2020年秋(ベストカー予想では10月頃)に、トヨタの新型SUV「ヤリスクロス」が登場するが、2020年2月に登場し、4月度の販売台数ランキングで1位を獲得したベース車「ヤリス」と同じように大ヒットとなるのだろうか?
近年、大人気となっているコンパクトSUVだが、トヨタの販売力という強みはあっても、トヨタにはすでに多数のSUVモデルがあり、「新型ハリアー」が2020年6月に登場するなど、ヤリスクロスに集中するという状況ではない。
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本企画では、トヨタのSUV事情、そしてライバルとの比較をしながら、ヤリスクロスの動向などを考察していく。
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN
【画像ギャラリー】SUVラインナップ充実のトヨタにあってヒットなるか!? ヤリスクロスを詳しくチェック!!
■悲鳴も聞こえた状況から一気に攻勢をかけたトヨタ SUVモデルが充実
もともとSUVは人気のカテゴリーだが、最近はトヨタの新型車投入が活発だ。2010年代の前半までは、販売店から「トヨタはSUVが少ないから、売れ筋はコンパクトカーとミニバンだけ。これでは儲からない」という声も聞かれたが、2016年末に「C-HR」が登場すると流れが変わった。
まずはC-HRが好調に売れて、この販売が下がり始めると、2019年に「RAV4」と「ライズ」が登場している。今ではトヨタの基幹車種になり、プレミアムブランドのレクサスからは、2018年に「UX」も加わった。
今後の展開としては、2020年6月17日に「ハリアー」が正式発売される。2020年秋には「ヤリスクロス」も登場予定で、概要が公開された。
3ナンバーサイズでボリューム感があり、フェンダーなどの筋肉質なフォルムが印象的なヤリスクロス
ハリアーは以前から人気が高く、従来型の保有台数も多い。乗り替え需要も含めて売れ行きには期待が持てる。トヨタの販売店は「新型ハリアーは、さまざまなお客様から注目されている。従来型に加えて、アルファードやヴォクシーなどのミニバン、フォルクスワーゲンゴルフといった輸入車からの乗り替えもある」とコメントした。SUVの注目度が高まった現状も考えると、堅調に売れるだろう。
逆にわかりにくいのがヤリスクロスだ。素性は従来のヴィッツ(ヤリスの前身)をベースに開発されたイストに近いが、「2代目イスト」は販売が低調で4年前に廃止された。従来型からの乗り替え需要は期待できない。
トヨタの販売店は「ヤリスクロスは、内外装の写真とボディサイズなどの数値が公表された程度だから、問い合わせも少ない。それでも日本の需要に合ったコンパクトなSUVだから、好調に売れて欲しい」と述べた。
■2020年秋登場予定のヤリスクロス 兄弟車ヤリスと何が違うのか
ヤリスクロスは車名が示すとおり、基本的なメカニズムはコンパクトカーのヤリスと共通だ。エンジンは、直列3気筒の1.5Lと1.5Lハイブリッドで、1Lは設定されない。4WDは用意され、ハイブリッドは後輪を専用のモーターで駆動するE-Fourになる。
プラットフォームもヤリスと同じで、公表されたホイールベース(前輪と後輪の間隔)はヤリスよりも10mm長い2560mmだが、これは計測方法に基づく違いだ。下まわりは共通化される。
そのいっぽうで相違点もある。ヤリスクロスは、フィットクロスターなどに比べると外観を大幅に造り替えた。ヤリスの外観は、サイドウィンドウの下端を後ろに向けて持ち上げて、ボンネットにも傾斜を付けたが、ヤリスクロスはSUVらしく水平基調だ。
2020年2月の発売以来、販売台数ランキングで徐々に順位を上げ、4月、5月に首位を獲得しているトヨタ「ヤリス」。新型は、しっかりとしたスポーティな走りが特徴だ
ホイールベースは事実上同寸。そのため後席足元スペースは、ヤリスとほぼ変わらないだろう。全長延長の多くは荷室スペースの拡大と思われる
ボンネットも水平に前方へ伸びるため、フロントマスクに十分な厚みがある。フェンダーのホイールアーチ(タイヤが収まる部分)と、ボディサイドの下側には、SUVの定番装備とされるブラックの樹脂パーツも装着した。
現時点で公表されているヤリスクロスのボディサイズは、全長が4180mm、全幅は1765mm、全高は1560mmだ。コンパクトではあるが、全幅は1700mmを超えて3ナンバー車になる。ヤリスに比べると、ヤリスクロスは240mm長く、70mmワイドで、60mm背が高い。SUVのボディスタイルと併せて、外観の存在感も強い。
タイヤサイズは、公表された写真に装着される仕様は18インチ(215/50R18)だ。銘柄はダンロップ・エナセーブEC300+になる。ヤリスのタイヤサイズは14/15/16インチだから、ヤリスクロスはかなり大きい。
インパネのデザインは、基本的なレイアウトはヤリスに似ているが、メーターパネル、細部の造り、装飾は異なる。ヤリスクロスは、ヤリスよりも落ち着いた印象で質感も高い。
インパネの造形はヤリスと同じに見える。メーターは写真では判別できないが同デザインとなるだろう
