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【悩ましい8代目の変化】フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5 TSIへ英国試乗 前編

掲載 更新 11
【悩ましい8代目の変化】フォルクスワーゲン・ゴルフ1.5 TSIへ英国試乗 前編

新しい表情を獲得したフロント・デザイン

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)

【画像】8代目ゴルフ GTIと純VEのID.3も 全98枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


8代目へと生まれ変わったフォルクスワーゲン・ゴルフ。ファミリー・ハッチバックの市場をリードし、カテゴリーを定義してきたモデルだ。われわれの期待も、かなり高い。

最新のゴルフは、先代の7代目と同じプラットフォームをアップデートして用いている。ボディサイズも大きくは変わらない。エンジンやトランスミッションも、先代の改良版を搭載するグレードが存在する。

かといって、単純な先代の焼き直しではない。8代目のゴルフは明確に、良くも悪くも、変化している。

ボディの見た目やインテリアの作り込み、ドライビング体験。ゴルフがはらむリスクは大きい。多くのユーザーが実際に運転し、ネットを通じてさまざまな評価が下されるはず。ソーシャルメディア時代に生まれたゴルフだ。

控えめなデザインとモデルの位置づけは変わらないが、欧州ではクルマの中心的な存在ではなくなるだろう。過去数十年に渡って、力強く欧州大陸で販売台数を稼いできたモデルだったのだが。

8代目ゴルフは、4代目からワッペングリルを得た5代目への進化以上に、大きなスタイリングの変化が与えられている。最近、市街地で新しいゴルフだと目を奪われたのはいつだろう。

クルマのプロポーションは従来どおりゴルフ。特にリア周りのデザインは、ゴルフらしい。一方で顔となるフロント周りは、新しい表情を獲得している。

トーションビームのリアサスに130ps

過度に大きく感じられたヘッドライトと、背の高いフロントグリルをまとっていた世代もあったが、8代目ではよりワイドでスリムなデザインへと置き換わった。一見すると、あまりフォルクスワーゲンらしいデザインではない。慣れるまで、少しの時間が必要かもしれない。

英国市場に投入されるエンジンは、英国のゴルフユーザーには見慣れたラインナップ。ガソリンエンジンは、109psを発揮する1.0LのTSI 3気筒ターボから、1.5LのTSI 4気筒ターボまで、何段階かが用意される。

ディーゼルエンジンは、2.0LのTDIで、114psと150psの2種類が導入される。電圧48Vのマイルド・ハイブリッドを搭載したモデルは、1グレードのみ。150psの1.5LガソリンエンジンとDSGトランスミッションの組み合わせで、eTSIと呼ばれる。

英国では、追ってゴルフGTEと呼ばれるプラグイン・ハイブリッドも導入予定。続いてGTIにGTI TCR、GTD、Rのエンブレムを付けたグレードも追加されるはず。

すでにドイツでは、8代目ゴルフの上級グレードを試乗している。四輪ともに独立サスペンションで、アダプティブダンパーと可変ステアリングを装備していた。

英国で試乗する右ハンドル車は、エントリー・グレードトリム。16インチのホイールに、通常の固定式ダンパーが付いている。リア・サスペンションはトーションビーム式で、搭載されるエンジンは130psの1.5L TSIだ。

デジタル化が一気に進んだダッシュボード

代々フォルクスワーゲン・ゴルフを乗り継いできた経験豊かなドライバーは、デジタル化が一気に進んだダッシュボードをどう受け止めるだろうか。簡単に押せるボタンの数は少ない。メーターパネルは、全面モニター式になった。

このインテリアの違いは、先代との差別化を図っている部分でもある。デジタルに対して、アレルギーを持っている人もいるかもしれない。ただし、タッチモニターが並ぶインテリアは、筆者好みだ。

サンルーフの開閉からヒーターの温度を下げるまで、すべてをタッチモニターで操作するテスラのデザインとは違う。使いやすさは、慎重に検討が重ねられたことが伺える。フォルクスワーゲンのゴルフが強みにしてきた馴染み深い部分も、わずかには残っている。

エアコンの温度とオーディオの音量という、頻繁に操作する機能へのインターフェイスとして、専用のタッチセンサーが用意されている。これが使いやすい。

特に音量の調整は、タッチセンサーを左右にスワイプするだけ。モニターからメニューを掘り下げる必要はない。

タッチモニター式のインフォテインメント・システムも、使用頻度や重要度の高いメニュー項目は、モニター下部に用意されたショートカットボタンから簡単にアクセスできる。ホーム画面からナビへの切り替えも、一発で済む。

コストの制限を感じさせる車内

モニター式のデジタルメーターは、表示は鮮明でレイアウトの変更が可能。過度に画面を混雑させることなく、必要な情報を追加することができる。

スマートフォンのワイヤレス充電機能と、アップ・コネクトと呼ばれるコネクテッド機能も、英国では標準装備。エントリーグレードの試乗車にも搭載されていた。

ソーシャルメディア時代のスマートフォン世代は、恐らくこのクルマを気に入るだろう。最初は馴染めない人でも、社会の変化とともに、慣れていくはず。

ゴルフが備えてきた、インテリアのスマートで肉厚な素材感や小物入れの処理、内装パネルのフィッティングなどは、気分を良くしてくれるものだった。だが、今回のゴルフでは充分な予算は回されていないようだ。

先述の、デジタル技術へコストが投入されたのだろう。ドアを閉めた時の音は重みを感じにくいし、インテリアトリムも、もっと費用を投じることができたはず。

ただし、メルセデス・ベンツAクラスやアウディA3など、プレミアム・ブランドのハッチバックと比べれば、知覚品質で劣るという程度。本来のフォルクスワーゲンの位置を考えれば、妥当だろう。

車内空間と荷室容量は、ブランドを問わず充分な競争力を持っている。このクラスで最も実用性が秀でているわけではないが、8代目ゴルフのパッケージングは素晴らしい。

確認はこれくらいにして、後編では英国の一般道へ出てみよう。

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