この記事をまとめると
■中国では環境負荷の低い新車への乗り換えを推奨する「スクラップインセンティブ」を実施
新車ディーラーにとって「新車」よりも「認定中古車」販売のほうが美味しい! 厳しい新車販売店のいま
■中国は中古車輸出を活発化させており世界中に輸出を始めている
■日本に追いつけ追い越せと躍起になっている
中国は中古車輸出に躍起
中国では2024年12月31日までとして、環境への負荷の高い低年式車からの新車乗り換えを促進する、いわゆる「スクラップインセンティブ」を実施している。
ほかにも、2023年6月にはそれまでも実施していた、新エネルギー車(新能源車/BEV[バッテリー電気自動車]、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車])の購入にあたり、自動車取得税の免除措置を2027年末まで延長するとしている。
このようなさまざまな新車購入支援もあるのか、発表される統計を見る限りは深刻な経済悪化が懸念される中国国内であっても、新車需要はそれほど大きなダメージを受けていないようにも見える。
先日、中国メディアの報道にて、中国国内からの中古車(中国語では二手車)の輸出がかなり増えているとのことであった。前述したような購入刺激策が功を奏して新車への乗り換えが進み、それにともなって良質な中古車が市場に多く出まわるようになり、そこに海外バイヤーが注目して中国からの中古車輸出に火がつこうとしているというのである。報道では、中国車のお家芸ともいえる「新能源車」の中古車にとくに注目が集まっているとのことであった。
さらに、報道では「国内で再販するのと比べると2倍ほどの価格で取り引きされる」というのも魅力となっているようである。日本車でBEVラインアップが拡大しないなか、新車でも手ごろな価格のBEVが多い中国車で、しかも中古車として手に入るとなれば、海外バイヤーも中国の中古車市場に注目するのは自然の流れのように見える。
クリミア半島への侵攻、そしてウクライナ紛争を経て、いまでは日本も含む西側諸国ブランドの新車は、ロシア国内での現地生産はおろか、正規輸入販売も行われていない。ただし、あくまで「正規輸入販売」されていないだけで、第三国経由などで意外なほど西側諸国ブランドの新車は、いまもなおロシア国内で販売されているとのこと。しかし、車両価格はかなり跳ね上がっており、庶民レベルではなかなか購入することはできないようである。
中国車の中古輸入は実験的な側面もある
庶民レベル向けの新車として、西側諸国ブランドに代わって正規販売されるようになったのが、中国系ブランド車。ロシアではクリミア半島侵攻直前あたりから中国からの中古車輸入販売が目立つようになっていた。
一説によれば、とくにロシアの冬の厳しい気象条件下で中国車がどこまで耐久性があるのかを見極めるための中古車輸出なのではないかともいわれている。
中国からの中古車輸出先はロシアも含んだ東ヨーロッパのほか、中央アジア、アフリカ諸国や中東などとなっている。報道では2025年には40万台規模の中古車輸出台数をめざしているらしい。ちなみに、海外への中古車輸出では、140万台前後で日本が世界トップになっているとも報じている。新車の海外輸出を促進するとともに、国内での乗り換え促進を行えば、いくら国土が広く人口の多い中国とはいえ、排出される下取り車がかなり多くなり、国内でさばききれないという事情もあるようだ。
新車への乗り換え促進は単に経済刺激策という側面だけではなく、自国自動車産業への支援、そして新能源車をメインとした環境負荷の低いモデルの普及による大気汚染の低減など、政府としても多様な効果を期待しているものと考えている。
中国は、日本の活況な中古車輸出を横目で見ながら、日本を追い抜き追い越そうとしているのは明らか。ただ、中国車の新車が海外へ出荷されはじめたとき、確かに見た目は日本車に似ていながら価格が安いとのことで人気が高まったが、実際使用してみると耐久性能などに問題があり、再び日本車が脚光を浴びた時期があった。
海外での中古車展開でも、日本からは良質なHEV(ハイブリッド車)の中古車が数多く海外へ出荷されている。前述した新車のケースのように、オペレーションを間違えると、一時的なブームとして「中国からの中古車」が終わってしまう可能性もある。
道路や気候など環境面でのクルマへの負担が少なく、一般的には諸外国より走行距離が伸びず、そして国民性として大切に乗る人が多い日本で使われた日本車の中古車はかなりの強敵であり、中国政府としても慎重に中古車輸出の環境整備を進めているようであった。
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