現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 前編

ここから本文です

ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 前編

掲載 更新 1
ロータス・エリーゼ シリーズ1かシリーズ2か ヘセルを救った傑作スポーツ 前編

公道で安全に味わえるエリーゼの能力

執筆:Jack Phillips(ジャック・フィリップス)

【画像】ロータス・エリーゼ シリーズ1と2 派生モデルのエキシージとエヴォーラも 全60枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


小さく短いドアを開かずとも、ロータス・エリーゼの走りが想像できる。ステアリング・フィールには微塵の課題もない。スポーツカーというより、機敏なレーシングカートのように操れる。一度乗れば、忘れられなくなるような体験だ。

あまりに流暢にコーナーを旋回するあまり、ストレートを疾走したいと感じるスキすらない。スペックシートに並ぶ数字以上に、身体をシートに沈めステアリングホイールを握れば、遥かに速く感じられる。

筆者がロータス・エリーゼを初めて運転してから25年が経つ。小さなスポーツカーは、すべてのライバルを凌駕するほどの輝きを放っていた。今改めて、その輝きは増しているように感じる。

謙虚なスペックも、エリーゼの神秘性を生み出している要素の1つ。平均的なドライバーにとって、圧倒されるほど大きな数字が並んでいるわけではない。小さなボディに巨大なパワーを押し込んだ、というには控えめ過ぎる。

よりパワフルなクルマが、より速いとは限らない。ドライバーに対して冷徹になり、可能性を充分に引き出すことも難しくなる。だがエリーゼなら、未知のコーナーや路面状況でも、アクセルペダルのストロークを使い切れる。

どんなカーブでも、安全にドライバーが遊べる。近所の短い区間でも。

現代のスポーツカーで限界領域を探ろうとするなら、サーキットへ持ち込まなければ難しい。しかしエリーゼなら安全に公道で味わえる。誕生から25年間、誰もその水準へ迫ることはできなかった。

極めて正直なロードホールディング感

ロータスの本拠地、ヘセルでエリーゼが生み出される時代は間もなく終わる。エリーゼは、モデルライフを見事にまっとうした。スポーツカーのゲームチェンジャーとして活躍し、ロータスを救った。

1990年に前輪駆動として生まれ変わったM100型エランは、当初の期待とは裏腹に、ファンの心を充分に掴むことはできず、ロータスの経営を不安定にさせた。その窮地を救ったクルマこそ、エリーゼだ。

1994年、ブガッティがロータスの経営権を取得。エランは一時復活するものの、最終的にキアへ受け渡される。ロータスはデザイナーのジュリアン・トムソン氏の力を借り、英国スポーツカー・ブランドとして復活に再び挑むこととなる。

ロータス・エリーゼが発表されたのは、1995年のフランクフルト・モーターショー。ブガッティはイタリア・デザイナーの協力を仰ぎ、次期モデルの提案を密かに進めるが、ロータス社内で練られたエリーゼの仕上がりは見事だった。

エヴォーラと合わせれば、ロータスが製造した台数の半数以上の注文を集める、大成功を導いた。ドライバーの支持を集めた理由は、想像に難くない。

エリーゼのロードホールディング感は極めて正直。指先やつま先と、シャシーや路面とのつながりを、電子的なトリックや過剰な反応が邪魔することは一切ない。ドライバーが操作した通りに速く、気持ちイイ。

思わず笑顔になり、さらに上を求めたくなる。より長く運転したいと思えるし、より多くのコーナーを攻めたいと思える。スキルを磨きたいとも。

基本へ立ち返った設計に、軽さを加える

ロータスを救ったスポーツカーは、イノベーションで支えられつつ、基本に立ち返った設計が施されている。一読すると、矛盾しているようだけれど。

設計に関わったのは、アルミニウムの押出成形や接着構造のパイオニアといえる、技術者のリチャード・ラックハム氏。この構造は軽量に仕上がり衝突安全性を確保できるという、大きなメリットがあった。

