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【懐かしのバイク用語 Vol.4 ドラムブレーキ】レトロでカッコいいけど……効かないの?

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【懐かしのバイク用語 Vol.4 ドラムブレーキ】レトロでカッコいいけど……効かないの?

ABSを装備できないのが致命的!?

リヤブレーキの機能は減速と停止だけ、 と思っているライダーは損してる︎ – ライテクをマナボウ ♯10

いまどきのバイクは油圧式のディスクブレーキが主流だけど、昔はワイヤーで引っ張るドラムブレーキが多かった。ワイヤーが繋がるアームやリンクがいかにも機械っぽかったり反対側はツルンとシンプルで、レトロな雰囲気がお洒落に感じたけれど……なんで無くなっちゃったの?

●文:伊藤康司 ●写真:富樫秀明、ホンダ、ヤマハ、スズキ

ドラムブレーキの歴史は長いが……

この世にバイクが登場し、自転車フレーム+エンジンから、いわゆるオートバイ型になってからは、長い間ドラムブレーキが主流だった。

しかし1979年にホンダがCB750FOURに市販量産車初の油圧式ディスクブレーキを採用してからは、多くのメーカーが中~大型ロードスポーツバイクにディスクブレーキを装備するようになった。

とはいえドラムブレーキも直ちに姿を消したワケではなく、オフロードバイクは1980年代半ば頃まではドラムブレーキが主流で、スクーターやビジネスバイク、小排気量車は近年までドラムブレーキが多かった。

と、ここまではフロントブレーキの話で、リヤブレーキに関しては中~大型ロードスポーツバイクでも2000年代初頭でも、フロントはディスクだがリヤはドラムブレーキを装備する車種も少なくなかった。

そして事情が大きく変わったのが2015年。道路運送車両の保安基準が改正され、2018年10月以降の新規発売する125cc以上のバイクにABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の装備が義務付けられたのだ(原付二種はABSまたはCBS(前後連動ブレーキ)を装備。継続生産車は2021年10月から適用。原付一種や競技専用車両は適用外)。

じつはワイヤーやロッドで作動する機械式のドラムブレーキには、油圧制御のABSを組み込むことができない。なので、この時点でバイクのドラムブレーキの未来は断たれたといえるかもしれない。昨年に生産終了となったヤマハのSR400はリヤがドラムブレーキだったが、日本製で国内販売する125ccを超えるバイクは、このSR400を最後に姿を消した。残るは原付二種(のリヤブレーキ)と、原付一種のみだ。

ちなみに四輪車のドラムブレーキは油圧式でABSが装備可能なため、現在もドラムブレーキ車が存在する。

―― ヤマハ SR400
中~大型ロードスポーツバイクでもっとも後年の2000年までドラムブレーキを装備し、2001年にフロントブレーキを油圧式ディスクに変更した。ちなみにSR400/500は1978年の登場時は油圧式ディスクで、1985年のマイナーチェンジであえてドラムブレーキに変更。理由はズバリ「クラシック感の向上」だ。 [写真タップで拡大]

ドラムブレーキのメリットとデメリット

近年の油圧式ディスクブレーキは猛烈に制動力が高いが、じつは登場当初はドラムブレーキとそれほど大きな差があったわけではない。むしろ当時はドラムブレーキの方が軽量で低コストというメリットがあったくらいだ。

しかしドラムブレーキは、ホイールのハブの中にブレーキ機構を収めているため熱がこもりやすく、ハードブレーキで熱ダレを起こすこともあった。また強い雨天時にはドラム内に水が入り、そうなると一気に制動力が落ちた。

またブレーキシューの交換や整備をするには、ホイールごと車体から外す必要があり、シューの交換後はきちんと調整しないと制動力を発揮できなかったり、突然強く効く「カックンブレーキ」になることも多く、ディスクブレーキと比べるとメンテナンスの難易度が高い。

そしてディスクブレーキは、ブレーキキャリパーの構造やブレーキパッド、ディスクローターの材質もどんどん進化。そのため強力な制動力やコントロール性を発揮。さらには前述したようにABSも装備できるため、ドラムブレーキでは太刀打ちできなくなった……というのが実情だ。

ドラムブレーキの構造は?

油圧式のディスクブレーキは機構が露出しているため、ディスクローターをブレーキパッドが挟み込むことで制動力を発生する仕組みがわかりやすい。

対してドラムブレーキはドラム(ハブ)内にメカニズムが収まるため少々わかりにくいが、摩擦材を貼ったブレーキシューが広がってドラムを押し付けることで制動力を生み出している。

―― ツーリーディング式ドラムブレーキの外観(車両はSR400)。ブレーキレバーを握るとワイヤーがブレーキアームを引っ張る(もう一方のブレーキアームもリンクロッドで作動)

―― ツーリーディング式ドラムブレーキの内部(車両はSR400)。ブレーキアームの軸は、ブレーキパネルの内側ではカム形状になっている。ブレーキレバーを握るとカムが回転運動することでブレーキシューが外側に広がり、ホイールハブの内側のブレーキドラムに押し付けられて、その摩擦力でブレーキが効く。

