WAKUI MUSEUM Part1
ワクイミュージアム パート1
世界有数のクラシック・ベントレーコレクション。ワクイミュージアム探訪記(第1回)
稀少なベントレー&ロールス・ロールスを多数収蔵
日本国内に存在する自動車博物館を巡り、その魅力をお伝えするこの連載。第1回目は埼玉県加須市にあるワクイミュージアムをご紹介します。
世界には、国、自治体、メーカーが管理するパブリックなものから、個人が設立したプライベートなものまで、様々な自動車博物館が存在する。その中において、日本を代表するプライベートミュージアムであるワクイミュージアムは、ロールス・ロイスとベントレーに特化したミュージアムとして世界的に見ても有数の内容と規模を誇っている。
東北自動車道の加須ICを出てわずか350mというアクセスのいい同ミュージアムは、約300坪の敷地をもち、90坪の展示ドームを中心に展開。我々が訪れた時にはドーム内にベントレー6台、ロールス・ロイス7台が展示されていたが、この他にも数台(中には販売車両もある)が停められていたほか、敷地奥の芝生の庭園では、毎週テーマを変えた企画展示が行われており、今回はマリナー・パークウォード製のオープンモデルが3台並べられていた。
もちろん、そのどれもが素晴らしいコンディションに保たれた由緒あるモデルばかりだ。それだけでも十分に価値はあるのだが、ドームの前にテーブルと椅子を並べ、来場者が語りあう空間が用意されるなど、その雰囲気は堅苦しいものではない。また展示車の周りに無粋な柵などがなく、間近で見ることができるうえ、馴染みの薄いクラシック・ロールス・ロイス&ベントレーについても、キュレーター、スタッフの皆さんに聞けば、各個体のヒストリーや見どころなどを詳しく解説してもらえるアットホームな雰囲気に満ちているのも、ワクイミュージアムの特徴といえる。
世界でも稀有なミュージアムに込められた情熱
その名前に象徴されるようにワクイミュージアムは、館長である涌井清春氏の情熱と、比類なきコレクター魂によって作り上げられたものだ。
小学生の頃から蝶の採集と標本収集が趣味だったという涌井氏。サラリーマン時代には海外にまで採集に出かけたというが、山奥まで採集に行くためにと乗り始めたモーターサイクルに開眼し、イギリス製のクラシック・バイクをコレクションするようになった。その後必然的に興味は4輪に移行。当初はクラシック・メルセデスに魅せらせていたものの、会社を辞め訪れたアメリカの地で運命的な出会いを果たすことになる。
それがロールス・ロイスとベントレーだった。
そして1960年型のベントレーS2を手に入れたのをきっかけにコレクションをスタート。カルフォルニアにあったロールス・ロイス&ベントレーを扱うディーラーを買収して自身のショップである“くるま道楽”を1988年に創業。以来、今日まで550台以上のロールス・ロイス&ベントレーを扱ってきた。その過程で多くのクルマに出会い、経験とネットワークを広げていった涌井氏は15 年ほど前に運命というべき1台に巡り合うことになる。
それがワクイミュージアムのアイコン的存在である1924年型ベントレー3リッター・スピードモデル“XT7471”だ。戦後、吉田茂の側近として活躍したことで知られる白洲次郎がケンブリッジ大学留学時に購入したシャシーナンバー653そのものである。
このクルマがイギリスに存在していることを涌井氏に伝えたのは、カーグラフィックの創始者である故・小林彰太郎氏だった。そして半年以上にわたる交渉の末、“XT7471”を手に入れた涌井氏は、長年の夢であったミュージアムの設立に向け動き出す。そこにはこんな想いが込めらえていた。
「いずれ自分がこの世から居なくなっても、自動車は生き残る。だから貴重なクルマを手に入れたら“一時預かり人”として、いつも良い状態に保ち、いつでも見られる、いつでも乗れるようにしておき、然るべき時がきたら次の人に引き継ぐ義務があるんです」
その想いに小林氏も賛同し「いつでも動かせるように動態保存すること」を提唱し、資料の提供など様々な協力をしてくれたという。
こうして2008年の夏にワクイミュージアムはオープンに漕ぎ着けた。以来、基本的に土日の11時から16時の開館ではあるものの、事前の予約も必要なく、入場無料で開放し続けているのは「ミュージアムは文化を継承する社会的な責任がある」という涌井氏の“一時預かり人”としての強い覚悟があるからに他ならない。
ペブルビーチに招待された稀少モデルも展示
2019年8月、涌井氏は世界的な自動車コンクールであるペブルビーチ・コンクール・デレガンスにクリクルウッド時代の1921年型ベントレー3リッターby Gairn(ゲイルン)で参加した。このクルマもミュージアムの“顔”として開館時から展示されている1台なのだが、実は新車当時に架装されたオリジナルボディをもつベントレーとしては世界最古という、実に貴重なモデルなのだ。そのクルマに対し、ベントレーの創業100周年を祝う記念すべき年のコンクールに合わせて主催者が招待状を送ってきたという事実からも、ワクイミュージアムの存在が世界的なものであることがお分かり頂けるだろう。
