター付きジャケットとジーンズが似合う。
一方、レーシングスーツを着てスポーツモードで乗れば、ヒザを擦りながら走ることもできるだろう。コーナリングABSをはじめとする電子制御デバイスは、濡れた路面でも威力を発揮するはずだ。しかし試乗している時間の9割は、電子制御デバイスのことを忘れ、爽快な走りと早朝の風を満喫した。マン島TTのレーシングマシンとは違い、スピードトリプル1200RRは身構えることなく乗れるのだ。
試乗コースの最後のストレート区間はクルーズコントロールに任せ、私はリラックスしたままサーキットまで戻った。その途中でこのマシンの欠点を探してみたのだが見つからない。
数時間にわたってスピードトリプル1200RRを走らせたが、トライアンフのスラクストンやMVアグスタのスーパーヴェローチェなどのカフェレーサーのように、背中や臀部、手首が痛くなるようなことはなかった。
私はスピードトリプル1200RRでそのままツーリングに出かけたくなった。
スピードトリプル1200RRをサーキットで走らせる
アスカリは何度も走ったことのある勝手知ったるサーキットだ。
私はまるでレースの予選のようにコースへ入り、トップグループで走った。そしてペースを上げていき、ラップタイムを縮めるべくスピードトリプル1200RRを走らせると、そこで不満が生じた。
しかし私はその考えを改めた。この新しいスピードトリプル1200RRは、サーキットを走るためにデザインされたわけではないのだ。RRの真価を発揮させるには、ラップタイムを気にしてはいけないのだ、と。
そうすれば、スピードトリプル1200RRのパフォーマンスを引き出せるし、そのライディングの美点をしっかりと体感できる。200馬力超で電子制御機構などフル装備のスーパースポーツよりも扱いやすく、しかも寛容だから、きっと満足できるはずだ。
そう感じたのは私だけではないようで、この試乗会に参加していた他のライダーも同じことを感じていたようだった。
そして、限界に近い走りになるほど走る喜びを感じられる。かといって、スーパーバイク世界選手権のようにつま先のスライダーを擦ることはない。電子制御デバイスはファステストラップを叩き出すために設計されたものではなく、ライダーに安心感を与えるために装備されているからだ。
コーナリングABSやトラクションコントロールが作動していることはわかるが、それは決して走りをわずらわすことなく、安全のために機能している。絶妙なバランスだ。
セッション2では、高めのギヤを使い、低~中回転域のトルクを堪能した。ハンドリングは安定していて、予測不能な事態になるような素振りはどこにもない。レースで勝つためのスーパーバイクではないが、サーキットを攻め込むことは十分にできる。
欠点をひとつ挙げるならば、ブレンボ製スタイルマキャリパーか。フロント320mmダブルディスク含めスピードトリプル1200RS同様の装備であり、十分すぎるほどに高性能なのだが、スペックが示すほど10点満点とは言いがたい。フィーリングがいまいちで、サーキット走行ではコーナリングABSのほうが有効に機能していた。
レバー比を簡単に変更できるMCS(マルチ・クリック・システム)マスターシリンダーは、レバーのタッチが良かったのだが。
トライアンフ スピードトリプル1200RR総合評価
もしもあなたがサーキットで超シャープなパフォーマンスを発揮するバイクを求めているなら、他の車種を選んだほうがいいだろう。
トライアンフ スピードトリプル1200RRは、非常に優れたスポーツ性能を持つバイクだが、主眼は一般公道であってサーキットではない。確かに一般的なネイキッドバイクよりもハイパワーである180馬力を誇るが、スピードトリプル1200RRはレーシングバイクではない。
だが、むしろ「それ以上」の価値を持つバイクかもしれない。ルックスも魅力的で、カリスマ的なバイクであり、最新鋭のカフェレーサーなのだから。
トライアンフ スピードトリプル1200RR主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:90mm×60.8mm 総排気量:1160cc 最高出力:132.4kW<180ps>/10750rpm 最大トルク:125Nm<12.7kgm>/9000rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2085 全幅:758 全高:1120(ミラー除く) ホイールベース:1439 シート高830(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R190/50ZR17 車両重量:199kg 燃料タンク容量:15.5L
[価格]
231万7500円(レッドホッパー×ストームグレー)
228万5000円(クリスタルホワイト×ストームグレー)
試乗レポート●アダム・チャイルド まとめ●山下 剛
写真●ギャレス・ハートフォード、チッピー・ウッド、トライアンフ
編集●上野茂岐
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