後席の足元空間は、ホイールベースの数値がヤリスと同じだから、あまり広くない。それでもルーフが高まって室内高にも余裕が生まれ、後席の着座位置を少し持ち上げると、着座姿勢が最適化されて足元にも少し余裕が生じるだろう。後席の居住性は、ヤリスに比べて多少は改善されそうだ。
ホイールベースがヤリスと同じで全長は240mm伸びるから、オーバーハング(前後輪からボディが前後方向に張り出した部分)が長くなる。そうなると荷室面積も少し広がる。
つまりヤリスクロスは、外観がカッコイイSUVであると同時に、内装の質、居住性、積載性も向上してヤリスの上級モデルになる。ヤリスを試乗して、車内の造りや後席の広さに不満を感じた時は、ヤリスクロスを検討するとよい。
■ヤリスクロスは大ヒットするのか!? 強力ライバルたちと比較する
冒頭で述べた通り、今のトヨタにはSUVが豊富に用意される。用途や好みに応じて選び分けられるため、需要が1車種に集中することはない。従ってヤリスクロスが爆発的に売れるとは考えにくいが、今はコンパクトカーとSUVの人気が高い。ヤリスクロスは両方の魅力を兼ね備えるから、相応の人気は得られるだろう。
関心の高い安全装備の衝突被害軽減ブレーキにも注目したい。交差点を右折する時は、ヤリスと同じく、直進してくる対向車を検知して衝突被害軽減ブレーキを作動させる。右左折時に横断歩道上の歩行者を検知することも可能だ。
車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールは、ヤリス以上に進化する。ヤリスはパーキングブレーキがレバー式だから、追従速度が30km/h未満に下がると解除されるが、ヤリスクロスは電動式だ。
停車したあと、発進までの時間が長引いた時には自動的にパーキングブレーキを作動させるから、停車状態まで含んだ全車速追従型になる。ヤリスクロスは、クルーズコントロールの使用頻度が高いユーザーにも推奨できる。
そこで気になるのが価格だ。ヤリスクロスのライバル車は、コンパクトSUVの人気車とされるホンダ「ヴェゼル」で、燃料タンクを前席の下に搭載した。そのために後席と荷室が広い。仮にヤリスクロスの価格が同程度の装備を採用したヴェゼルよりも高まると、割高感が生じてしまう。ヤリスクロスは若干安く抑えるだろう。
2019年1月に1.5L VTEC ターボエンジンを搭載した「ツーリング・ホンダセンシング」を追加したホンダ「ヴェゼル」。後席と荷室はライバルに比べ広い
ヴェゼルの2WDの価格は、1.5Lノーマルエンジンを搭載する「X ホンダセンシング」が220万5093円、「ハイブリッドX ホンダセンシング」は258万6018円だ。そうなるとヤリスクロスの価格は、ノーマルエンジンを搭載する2WDの中級グレードが218万円、ハイブリッドは253万円くらいだ。ベースとなるヤリスの価格は、ノーマルエンジンの「Z」が192万6000円、「ハイブリッドZ」は229万5000円だから、ヤリスクロスは25万円くらい高い。
ちなみに日産の販売店によると、2020年6月24日に延期発売される「キックス e-POWER・X(2WD)」の価格は275万9900円だ。装備も充実するから、価格はヴェゼルハイブリッドの上級グレードになる「Z ホンダセンシング」の276万186円を意識した。ただし感覚的には、キックスが270万円を超えると、若干割高に受け取られそうだ。
5月15日にタイで発表されたビッグマイナーチェンジモデルの日産「キックス」。日本仕様はe-POWER専売となることが決定している
ヤリスクロスは、身内となるトヨタのSUVとも比較される。まずC-HRの価格は、1.2Lターボを搭載するベーシックな「2WD・S-T」が240万円、ハイブリッドの「2WD・S」は273万円だ。ヤリスクロスは、C-HRに比べると約20万円安い。
トヨタ「ライズ」は、全長が4mを下まわる5ナンバーサイズのSUVで、エンジンは直列3気筒1Lターボだ。この「2WD・Z」は206万円だから、ヤリスクロスはライズに比べて約12万円高い。
2020年5月時点で、4.5カ月という納期となっているトヨタ「ライズ」。2020年1月の販売実績は1万220台を達成、登録車のトップセラーとなる人気ぶりだ
このようにヤリスクロスの価格は、トヨタ車同士で比べると、ライズよりは高くC-HRに比べると安い。ライバル比較ではヴェゼルとキックスを少し下まわる。この価格で登場すれば、ヤリスのようなコンパクトカーでは物足りないと感じるユーザーも含めて、堅調に売れるだろう。
2020年4月にヤリスは約1万台を登録した。ヤリスがこの売れ行きなら、ヤリスクロスは2500~3000台、つまりヤリスの25~30%を販売する。今のRAV4やノアと同程度だ。今のトヨタ車では、ポルテ&スペイド、プレミオ&アリオン、プリウスαなどの設計が古く、売れ行きも下がった。ヤリスクロスはこれらの車種を補い、国内販売を支える役割を担っていく。
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