1980年代に登場したクルマのなかでも、走りが印象的だったちょっとスポーティなモデルを小川フミオが選んだ。
クルマはおもしろい。いつの時代のものでも、絶対的に”古くさい”とはならない。どんどん出力が上がっていくスポーティ・モデルの世界にあって、むかしのクルマは非力だ。しかし、軽量ボディがそれをカバーする。
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もうひとつの魅力は、後輪駆動方式が多く、すなおなドライビングを楽しめる点。いまでも、往年のスポーティモデルによるサーキット走行会がさかんなのは、運転の楽しさをダイレクトに体験できるからだろう。
小さくてシンプルな後輪駆動車がほとんどなくなってしまった現代にあって、ここで紹介するクルマは、貴重な楽しさを提供してくれるといえるものだ。いっぽう、1980年代は、前輪駆動車が台頭した時代でもある。
パッケージングや生産効率などが、1980年代を迎えた自動車メーカーの課題だった。自動車生産がグローバル化するなかで、ひとつのプラットフォームでさまざまなモデルを作り、なおかつモデルごとの個性を生み出す。開発者に与えられた課題はなかなか過酷である。
スポーティモデルは、キャラクターのたった存在だ。どれくらい室内が広いか、どれだけの荷物が積めるか。ということより、いかにスポーティ、つまり、スタイリッシュで、かつ、運転が楽しめるかが重視される存在だから。
1980年代のスポーティカーは、存在感がいまだに薄まっていない。見た目も乗った印象も、個性があって、味わいぶかい。そこに、これらのクルマに注目すべき理由がある。
(1)トヨタ「カローラレビン」(AE86)
1980年代を代表する後輪駆動のスポーツクーペといえば、2代目「カローラ・レビン」だ。販売チャネルのちがう姉妹車「スプリンター・トレノ」とともに1983年に発売された際、カローラは前輪駆動化したいっぽう、レビンとトレノだけは先代から後輪駆動レイアウトを継承したのだった。
いまの50代以上は、レビンとトレノというと、ビビッと電流が流れたように、このクルマに憧れた、あるいは乗って楽しんだ時代の思い出がよみがえる。もちろん、おなじようなドラマチックな感激を、いま初めて接する20代でも30代でも、味わうことが出来ると思う。
後輪駆動を守った理由は、モータースポーツを愛するファンからの声だった。スタイルはファストバックで、トレノにいたっては格納式ヘッドライトまで採用して、アップデート化されていたものの、コントロール性のいい4リンク式リアサスペンションなど残すべきものは残していた。ボディサイズも大型化せず、コンパクト性を重視していたのも、メーカーの”良識”と感じられたものだ。
ほかにもスポーティな要素はちゃんとあった。ステアリングのギア比はロックトゥロックが、ちょうど3回転。こちらも、サーキット走行など、スポーティな走りを楽しみたいファンへの”サービス”だ。
エンジンは、スポーティな走行性を高めるのを目的とし、1.6リッターDOHCユニットがあらたに用意され、これが人気を呼んだ。おもしろいのは、オートマチック変速機が1987年までのモデルライフの中途で用意されたこと。むかしはスポーティモデルといえばマニュアルが常識だったのに対して、時代がATのほうへと向かいだしていたのだ。
(2)トヨタ「セリカ」(4代目)
1985年登場の4代目トヨタ「セリカ」の特徴は、前輪駆動化されたところにある。もうひとつの特徴は、フルタイム4WDシステムをもったスポーツモデルの設定だ。
格納式ヘッドランプを持った独特のフロントグリルと、美しい面をもつボディとの組合せは、いまも魅力的といえる。キャビンは逆カンチレバーとよばれるAピラーいがいはブラックアウトして、透明感を出した斬新なデザイン。
バブル経済下で特別なモデルが求められるなか、ミドルサイズのラグジュアリークーペの開発を企画したトヨタ自動車では、「カリーナED」と「コロナクーペ」を開発。これらは駆動方式にこだわるクルマではなかったのですんなりと前輪駆動で発表。わりを食ったというか、時代の潮流に従わされたのが、これらと三姉妹車として開発された4代目セリカであると思う。
当初は1.6リッターエンジンを中心の布陣でモデル展開。1986年にフルタイム4WDシステムと2リッターエンジンの「GT-FOUR」が登場して、スポーティ車はもはや後輪駆動でなく、全輪駆動なのだと知らされたのだった。
GT-FOURは1987年にマイナーチェンジを受け、4WDシステムのセンターデフが、それまでの手動ロックからビスカスカプリングを使ったものへと変更された。だいぶ現代的になったのである。
GT-FOURは、1989年登場の5代目が、世界ラリー選手権への挑戦などでよく知られている。とはいえ、2.0リッター「ツインカムターボ」エンジンを載せた最初のGT-FOURの元気のよさは、いまも強く印象に残っている。
(3)日産「スカイライン」(6代目)
1981年に発売された6代目日産「スカイライン」の高性能モデルであった2リッターの直列4気筒4バルブ・エンジンを載せた「2000RS」は、GT-Rの再来か、と期待されたが、6気筒ではなく4気筒であったため、むしろ不満の声に迎えられた、という不幸があった。
個人的には、嫌いなモデルじゃない。むしろ、好き。操縦性がよかったからだ。コンパクトな4気筒による鼻の軽さを重視して、むしろ4気筒のポテンシャルを磨きあげようとした日産の技術陣の姿勢だって、ホメたい。