グラスファイバー製のボディをマウントする設計は、クラッシャブルゾーンを生む役目も果たしている。驚くほど見事に機能している。

マイナス点として残ったのは、高く幅の広いシャシーレールがボディサイドに延び、足を大きく持ち上げて乗り降りする必要があること。優雅に乗る手順を覚えれば、美しいアルミ構造の上部に取り付けられたペダルへ、自然につま先が導かれる。

そのレイアウトは完璧。シフトダウン時のヒール&トウを練習する環境が、標準装備といえる。

サスペンションのマウント部分も、押出成形のアルミ材。ステアリング・コラムのブラケットも同様だ。

インテリアは、車重を抑える目的のために極めて質素。簡素なドアパネルが付き、少しのパッド類が施されている。発売当初からカテゴリーの中心的存在となり、多くのリスペクトを集めてきた理由を体現している。

比べると、初代マツダMX-5(ロードスター)ですら豪華に感じる。エリーゼが忠実に守ったことは、ロータスを創業したコリン・チャップマン氏の「軽さを加える」という哲学だった。

明確に意図的なコクピットの雰囲気

シンプルなステアリングホイールは、初代エランから借りてきて、現代的に手を加えたかのよう。浅いダッシュボードのベースにも、フラットなアルミが露出している。

肉薄なバケットシートは身体を包んでくれるが、ほとんどクッションがない。1990年代のプジョーやオペルに見られるようなスイッチ類が並んでいる。ボディの見た目と同様に、コクピットの雰囲気は明確に意図的。エリーゼに惹き込まれてしまう。

シートは前後にスライドするが、背もたれはリクライニングできない。高いサイドシルに包まれ、エリーゼと一体になったような感覚がある。お尻は路面から20cmくらいという近さだ。

キーを捻って個性的なエンジンサウンドが聞こえ出すと、不思議と落ち着いた気持ちになる。気持ちを鼓舞するものでも、耳をつんざくものでもない。

メカノイズを確かめながらギアを1速に入れ、小さなクラッチペダルを踏む力を緩める。アクセルをほんの数cm倒す。ドライバーズシートからの視界は広々。無垢なメーター類が目線の下に掛かる。

初期のエリーゼのコードネームはM111。モデル名は、当時のブガッティ・オーナー、ロマーノ・アルティオーリ氏の娘、エリサが由来となった。そんなエリーゼ・シリーズ1は、誕生直後から多くの派生モデルが展開される。

