1.5L 3気筒ガソリンターボにリア用モーター
text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
新型コロナウイスルの流行で、ロックダウンされていた英国。そんな中、ランドローバーはレンジローバー・イヴォークと、ディスカバリー・スポーツへ、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)版の追加を発表した。
ランドローバーのマーケティング部門責任者によれば、英国ではすでにPHEV版のイヴォークやディスカバリー・スポーツの注文を、2000台以上受けているという。年末までには、ユーザーへの納車が始まる予定にある。
今回試乗したディスカバリー・スポーツも、PHEV版の1台、P300e Rダイナミック AWD。見た目は従来のディスカバリー・スポーツと変わらないが、中身は大きく異なっている。
搭載するエンジンは、ジャガー・ランドローバー(JLR)社製の1.5L 3気筒ガソリンターボ。4気筒や6気筒版と親戚関係にあるモジュラー設計のインジニウム・ユニットで、イヴォークPHEVと共有する。
108psの駆動用モーターをリアタイヤ側に搭載するほか、電動化技術として電圧48Vのスターター・ジェネレーター(ISG)をエンジンに結合。減速時や惰性走行時に電気エネルギーを回収し、バッテリーに蓄える。
リアモーターは、135km/hまでの速度をカバー。フル充電なら、最大69kmの距離を電気だけで走れるという。高い速度では、そんなに長い距離は走れないけれど。
システム総合での最高出力は309ps、最大トルクは54.9kg-mある。これだけあれば充分活発で、0-100km/h加速は6.6秒でこなす。最高速度は209km/hに設定される。
軽量なエンジンとATで車重増を相殺
バッテリーの容量は15kWhあり、搭載位置はリアシートの下。標準のディスカバリー・スポーツと比較して、荷室やリアシートの広さに影響はない。
リアに搭載されたモーターが、リアタイヤを駆動。効率を高めるとともに、四輪駆動として効果的にトラクションを得る。フロントの3気筒エンジンは、リアタイヤと機械的につながっていない。
多くのPHEV版がそうだが、カタログに載る燃費の数字は驚くほど良い。WLTP値で62.1km/Lも走れ、CO2の排出量は32g/kmに留まっている。英国では、社用車としての税率でも極めて有利。JLRの自信や期待も高く、実際に販売が好調なこともうなずける。
PHEVのディスカバリー・スポーツは、ドライバーズカーとしても優秀。今回の短い試乗で、それを示してくれた。
エンジンは滑らかで、存在感は控えめ。一生懸命に仕事を始めると、3気筒らしいビートが心地よく聞こえてくる。
信号待ちで、エンジンは自動的に停止。発進時はISGがスムーズに再始動してくれる。加速時の駆動力は、ほとんどをリアモーターが担当しているそうだが、まったく感じ取れないほど自然。スタートダッシュは素早く、エンジンとモーターは見事に統合されている。
トランスミッションは、アイシン社製の8速ATで、変速はシームレス。非常に洗練されている。アイシン社製のATは、従来までのZF社製9速ATより軽量なのだという。
ランドローバーの技術者によると、4気筒より3気筒エンジンは37kgも軽い。8速ATも軽量なため、15kWhのバッテリー搭載による車重増を、ほぼ相殺できているそうだ。
乗り心地や操縦性は高水準
69kmという航続距離も、非現実的ではない。試乗スタート時、バッテリーは85%の充電状態だったが、57kmの航続距離が表示されていた。試乗中、何度か短くガソリンエンジンが介入する場面があったものの、56km走ったところでバッテリーが空になった。
通常のガソリン版やディーゼル版と変わらず、運転は心地良い。イヴォークP300eにも短時間ながら試乗したが、洗練度や剛性感では、わずかにディスカバリー・スポーツP300eの方が上だろう。
ノイズレベルは低く、乗り心地は落ち着いていてしなやか。車内に伝わる路面からの振動は、ほとんどない。ステアリングなど操縦性全般で高い水準にある。高価格帯のランドローバー製モデルと比較すれば、小柄なボディは運転もしやすい。
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツP300eは、印象的なほど上質で、エネルギー効率も優秀。先進的な技術が、日常的な乗りやすさの邪魔をすることもない。
税金や燃費だけで、ディスカバリー・スポーツP300eを選んでも、後悔はしないだろう。それ以上の実力を備えていることに、すぐ気づけるはずだ。
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツP300e Rダイナミック AWD(英国仕様)のスペック
価格:4万5370ポンド(612万円)
全長:4597mm
全幅:1920mm
全高:1727mm
最高速度:209km/h
0-100km/h加速:6.6秒
燃費:62.1km/L
航続距離:69km
CO2排出量:32g/km
乾燥重量:−
パワートレイン:直列3気筒1498ccターボチャージャー+ISG+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:309ps(システム総合)
最大トルク:54.9kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック
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