リアルタイムでカウンタックを知らずとも、誰だって、このカタチを見ればすべてを理解できるハズ。「コイツはタダモノではない!」と。
フェラーリやポルシェと比較する必要もない! カウンタックは唯一絶対なのだから! 自動車評論家 清水草一氏 ほか諸氏をお迎えしお送りする渾身企画、とくとご覧あれ!
クルマ選びに新たな選択肢誕生!! アルテオン シューティングブレークはオトナに似合う美麗ワゴンだ!!
※本稿は2021年9月のものです
文/清水草一、高桑秀典、関口英俊、榎本 修、福田博之、写真/清水草一、高桑秀典、Lamborghini、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年10月26日号
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■圧倒的……! 思わずざわつく圧倒的存在感!!
突き刺さりそうな楔形のシルエットと徹底的に低いこのスタイル。乗るというより「寝る」という感じだ
ランボルギーニ・カウンタック。その名を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。
世界を代表するスポーツカーと言えば、フェラーリとポルシェだ。異論はあるまい。しかしカウンタックは、その頭上はるか彼方にいるような気がしないか!?
それはつまり、「ほとんど空想に近い現実」という意味で。フェラーリやポルシェは一応「モノ」だが、カウンタックはそれを超えた、「バカバカしいほどとんでもない」という、一種の概念なのである!
高々と上がったシザードア。この説得力! もう言葉はいらない
そこには、ランボルギーニという社名すら必要ない。ただ「カウンタック」と言うだけで、超絶。スーパーカーという言葉は、カウンタックのためにある!
そのカウンタックが生誕50周年を迎え、新型も登場した。正直、新型などまったくどうでもいいが、とにかくめでたい限りである。
今回はカウンタック祭りだ! その凄さをもう一度再確認しようぜえっ!
■全力立証!! カウンタックこそ、乗り物の王様ナリ!
ランボルギーニ・カウンタックLP400。地上を速く走って多くの獲物を得るのが、人類誕生以来最大の課題であり夢だった。カウンタックのカタチはその結晶! そのうえで、それを超えた何かを予感させる。それは人類が脳内で創造した超越的存在、神だ!
カウンタックに乗っていると、不思議な感覚に襲われる。それは、自分が世界の頂点に立ったような無敵感である。
今、自分が乗っているカウンタックは、この世に存在するあらゆる乗り物のなかで、最もカッコいいのではないか? そう思うと、笑っちゃうような高揚感がこみあげてくる。
カウンタックは、あらゆるクルマのなかで一番カッコいい。ほかの自動車は相手にならない。チビッコはブルドーザーなどの重機が大好きだが、カウンタックのスタイルは、それらをも凌駕して、チビッコに大ウケする。
そしてカウンタックは、新幹線よりも、リニアモーターカーよりもカッコいい。鉄道というものは、どんなにカッコよくてもヘビやイモムシのように長細い。つまり、カウンタックは地上の帝王である。
いや、そのカッコよさは地上にとどまらない。世界中のあらゆる船や潜水艦よりもカッコいいだろう。軍艦はかなりカッコいいが、人類のほとんどが住む陸地には上がれない。海に出たら周囲は魚しかいない。それでは自慢する相手が少なすぎる。
空に目を移しても、カウンタックは無敵だ。旅客機? あれはバスみたいなものだ。カウンタックの敵は戦闘機だけである。
いや、確かに戦闘機はカッコいい。しかしカウンタックも、ドアを開ければ負けてはいない。見るからに空を飛びそうだ。まさに飛翔感である。戦闘機も飛んでいる時はカッコいいが、地上に降りると動きが鈍そうで、コーナーも速く曲がれない。カウンタックの勝利である。
最後の相手は宇宙ロケットだ。コイツは手強い。なにしろ宇宙まで飛んで行くのだ。男の子の究極の夢である。
しかし客観的に眺めれば、宇宙ロケットはただの筒ではないだろうか? それが火を噴いて宇宙に向けて飛んで行くと思うからカッコいいが、そのままではコケシ。しかしカウンタックは違う。走っていなくても猛烈にカッコいい。何度も言うが、ドアを開ければ無敵なのだ。
そして、カウンタックのカッコよさ最大のポイントは、個人で所有できる点にある。どんなにカッコよくても、ひとり占めできなければどこか寂しい。カウンタックはそれが可能! カウンタックに乗れば誰でも、松田優作のように高笑いせずにいられない!
