「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、トヨタ 86(プロトタイプ)だ。
トヨタ 86(2011年:初代プロトタイプ)
トヨタ 86の実車を見て、久しぶりに懐かしい「カッコ良さ」を感じた。そのとてもピュアな2ドアクーペ フォルムは、デザイナーがトヨタ2000GTのイメージを頭の中に刻み込み、だがけっして真似をすることなく完成させたものだという。随所にバランスよくボリューム感を配したスタイリングは流麗だ。一方で、夕暮れにリアコンビネーションランプを点灯させた後ろ姿は、まるでイタリアンスポーツを思わせる。
【写真館】昭和のヒーローカー Vol.4トヨタカローラ レビン(AE86)
インテリアでは、慣性モーメントを小さくするためにオーディオなどのスイッチ類を排したステアリングホイールがスパルタンだ。大きなタコメーターの視認性の高さが際立ち、とてもわかりやすくスポーティな印象を醸し出している。シートポジションの低さも、いかにもスポーツカーらしい。運転席に座ったまま地面に手を伸ばしてタバコが消せる、というほどにシート位置が下げられている。それでも前方の視認性は良好だ。エンジンフードも非常に低く、座った瞬間にレーシーな走りを予感させてくれる。
シート、ステアリング、シフトがほぼ完璧なバランス感覚で配されたドラポジに感心しながら、いよいよ走り出すことにしよう。
真っ先に感じとれたのが、とてもしっかりとしたステアリングフィールだ。切り始めの応答感、ロールの変化、ヨーの立ち上がりなどがスポーティに味付けされていることはもちろんだが、その挙動変化をほとんどフロントまわりの動きで感じ取ることができる。リアも素直に追従してくれるので、操作に対する反応に違和感がない。前後タイヤのグリップバランスが絶妙だ。
エコ系タイヤの採用でドリフトさせるのも容易だ
サスペンションは、フロントにストラット、リアにダブルウイッシュボーンを採用している。このリアサス形式の選択が、ドリフト走行にも向いていることがわかる。ABSを除くすべての電子制御デバイスをOFFにして攻め込むと、アクセルのオンオフだけでリアをスライドさせるきっかけを自在に作り出すことができる。
滑り出してからのドリフトコントロールも容易だ。スライドアングルが付き過ぎたときには思った以上にリアの流れ方が唐突になることはあるが、これはやはり、プリウス用に開発された17インチのエコタイヤを履いていたためだろう。バランスの高さは魅力的だが、総じてグリップ力は低い。この、時に唐突な挙動は、ハイグリップ系のラジアルタイヤに履きかえればすぐに解消するだろう。
それともうひとつ、コーナリング中のブレーキングで前輪イン側の接地力が薄くなりABSが作動する場面が何度かあった。プロトタイプゆえ、サスペンションセッティングの前後バランスを改善する余地はまだあるだろう。一方で、このセッティングだからこそドリフトが容易でコントロール性が高いことも事実。通常はスタビリティコントロールをONにしておけば問題はない。
NA専用を謳って開発された2Lの水平対向エンジンはパワフルとは言いがたい。それでもトルク特性は下から上までフラットで素直だし、アクセルコントロールはイージーだ。ピックアップもいい。高回転域まで回しても不快な振動はないから、気持ち良く回して楽しめる。
短いストロークと剛性感の高さが魅力的な6速MTとの組み合わせが似合う味付けだが、6速ATでもシフトラグが小さく、最近流行のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)と比べてもヒケをとらないコントロール性を誇る。実はこのATの制御はレクサスIS Fの8速ATをスケールダウンしたもの。したがって、素性的にはまったく問題なかった。
世の中に、もっとクルマ好きを増やすという、トヨタ 86に与えられた使命は、とても重要で価値あるものに思えた。本当に市販が待ち遠しい1台だ。
■トヨタ 86(プロトタイプ) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1775×1285mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1230kg<1250>
●エンジン:水平対向4 DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:147kW(200ps)/7000rpm
●最大トルク:205Nm(20.9kgm)/6600rpm
●トランスミッション:6速MT<6速AT>
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●タイヤサイズ:215/45R17
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みんなのコメント
クソ遅くて追いついちゃってるのに道を空けない。
ローダウンしてウイングまで付けてるのに、一体コイツらどこを走るつもりなんだろう・・