この続きは中編にて。

こんな記事も読まれています

新型エルグランド大胆妄想!! アルファードに勝つために必要な性能と価格とは?
新型エルグランド大胆妄想!! アルファードに勝つために必要な性能と価格とは?
ベストカーWeb
なぜ「SLS AMG」は比類なきスポーツカーだったのか? メルセデス・ベンツとAMGが注いだコスト度外視の革新的技術とは
なぜ「SLS AMG」は比類なきスポーツカーだったのか? メルセデス・ベンツとAMGが注いだコスト度外視の革新的技術とは
Auto Messe Web
MotoGPスペインGPプラクティス|王者バニャイヤ、レコード更新し初日最速。マルク・マルケス3番手
MotoGPスペインGPプラクティス|王者バニャイヤ、レコード更新し初日最速。マルク・マルケス3番手
motorsport.com 日本版
トヨタ・ランドクルーザーの中核モデル「250」シリーズが発売。特別仕様車のZX“First Edition”とVX“First Edition”も設定
トヨタ・ランドクルーザーの中核モデル「250」シリーズが発売。特別仕様車のZX“First Edition”とVX“First Edition”も設定
カー・アンド・ドライバー
ボルボ「XC40」仕様変更&プレミアムな装備を採用した特別限定車を発売
ボルボ「XC40」仕様変更&プレミアムな装備を採用した特別限定車を発売
グーネット
日産 新エネルギー車のコンセプトカー4車種をお披露目 北京モーターショー【動画あり】
日産 新エネルギー車のコンセプトカー4車種をお披露目 北京モーターショー【動画あり】
グーネット
ホンダ 新EVシリーズ第2弾 新型「e:NP2」「e:NS2」発表 北京モーターショー
ホンダ 新EVシリーズ第2弾 新型「e:NP2」「e:NS2」発表 北京モーターショー
グーネット
エンジン版と共有部品ナシ! ポルシェ・マカン・エレクトリックへ試乗 ちゃんと「らしい」 航続500km以上
エンジン版と共有部品ナシ! ポルシェ・マカン・エレクトリックへ試乗 ちゃんと「らしい」 航続500km以上
AUTOCAR JAPAN
3時間で争われるスーパーGT第2戦富士の持ち込みタイヤ数と義務ピット回数が発表。モラルハザードは1名が適用
3時間で争われるスーパーGT第2戦富士の持ち込みタイヤ数と義務ピット回数が発表。モラルハザードは1名が適用
AUTOSPORT web
F1、2025年に向けてポイントシステム変更を検討。12位まで対象を拡大か
F1、2025年に向けてポイントシステム変更を検討。12位まで対象を拡大か
AUTOSPORT web
「30万円」の大幅値下げ!? 鮮烈レッドの「新型セダン」発表! 爆速の「超高性能モデル」も新設定! 今あえて「値上げラッシュ」に逆行した理由とは
「30万円」の大幅値下げ!? 鮮烈レッドの「新型セダン」発表! 爆速の「超高性能モデル」も新設定! 今あえて「値上げラッシュ」に逆行した理由とは
くるまのニュース
急拡大! BYDの高級車ブランド「方程豹」 無骨SUV&華麗スポーツカー発表
急拡大! BYDの高級車ブランド「方程豹」 無骨SUV&華麗スポーツカー発表
AUTOCAR JAPAN
約20年ぶりのBTCCフル参戦に臨む元世界王者ロブ・ハフ「カローラはかなり快適だ。でも忙しいね!」
約20年ぶりのBTCCフル参戦に臨む元世界王者ロブ・ハフ「カローラはかなり快適だ。でも忙しいね!」
AUTOSPORT web
アウディの電動SUV『Q6 e-tron』に105mm長い「L」
アウディの電動SUV『Q6 e-tron』に105mm長い「L」
レスポンス
においを出すSUVだと…? ホンダの新SUVは至れり尽くせり? 中国でEV攻勢へ
においを出すSUVだと…? ホンダの新SUVは至れり尽くせり? 中国でEV攻勢へ
乗りものニュース
「市販します」トヨタのEV“bZ”シリーズ新型2車種 Z世代向け&ファミリー向け スタイルはっきり分ける
「市販します」トヨタのEV“bZ”シリーズ新型2車種 Z世代向け&ファミリー向け スタイルはっきり分ける
乗りものニュース
三菱「新型“精悍”コンパクトSUV」発表! 斬新マスクがカッコイイ! 新型「ASX」マイチェン版 欧州で発売へ
三菱「新型“精悍”コンパクトSUV」発表! 斬新マスクがカッコイイ! 新型「ASX」マイチェン版 欧州で発売へ
くるまのニュース
セゾン自動車火災保険、商号を「SOMPOダイレクト」に変更
セゾン自動車火災保険、商号を「SOMPOダイレクト」に変更
レスポンス

みんなのコメント

1件
  • 昨日、FMの「福のラジオ」でこのクルマの話題が出てましたね。
    福山雅治がリスナーの投稿に応える形で、他にも70スープラやスカイラインGT-Rについても話していました。
    多くのリスナーがいるこの番組を通して、もっとたくさんの人にクルマ(旧車)のこと、交通問題、クルマの税金、環境問題などに関心を持ってもらえたらいいなと思いました。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

662.0777.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

288.0910.0万円

中古車を検索
エリーゼの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

662.0777.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

288.0910.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村