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主張しすぎない最高 BMW M5(E34型) 英国版クラシック・ガイド M1譲りの直6 後編

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主張しすぎない最高 BMW M5(E34型) 英国版クラシック・ガイド M1譲りの直6 後編

満ち足りたドライビング体験に浸れる

BMW M5のドライバーほど、満ち足りたドライビング体験に浸れる人はいないかもしれない。本域まで気張れば望外な楽しさが待っていて、穏やかな気持ちなら1日中でも高速道路を家族と一緒に走り続けられる、夢見心地の快適性も味わえる。

【画像】主張しすぎない最高 E34型BMW M5 同時期のE30型M3 現行のM3、M4、M5、XMも 全120枚

特別仕様に限らず、E34型M5はどれもがタイトでソリッドな走りを披露する。前期型でもパワフルに感じられるのが正解。そんな印象でなければ、どこかに問題を抱えていると考えていい。

S38型の直列6気筒エンジンは、オーバーヒートした過去がないか確かめたい。ウオーターポンプやサーモスタット、カップリングファンなどの不調が原因となる。ヘッドガスケットの抜けにも注意したい。

内部摩耗の状態も確認すべき部分。エンジンオイルの消費が多くないか、ラジエタークーラントが漏れていないか、排気ガスに過度な白煙が混ざっていないか、その兆候を調べる。

スチール製のエグゾースト系は錆びる。パワーが足りない場合は、プレナムチャンバー内のバキューム・フラップの不具合かもしれない。

後期の3.8Lエンジンは、前期が採用していたディストリビュータから、気筒毎のダイレクトコイルへ変更されている。吸気バルブが拡大され、デュアルマス・フライホイールを獲得し、圧縮比が10:1から10.5:1になり、最高出力を高めている。

トランスミッションの耐久性は高くない

英国に残存する殆どのE34型M5の場合、トランスミッションはリビルドか交換されているようだ。過去の整備記録を振り返るのと同時に、試乗時はクラッチペダルを踏んでニュートラル状態にし、レイシャフトの振動を確かめる。

変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュは、1速と2速が特に弱い。異音や走行中のギア抜けがないかも確認したい。

前期型では5速マニュアルだが、1994年以降は6速マニュアルにアップデートされている。6速の方が価値は高いが、ギア比が長い。アウトバーンを高速で巡航走行するような使い方へ適している。

リアのリミテッドスリップ・デフも、定期的なメンテナンスが必要。異音や振動がないか確かめたい。タイヤの偏摩耗は、サスペンション・ブッシュの劣化が原因なことが多い。ステアリングラックはM5の専用品だ。

走行中に凹凸を越えてタイヤがバタバタと暴れる場合は、ショックアブソーバーの劣化を疑う。後期型に採用されたエレクトリック・ダンパー・コントロール(EDC)は、ポーラインドのナゲンガスト(Nagengast)社がリビルドしてくれる。

1994年には、Mパラレルと呼ばれるスタイリッシュなアルミホイールが追加されている。人気のアイテムだ。

上級サルーンでありながら、欧州仕様の場合、エアコンやパワーシート、レザーシートなどはオプション。クロームメッキ・トリムをブラックに変更することも可能だった。

購入時に気をつけたいポイント

ボディとシャシー

E34型M5の天敵といえるのがサビ。プラスティック製トリムの裏側の状態は確かめたい。フロントフェンダーのホイールアーチやパネルの端部、フロントバルクヘッド、フロントガラスの周辺、車内のフロア、ジャッキアップ・ポイントも弱点。

サンルーフ周辺やリアフェンダーまわり、給油リッド、サイドシルなどもチェックポイント。確認しにくいが、サスペンション・ブッシュ周辺や、リアダンパーのセルフレベリング機能用パイプ、テールライト、トランクリッドなども錆びがち。

エンジン

オリジナルはスーパーカー用のツインカム・24バルブユニットだから、3万2000km毎にバルブクリアランスを確認するなど、丁寧な整備を施したい。維持状態が適正なら、オーバーホールまで30万kmくらいは耐えられる。

エンジンオイルの減り、排気ガスの白煙、エンジンのノッキング、ウオーターポンプからの液漏れなどに注意したい。リビルドは高く付く。

英国にある一部の例では、同時期の5シリーズのエンジンへ載せ替えられていることも。本来の、M88由来となるS38ユニットか確かめる。

サスペンション

後期型の電子制御EDCサスペンションは故障しがち。修理は可能だが、安くないためシステム自体がキャンセルされている場合がある。ケーブル類が残っているか確かめたい。ブッシュやマウントの状態も。

トランスミッション

シンクロメッシュが機能しているか、試乗で確認する。耐久性は高くなく、現存する例はリビルド済みが殆どだという。振動が出ていないか、走行中にギアが抜けないかもチェックポイント。エンジンの仕様と合致するユニットか、番号も調べたい。

インテリア

フロントのレカロシートはM5用の専用アイテム。サイドボルスターが高く、表皮が摩耗しやすい。パワーシートの場合は、モーターが動くか試したい。

ABS警告灯などの点灯状態や、ワイパーとヒーター、ヘッドライト、サンルーフ、エアコンなどの電装品が正常に動くか確認する。ツーリングの場合は、リアのワイパーも。

BMW M5(E34型)のまとめ

近年になって、北米や欧州市場ではE34型M5の価格が上昇中。興味をお持ちなら、大きな影響を受ける前に早めの決断をした方が賢明だろう。

理想といえるのは、直近までしっかり乗られていて、整備費用も惜しまれていない個体。珍しい特別仕様や、短い走行距離より重要な要件といえる。

クラシックなドラバーズ・サルーンとして、間違いなく運転するのが楽しいはず。コンディションの優れたM5を選んで、存分に謳歌したいところだ。

良いトコロ

希少性が高く、マニアにとっては伝説的なモデルの1つ。取引価格が下がることは考えにくい。英国なら、BMWを得意とするガレージは少なくなく、BMW自体もMモデルに対し手厚いサポートをしている。

良くないトコロ

長年ぞんざいに扱われてきたE34型M5は少なくない。サビの状態や事故歴、過去の整備が適正かどうか、予め丁寧に確かめたいところ。

BMW M5(E34型/1988~1995年/欧州仕様)のスペック

英国価格:4万8950ポンド(1992年時)
生産台数:8344台(前期)/3910台(後期)
全長:4720mm
全幅:1751mm
全高:1412mm
最高速度:252-273km/h
0-97km/h加速:5.4~6.4秒
燃費:5.7-10.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1673-1786kg
パワートレイン:直列6気筒3535/3795cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:320ps/6900rpm-345ps/6900rpm
最大トルク:36.5kg-m/4750rpm-40.7kg-m/4750rpm
ギアボックス:5速・6速マニュアル

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