この他にも1928年のル・マン24時間レースで優勝を飾った4 1/2リッター“オールド・マザー・ガン”や、現代のコンチネンタルGTの精神的なルーツというべき1955年型Rタイプ・コンチネンタルなど、ベントレーの歴史を語る上で欠かせない代表的なモデルが顔を揃えているほか、隣接する“ワクイミュージアム・ヘリテージ”で販売されている貴重なクラシック・ベントレーが顔を見せることもある。
いずれにしろ、その所蔵車のヒストリー、質の高さなど、世界的に見ても屈指のベントレー・コレクションであることに異論の余地はないだろう。以下にそのコレクションの一部を紹介する。
1924 Bentley 3Liter Speed Model
ケンブリッジ大学留学中の白洲次郎が、1924年にベントレー・ボーイズの一人でこの年のル・マン・ウィナーでもあるジョン・ダフのディーラーから購入した3リッター・スピードモデル、シャシーナンバー653。現在と同じ“XT7471”のレジスターナンバーをつけたこのベントレーで、白洲次郎は盟友ロビンとともに12日間にわたるヨーロッパ大陸縦断を果たした。白洲次郎の帰国後はベントレー・オーナーズ・クラブのメンバーに引き継がれ、長らくイギリスに保存されてきたが、2003年に涌井氏が購入。日本の地を踏むこととなった。
1927 Bentley 4 1/2Liter by Vanden Plus “Old Mother Gun”
1927年にベントレー・ボーイズの一人、ウルフ・バーナード大佐が購入した4 1/2リッターの1号車で、同年のパリ・グランプリやブルックランズなど数回のレースで優勝。1928年のル・マン24時間レースではウルフ・バーナードとバーナード・ルービンの手で見事に総合優勝を果たしたほか、翌1929年のル・マンでも総合2位となった輝かしいヒストリーの持ち主である。
1929 Bentley 4 1/2Liter Blower
4 1/2ブロワーは、1927年に登場した4気筒SOHC16バルブの4 1/2リッターにスーパーチャージャーを装着し175~180hpを発揮したヴィンテージ・ベントレーの最高峰と言われるモデル。これは1928年型4 1/2リッターをベースに、オリジナルスペックのブロワー・ユニットとヴァンデン・プラ製のル・マン・スタイルボディを架装した1台。なんと販売車両でもある。
1937 Bentley 4 1/4 Open Tourer
1936年に発表された4 1/4は、ロールス・ロイスとの合併後に製造された、いわゆる“ダービー・ベントレー”と呼ばれる時代を代表するモデルの1台。4257ccのエンジンはロールス・ロイス25/30HPの直列6気筒OHVをベースにチューン。スポーティなショートシャシーも相まって“サイレント・スポーツカー”と称された。
1950 Bentley Mk VI Saloon by H.J.Mulliner
戦後初のモデルとして1946年5月に発売されたベントレー・マークVIは、新車時からクルー工場製のスチール製スタンダード・ボディを装着した初のモデルでもある。エンジンは吸気がOHV、排気がサイドバルブという特徴的なFヘッドをもつ新設計の4257cc直列6気筒。展示車は一見スタンダードのように見えるが、貴重なH.J.マリナー製のアルミボディをもつ。
1955 Bentley R Type Continental
1952年に発表されたロールス・ロールス&ベントレー時代の最高傑作。直列6気筒Fヘッド・エンジンはマークVIの4.5リッターをチューンし160hp以上を発生。シャシーはマークVI/Rのものをベースとしていた。合計208台が製作されたといわれているが、そのうちの195台はジョン・ブラッチリーのデザインによるH.J.マリナー製のボディが搭載されていた。展示車はアストンマーティン・ラゴンダの会長だったヴィクター・カントレットが長年所有していたもので、イギリス・ハンプトンコート宮殿で行われるコンクール・オブ・エレガンスでクラス優勝を飾った履歴をもつ素晴らしいコンディションの1台である。
REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/前田惠介(Keisuke MAEDA)
【INFORMATION】
WAKUI MUSEUM ワクイミュージアム
住所:埼玉県加須市大桑2-21-1
電話:0480-65-6847
開館時間:毎週土日 11:00~16:00
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