■全力回顧!! カウンタック半世紀の歩み
●1971年 LP500プロトティーポ誕生!
1971年3月に開催されたジュネーブショーにおいて、プロトタイプとして初公開されたカウンタックLP500。公表されたスペックは、排気量4971cc、最高出力440ps、最高速度300km/hという素晴らしさだった
のちにカウンタックとなる、宇宙船のようなプロトタイプが初めてその姿を現わしたのは、1971年のこと。
LP500と名付けられたイエローのショーモデルは、カロッツェリア・ベルトーネ在籍時のマルチェロ・ガンディーニがデザインした。
ウェッジシェイプそのもののようなプロポーションや、上方に開くスイングアップドアといったセンセーショナルなディテールを採用しており、その姿から、北イタリア・ピエモンテ州の方言で「驚いた!」を意味するクンタッチ(=カウンタック)という車名で呼ばれることになった。
ランボルギーニではなく、ベルトーネのブースに展示されたカウンタックLP500は、その後、市販に向けての開発車両として使われ、最期はクラッシュテストに使用され、失われてしまった。
その設計があまりにも攻めすぎていたこともあり、LP500を実際に走らせると、モノコックボディの剛性不足や冷却不全によるオーバーヒートなどが発生。
市販型を生産するにあたり、チーフエンジニアのパオロ・スタンツァーニは、マルチチューブラーフレームの採用、冷却性能の向上、排気量の縮小といった改善を施した。
排気量3929cc/V12エンジンの最高出力も、375psに抑えられることになったが、発表された最高速度は、LP500と同じ300km/hのままだった。
スタンツァーニは、ガンディーニによるデザインを具現化し、ハンドリングを向上させるためにショートホイールベースにこだわった。
エンジンの前にトランスミッションとクラッチ、エンジンの後ろにデフを配置するという革新的な設計を行い、ミウラよりも50mm短い2450mmというホイールベースと、48:52という前後重量配分を実現。国産車で言えば、トヨタMR-Sと同じという、超ショートホイールベースだった。
●1974年 LP400発売!
オーバーヒート対策としてエアインテーク、エアアウトレット、NACAダクト等を設けるなどし、冷却効果を高めた緑色のプロトタイプを、1973年のジュネーブ・ショーで展示。翌年、市販型のLP400が登場。生産台数150台
カウンタック市販化への道は険しいものとなったが、1974年のジュネーブ・ショーでLP400の最終プロトタイプを公開。晴れて市販型のデリバリーが開始された。
カウンタックLP400は、デビュー当初こそ独自の先進性が強みとなったが、やがてライバルたちと比較して、旧態化が目立つようになった。
そこで1978年にフロントスポイラーとオーバーフェンダーを装着し、当時最新の超扁平タイヤを履かせたLP400Sを登場させ、さらに1982年には、排気量を4754ccまで拡大した5000S(LP500S)がデビュー。
●1978年 LP400Sでオバフェン化!
エボリューションモデルのLP400Sに採用された各部の意匠は、カナダの石油王であり、F1の世界でも広く知られたウォルター・ウルフ氏のオーダーによって製作されたカウンタックをお手本としたもの。生産台数237台
●1982年 5000Sで5リッター化!
LP400と最高速戦争を繰り広げた365GT4/BBが512BBを経て、インジェクション仕様の512BBiに進化していたことに対抗し、LP500Sと呼ばれることもある5000Sは、エンジンの排気量を4754ccまで拡大した(375hp/41.7kgm)。生産台数323台
●1985年 5000QVで4バルブ化!
BBシリーズの後継として、フェラーリがテスタロッサを登場させたことをうけ、5000QV(クワトロバルボーレ)は、エンジン排気量を5167ccにまで拡大(455ps/51.0kgm)。生産台数632台
各部のアップデートにより、新たな顧客を獲得することに成功したカウンタックは、1985年に排気量を5167ccに拡大し、エンジンヘッドを4バルブ化した5000QVに発展。
さらにクライスラー傘下となった1988年には、ランボルギーニ社の創立25周年を記念したカウンタック最終型「アニバーサリー」が登場した。
アニバーサリーは1990年に生産終了となり、後継モデルのディアブロにバトンタッチしたが、今年カウンタックのデビュー50周年を記念して、カウンタックLPI800-4が発表されたのでした!