ドラムブレーキにも種類がある

―― 強力なツーリーディング式と、リヤに多く使われるリーディングトレーリング式

ドラムブレーキには大別してツーリーディングとレーディングトレーリングの2種類がある。

ツーリーディング式はカムと支点が2つずつあり、それぞれのブレーキシューがホイールの進行方向(前進。上図ではホイールが右回転する場合)に対して引っ張る方向に広がるため、強い制動力を発揮できる。

そのためレース用の車両や大排気量車、高性能モデルのフロントブレーキに多く採用される。ただしホイールが逆回転(バックする時の回転方向。上図ではホイールが左回転する場合)すると効きが弱い。

リーディングトレーリング式はカムも支点もひとつで、回転方向に対して片方のブレーキシュー(上図でホイールが右回転する場合は右側のブレーキシューのことで、こちらをリーディングシューと呼ぶ)は強い摩擦力を発揮するが、反対側のシュー(左側のブレーキシュー。トレーリングシューと呼ぶ)は制動力が弱いため、ツーリーディング式よりも全体的な制動力は劣る。

ただしリーディングトレーリングは車体がバックするときは(ホイールが逆回転すると)それぞれのシューの役目が逆転するため、ツーリーディングより有効。四輪車と違ってバイクは基本的にバックしないが、急な上り坂で停車した時は効果が大きいため、リヤブレーキに用いられる。また構造がシンプルなぶん小型・軽量に作れるため、小型車やオフロードモデルのフロントブレーキにも採用されている。

―― ブレーキシューの減りを
チェックするには?
油圧式ディスクはブレーキパッドの摩耗チェックが必須だが、ドラムブレーキも同様にブレーキシューの摩耗チェックは重要だ。とはいえブレーキシューはドラム(=ハブ)の中なのでブレーキパッドのように外から簡単に確認できないし、その都度ホイールを車体から外すのは大変だ。そのためドラムブレーキは、ブレーキアームの根元にブレーキシューの残量を確認できるインジケーターを装備している場合が多い。 [写真タップで拡大]



高性能な「ダブルパネル」のドラムブレーキ

油圧式ディスクの場合(フロントブレーキ)、小型車や軽量なオフロード車はシングルディスクで、重量車やスピードの出るハイパワーバイクはダブルディスクを装備している。そしてドラムブレーキの場合も、かつてのレーシングマシンは制動力の高い「ダブルパネル式ツーリーディング」を装備していた。

市販バイクのドラムブレーキは先に紹介したSR400のように、片面のブレーキパネルにブレーキシューが備わり、反対面は特に何も付いていないのが一般的。油圧式ディスクで言えばシングルディスクに相当する。

対するダブルパネルは、その名の通りドラム(ハブ)の両面にブレーキパネルを装備する。それぞれのパネルにブレーキシューを備えるので、制動力が大幅にアップしている。油圧式ディスクで言えばダブルディスクだ。

ちなみに70年代初頭のモト・グッツィV7SPORTやMVアグスタ750といったスポーツ性の高いイタリア車は、公道仕様の市販車ながらダブルパネル式ツーリーディングを装備。変わり種は1971年のドゥカティ450・250デスモで、リーディングトレーリングのダブルパネルを備えていた。

―― 1967 ホンダ RC181
1956~1967年のGPレース活動で、ホンダは50、125、250、350、500の全クラスを制覇。写真はGP休止前の1967年のRC181で、DOHC4気筒500cc。50ccを除くほとんどのマシンがダブルパネル式ツーリーディングを装備した。

―― 1973 ヤマハ TZ250
多くのプロライダーを輩出したヤマハの市販レーサーTZ250は、1973-74年はダブルパネル式ツーリーディングのフロントブレーキを装備。1976年型で油圧式シングルディスクを装備し、ダブルディスクになったのは1988年型からだ。

珍しいダブルパネルの国産市販車

―― 1971 スズキ GT750
2ストローク水冷3気筒エンジンを搭載するスズキ初の「ナナハン」は、装備が豪華でブレーキもダブルパネル式ツーリーディングを採用。2代目の1973年モデルで油圧式ダブルディスクに変更された。

―― 1997 スズキ テンプター
トラディショナルなスタイルの400cc空冷SOHC4バルブ単気筒を搭載するロードスポーツ。ダブルパネル式ツーリーディングとH型のアルミリムでスポーティかつクラシカルな佇まいにこだわった。

完全に「過去のメカ」になる日は近い……かも

制動力だけで考えたら一般道の走行なら問題ないだろうが、ABSなど安全性も含めた総合性能では油圧式ディスクに太刀打ちできなくなったドラムブレーキ。近年はネオクラシック系のバイクが流行しているが、デザイン的にマッチしてもさすがにドラムブレーキの装備は無理なようだ。

現時点では原付二種クラスのリヤブレーキや、原付一種では前後にドラムブレーキを装備する車種もあるが、これらも近い将来には姿を消すのだろうか……。

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みんなのコメント

57件
  • ドラムはロックし易いけど、基本的な制動力は十分なんですよ。
    昔は原付でわざとロックさせて後輪滑らせて遊んでた。
  • えっ?今も125cc以下のスクータータイプってリアはドラムのほうが多いのでは?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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