「FJ20」とよぶ2.0リッター4気筒DOHCエンジンは、アルミニウム合金のヘッドを持ち、燃焼室形状は高回転に耐えるペントルーフ型。設計もさることながら、組み立てラインでは熟練工が、ピストンやピストンリングやブロックなど、どれとどれを組むと最適な性能が得られるかを経験的に判断して組み上げていたとか。
そういう神話性とともに語られるのが、当時の日産車なのだ。じっさい、ほんといよくまわるエンジンで、2615mmのホイールベースを持つシャシーの剛性感も高く、ハンドリングはスポーティだった。
それでも日産の経営陣は不足感をもっていたのだろう。1983年には過給器をそなえた「RSターボ」を追加。さらに1984年にはインタークーラーを与えてより高性能化し、1985年までの比較的みじかいモデルライフのうちに、どんどん”変身”させていったのだ。
最後の1983年8月のマイナーチェンジでは、フロントマスクのフェイスリフトを敢行。グリルレスグリルに薄型ヘッドランプを採用し、「鉄仮面」というニックネーム(というよりあだ名)をファンからつけられた。
組み立てをふくめてコストがかかりすぎるという理由で、FJエンジンはこのR30型スカイラインRSがモデルチェンジを受けるのと同じタイミングで、製造終了となってしまった。FJエンジンに日産の矜恃(きょうじ)のようなものを感じていただけに、残念だった。
(4)ホンダ「シティターボII」
ホンダらしいクルマは?という質問に対しては、とうぜん、さまざまな答が返ってくるだろう。1981年に「シティ」が登場したとき、この思いもかけない斬新なスモールカーもまた、じつにホンダらしいと思えるモデルだった。
バリエーションとして、シティ・ターボという高性能モデルが出たのは、シティコミューターというのがシティのコンセプトだと(勝手に)思っていただけに、意外である。でも乗れば、ちょっと非力なシティの弱点をカバーしていてくれて、いいなあと思えるモデルだったのだ。しかも、全長は3.4mしかないのに、どう、この存在感。
シティ・ターボIIは、1231ccターボエンジンにインタークーラーを追加して、効率アップしたところに特徴を持つ。最高出力はシティターボの100psから110psにアップ。そればかりか、ボディ同色バンパーやオーバーフェンダーなど、外観もおおいに魅力的に仕上げられていた。
ホンダが用意したサブネームは「ブルドッグ」。これも、おもしろかった。フォーリーブスのイカした同名曲(1977年)や、英国がファイティングスピリットを象徴する存在として選んだブルドッグ(「ブリティッシュブルドッグ」と呼ばれたWチャーチルじしんの愛犬は小さなプードル)など、勇敢だけどどこかユーモラスなイメージだったからだ。
いまでは衝突安全要件などが変わっているため、おなじデザインでは作れないだろう。でも、シティ、シティ・ターボ、それにシティ・ターボII、どれもいま新車で出してほしい。シンプルでアグレッシブ、そしてパワフル。いい組合せだ。
(5)マツダ「RX-7」(2代目)
いまでも充分通用するスタイリングをもった2代目マツダ「サバンナRX-7」。長めのノーズに、雨滴用のドリップモールをもたないプレスドアを採用したキャビン、それにグラスハッチ。ポルシェが「924」(1975年)で打ち立てたフォーミュラを忠実になぞっていたのが印象的だった。
グローバルな印象を与える外観どおり、内容もモダナイズされていた。リアサスペンションは独立懸架式、ステアリング形式はラック&ピニオン、フロントブレーキは対向4ピストンのアルミニウム製キャリパーといったぐあい。操縦性は、外観から期待できるとおりのスポーツカーである。
エンジンはマツダのこだわり。ロータリー(13Bの2ローター)でインタークーラー付きツインスクロール式ターボチャージャーを装着して効率をあげていた。よく回るうえにトルクがたっぷりと、ロータリーエンジンの美点がしっかり味わえた。
ロータリーゆえ、エンジンは小ぶり。それを前輪より後ろに搭載して、理想的なハンドリングを追究していた。前輪の左右の間隔であるトレッドは1450mmとられており、たとえば日産「フェアレディZ」(1983年)よりだいぶ広かった。
1989年4月のマイナーチェンジで出力は、185psから205psへと向上。同時にリアコンビネーションランプの形状が矩形から丸型に変わって識別もしやすい。1990年にはハイオクガソリン仕様が出て、こちらはさらに215psへとパワーアップしていた。
1991年10月には3代目へとモデルチェンジ。性能が向上するとともに、スタイリングは、グローバルというより、マツダ独自のキャラクターがたった、オリジナリティの高いものへと変わる。2代目は、マツダという企業の成長のために必要だったモデルなのだ。適度にパワフルで、いまでも好感がもてる1台である。
そういえば2022年前半までに新世代のロータリーエンジン車が登場するとか。ファンの期待が大きいだけにプレッシャーもかなりなものかもしれない。どんなボディに載るか。いろいろ噂はあるものの、それがスポーツカーだったら最高だ。
文・小川フミオ
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みんなのコメント
3ドアハッチバックは大きな荷物も積めて重宝してました。
またセリカの復活の噂があるので期待してます。