(ここまでTEXT/清水草一)
1988年 25thアニバーサリー…エクステリアを担当したのは、ホラチオ・パガーニ(ゾンダの生みの親)で、LP400S以来踏襲されてきた外装に、大幅な改良が加えられた。リアウイングのない姿がアニバーサリーでは正装。生産台数657台
そして2021年 新型カウンタック爆誕!…ハイブリッドモデルとして今年8月13日に発表されたカウンタックLPI 800-4は、生産台数112台の限定車(システム出力814ps)。カウンタック・プロジェクトの社内コードが「LP112」であったことにちなんだ台数だ
■断定証言!! カウンタックこそ神だ!
●三つ子の魂百まで(TEXT/関口 英俊)
関口さんは19歳の時にロータス・ヨーロッパTCを買い、その後ヨーロッパS2にチェンジ。1990年にジャガーEタイプを購入。1996年にはアパート暮らしをしながらディーノを入手し、そして念願のLP400をゲット!
輸入車専門のボディショップ『ガレージRUN&RUN』の関口代表が所有するオレンジ色のカウンタックLP400は、スーパーカーブーム全盛時、シーサイドモーターによって輸入された、日本上陸3号車。そう、さまざまなショーで雄姿を披露した、あの自動車世界遺産=神そのものである!
昭和40年生まれで、大のスーパーカーファンだった関口少年は、池沢早人師(当時、さとし)氏の漫画『サーキットの狼』に心酔。ブーム前夜からスーパーカーを追い求め、街をパトロールしていた。
地元は葛飾区だが、世田谷区(目黒通り周辺)まで遠征することもあり、店頭や道で遭遇したスーパーカーの写真をせっせと撮っていた。
そのようなスーパーカー漬けの毎日のなかで、オレンジ色のLP400と出会う機会もあった。1977年に実施された、筑波サーキットでのスーパーカーフェスティバルや、東京・晴海で開催された、かの有名なサンスタースーパーカーショーである。
かつてレーシングサービスデイノの切替氏が所有していた、マセラティ・ボーラの前でパチリ。関口少年は土浦市にも遠征していた
社会人になると、スーパーカーのために猛烈に働き、まずロータス・ヨーロッパを購入。その後スーパーカーを扱う板金職人になり、多くのスーパーカーを乗り継いだ。
「1998年にF355を買ったら、ある人から『オレのクルマと交換しないか?』と言われたんですよ。それが、子どもの頃から憧れていた、あのLP400でした」
まさにわらしべ長者。スーパーカーブーム後も情熱が醒めず、スーパーカー道を突き進んだ関口氏のことを、自動車の神様はしっかり見ていたのである!
●地上の帝王です!!(榎本 修氏)
中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』代表の榎本修氏は、これまでカウンタックを2度所有。子供の頃の夢を果たした!
横浜市で中古フェラーリ専門店『コーナーストーンズ』を経営する榎本修氏は、実は「カウンタック命」の男である。
「小5の頃は、カウンタックだけが神で、あとは全部ザコだと思ってました」
店ではフェラーリを中心に扱っているが、心の中は「カウンタック命」のままだ。
「カウンタックは地上の帝王です! カウンタックの前では、どんなクルマも霞んで見えますよ、ウフフフフ~!」
●サンバルギーニ・コカウンタック!!(福田 博之氏)
「片側だけですがスイングアップドアも開きます。ヘッドライトもリトラクタブルです」と語ってくれた福田さんは、右ページの関口さんと同じ昭和40年生まれ。往年のTVアニメ、『マッハGoGoGo』に登場したマッハ号も自作!
群馬県で自動車整備工場を営んでいる福田さんは、「サンバルギーニ・コカウンタックLP360」を、造った有名人である!
