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GT40の勇姿を重ねて デ・トマソ・パンテーラ アメリカンV8の清楚なプレL 後編

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GT40の勇姿を重ねて デ・トマソ・パンテーラ アメリカンV8の清楚なプレL 後編

リラックスして高速道路を流せる

フォードは、普段使いしやすい特性をデ・トマソ・パンテーラで重視した。ライバルに想定したランボルギーニやフェラーリとは、この点でも異なっていた。

【画像】5.7L V8の清楚なプレL デ・トマソ・パンテーラ 同時期のイタリアン・エキゾチック 全149枚

それは、パッケージングに表れている。プッシュロッド式のV8エンジンは比較的コンパクトで、ボディ後方にはランボルギーニ・ミウラへ匹敵する容量の大きな荷室がある。

オーバーヘッドカムとは違い、ヘッドは小さい。カバーパネルの下へエンジンが問題なく隠れるほど。荷室のフロア下には、トランスミッションが伸びている。

この頃らしい肉厚なタイヤを履き、しなやかなサスペンションが組み合わさり、乗り心地は見た目の印象を覆すほど優しい。市街地ではやや硬めだが、長時間の運転に耐えられそうだ。

ギア比は高く、トップに入れると110km/hを2600rpmでまかなえる。リラックスして高速道路を流すこともいとわない。

車内環境も、1970年代のモデルとして考えれば優秀。エアコンが装備され、涼しい風がダッシュボードの高い位置から吹き出てくる。

インテリアを観察すると、コスト削減の努力を発見できる。誕生から日が浅いブランドの量産モデルとして考えれば納得できるが、この点も同時期のライバルとは異なる部分だ。

ダッシュボードのスイッチ類は、肩身が狭そうに縦に積み重なっている。パワーウィンドウのスイッチは、平行に並んでいない。ラジオはベッカー社製の既製品で、メーカーの想定から90度傾けて搭載されている。

見た目は初期のオリジナルが1番

確かに妥協は少なくない。それでもブランドを立ち上げたアレハンドロ・デ・トマソ氏は、低価格にエキゾチック・グランドツアラーを提供するという、フォードの願いを叶えた。

クラシックカーでは珍しくないことだが、パンテーラの見た目は初期のオリジナルが1番美しい。新たな法律へ対応させたり、時代のトレンドを追って手が加えられていない。作り手の意思が、最もストレートに表現されている。

今回のオレンジのクルマは、通称「プレL」と呼ばれる1971年から1972年に作られた最初期型。ボディ後方で大きくフェンダーラインが膨らんだ後期のパンテーラとは異なり、細身の金属製バンパーを備え、ボディラインの構成は清楚と表現してもいい。

スタイリングを手掛けたのは、イタリアのギア社に在籍していたトム・ジャーダ氏。ウェッジシェイプのフォルムは、1970年代の最先端にあった。

マルチェロ・ガンディー氏が描いたランボルギーニ・カウンタックや、ジョルジェット・ジウジアーロ氏によるBMW M1と並んでも、新鮮さでは負けていなかっただろう。Cピラー付近の造形は、ファストバックのフォード・マスタングと重なるようにも見える。

更に初期型の場合、リアタイヤは幅が細くボディの内側へ明らかに引っ込んでいる。トレッドの狭さが、軽量な車重と相まって、扱いやすい操縦特性を生んでいるようだ。動的能力の限界を探らなければ。

繊細な操縦性の美しいグランドツアラー

開発期間が短かったことによる弱点も存在した。ドライビングポジションは、人間工学的にベストとはいえない。主要なメーター類は、不自然にオフセットしたステアリングホイール・リムで隠れてしまう。使い勝手を邪魔するように。

高速域では、ステアリングホイールの操舵感が不安を伴うほど軽くなった。冷却系は、正常な状態でも充分とはいえなかった。

1972年には、マイナーチェンジを受けた北米向けのパンテーラ Lが発売される。大きなフロントスカートが追加され、フロントタイヤの安定性が高められた。全体的な製造品質の向上にもデ・トマソは取り組み、評価は改善していった。

同時に、美観を損なう大きなバンパーが与えられ、車高は高くなり、排気ガス規制に対応したパワーで劣るV8エンジンが北米仕様には積まれた。初期型と比較して、見た目や走りで劣ることは否定できなかった。

デ・トマソ・パンテーラは、動力性能を徐々に高めながら1993年まで販売が続けられている。だが、歴代で最もエレガントなモデルは、アレハンドロのビジョンが直接的にカタチになった最初期型だろう。

シボレー・コルベットのように、日常的に乗ることを許してくれる。繊細な操縦性を備えた、アメリカとイタリアの合作による、美しいミドシップ・グランドツアラーだ。

協力:ヒュー・チョムリー氏

デ・トマソ・パンテーラ(1971~1993年/欧州仕様)のスペック

英国価格:6578ポンド(新車時)/10万ポンド(約1610万円)以下(現在)
販売台数:7260台
全長:4241mm
全幅:1803mm
全高:1092mm
最高速度:259km/h
0-97km/h加速:5.8秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:1426kg
パワートレイン:V型8気筒5763cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:334ps/5400rpm
最大トルク:44.8kg-m/3600rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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みんなのコメント

1件
  • アメリカンとイタリアンって最高に相性良いんだよね。またこんなの出てこないのかなぁ・・・。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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