「小学校高学年の時にスーパーカーブームがあり、たまたま町で開催されたスーパーカー展示会に連れて行ってもらいました。
そこで初めて見たカウンタックは、平べったくて、とがっていて幅広くて、ドアが上に開くことにも衝撃を受けました。その時からカウンタックが大好きになりました。
大人になったら乗りたいな、いつか欲しいなと思っていましたが、知れば知るほど、とても手に入るようなクルマではないことが、わかりました……」
しかし、福田さんは、あきらめなかった。
「機械やクルマが好きでその道に進み、二十数年が経ったある日、車体の側面にクルマの絵を描いた軽バンに遭遇して、自分もやってみようと思ったんです。乗っていた箱バンの横にエアブラシを使って描いたのは、憧れのカウンタック!
バンの長さに納まったカウンタックの絵を見て、一人くらい乗れそうだな……と思い、そうだ、本物は買えないから自分で造ろう! 造るなら小さくてカワイイ、軽自動車サイズにすれば維持費も安いだろうと考えました」
造るにはベース車両が必要。ベースに選んだのは……、
「ベースはスバル・サンバーにしました。リアエンジンでフロントを低くできるし、フレームに足まわりも付いてくるから、造りやすいと思ったわけです。試行錯誤しながら仕事の合間に造り続けて3年3ヶ月。ついに小さなカウンタック=コカウンタックが完成しました。カウンタックは永遠の憧れです!」
■カウンタックは不滅のアイコンである
フェラーリを唯一絶対神とする大乗フェラーリ教開祖を名乗る私だが、実のところ、「カウンタックにはかなわない……」と、何度も痛感させられた。
10年前、敵を知るためにアニバーサリーを購入し、その破壊力を嫌というほど思い知った。カウンタックがそこにあるだけで、女性や子ども、老人は、フェラーリなど視界にすら入らなくなり、カウンタックに吸い寄せられるのだ! ショック!
まさに怪獣! この凄まじいばかりのオーラ! エンジンがどうだとか視界がこうだとか、そんなしちめんどくさいことは一切無関係。カウンタックのスタイリングが放つパワーで、すべてが吹っ飛んでしまう。
清水草一が榎本修氏と共同で所有するのは、白いカウンタック・アニバーサリー。白いカウンタックはまさに神! その破壊力はすさまじい
その時は、乗るとあまりにも疲れるので(笑)、半年で手放したが、昨年、再びアニバーサリーを購入し、その偉大さをもう一度思い知った。
カウンタックには、性能などというものは必要ない。ただそこにいるだけでいい。その形が、そのドアが、すべての雑念を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまうから!
今後未来永劫、カウンタックを超える自動車デザインは誕生しないだろう。まさに不滅のアイコンである。敬礼!
(TEXT/清水草一)
【おまけ】1970年代から80年代のカウンタックのライバルたち
ミウラ等の登場によりスーパーカーという概念が1960年代後半に生まれ、1970年代になると群雄割拠の戦国時代に突入、最初の黄金期に。日本では漫画『サーキットの狼』がブームのきっかけとなった。
●フェラーリBB…1960年代のフェラーリは、フロントエンジン車が旗艦モデルだったが、それを打破したのが新世代のスーパーカーとして1971年に発表された、365GT4/BBだ。車名のBBはベルリネッタ・ボクサーを意味する。
フェラーリBB
●ポルシェ930ターボ…スーパーカーブーム全盛時、911はスポーツカー、930ターボはスーパーカーといったような解釈だった。今でもポルシェがスーパーカーとして語られるのは、930ターボが少年たちを熱狂させたから
ポルシェ930ターボ
●フェラーリF40…フェラーリ創業40周年の1987年にデビューした、スペチアーレ・フェラーリを代表するモデル。フェラーリ創業者であるエンツォ・フェラーリが、その生涯の最後に自身のポリシーを具現化したクルマと言われる
フェラーリF40
●ポルシェ959…当時のグループBホモロゲーションを取得するための限定生産モデル。フルタイム4WD、水冷ヘッド、可変ダンパー、複合素材ボディパネル、脱落防止機構付きタイヤといった、新しい技術が盛り込まれた
ポルシェ959
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みんなのコメント
よく見りゃ清水草一じゃねーか。
新年早々読んで嫌な気分になったわ。
新幹線だってカッコイイぞ?