劇的な最終戦を経て、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がドライバーズタイトル、メルセデスがコンストラクターズタイトルを獲得し、2021年シーズンは幕を閉じた。さあ、新レギュレーションが導入される2022年シーズンに向けた動きに視線を移そう。
2022年シーズンはテクニカルレギュレーションの大幅な変更により、F1界は長い歴史の中でも最大級の技術的な“オーバーホール”を受けることになる。つまり、チャンピオンシップに参戦している全てのF1チーム、ドライバーとしてはある意味リセットとなる。
■2022年、レギュレーション一新のF1。新マシンのどこに”チームの個性”は宿る?
新レギュレーション導入による新時代の到来に加え、2022年のグリッドにはFIA F2から昇格したルーキーが1名、F1の出戻り組が1名加わり、チームを移籍したドライバーもいる。
また、2022年のF1カレンダーには新たなグランプリが加わり、2020年と2021年に新型コロナウイルスの影響を受けて開催中止となっていた日本GPやオーストラリアGPなどが帰ってくると予想されている。
来る2022年シーズンについて、これまでに分かっていることを以下でご紹介する。
■1:F1 2022年ドライバーラインナップ
メルセデスは、2016年末にニコ・ロズベルグが衝撃的な引退をして以来ルイス・ハミルトンのチームメイトとしてバルテリ・ボッタスが走ってきたが、来シーズンからはジョージ・ラッセルがチームに加入。ラッセルは2018年にF2でチャンピオンを獲得した後、ウイリアムズで3シーズン走り、目覚ましい活躍をみせた。その功績が認められ、メルセデスでハミルトンともに2022年シーズンを戦うことになった。
アルファロメオは、前身のザウバーで2001年にデビューし2021年を最後にF1から引退したキミ・ライコネンの代わりに、新たな“フライング・フィン”をチームに迎える。メルセデスを離れ、アルファロメオへ加入したボッタスのチームメイトとなるのは、周冠宇だ。周はF2からステップアップし、中国人ドライバーとして初めてF1にフル参戦する。彼はカーナンバーに24を選択した。
メルセデス昇格によりウイリアムズを離れるラッセルの後任として、チームはアレクサンダー・アルボンを起用する。アルボンはトロロッソ(現アルファタウリ)から2019年にF1デビューを果たし、シーズン途中からレッドブルに移籍。翌2020年シーズンもレッドブルで過ごしたが、成績不振を理由にレギュラードライバーから外され、2021年シーズンはチームのリザーブドライバーとして過ごした。アルボンは1年のブランクを経てF1復帰を果たし、F2時代にDAMSでチームメイトだったニコラス・ラティフィとコンビを組むこととなった。
その他のチームには、ラインナップの変更はない。2021年に1勝を挙げたセルジオ・ペレスは所属するレッドブルとの契約を延長し、引き続きフェルスタッペンのパートナーになる。
フェラーリも2021年と変わらずシャルル・ルクレールとカルロス・サインツJr.のコンビを継続。マクラーレンはランド・ノリスと長期契約を結び、ダニエル・リカルドとともに2022年シーズンを迎える。
2021年にF1復帰を果たしたフェルナンド・アロンソは、2022年もアルピーヌに残留する選択肢を選び、チームはエステバン・オコンと長期契約を結んだ。2021年のF2チャンピオンに輝いたアルピーヌ育成のオスカー・ピアストリは、リザーブドライバーとしてチームに帯同する。
アルファタウリはピエール・ガスリーと角田裕毅のラインナップを継続。2021年はチームとしては前身トロロッソを含めコンストラクターズランキングで最高位タイの6位、歴代最多ポイントを獲得。ルーキーイヤーを過ごした角田は、契約延長に驚きを見せていた。
アストンマーチンも同様に、セバスチャン・ベッテルとランス・ストロールのコンビを継続。2022年に限りあるリソースを振り分けていたハースからは、2021年と同じミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンのふたりが出走する。
■2:2022年のマシンローンチ日程
どのチームも、2022年用マシンの発表日をまだ公開していないが、プレシーズンテストが始まる2月23日までには発表する必要がある。大まかな目安として、2021年は3月12日からテストがスタートするという日程だったが、2月16日にマクラーレンが他チームに先んじてマシンを発表。19日にアルファタウリ、22日にアルファロメオが続けてマシンを発表した。
昨シーズン、最後にマシンを発表したのはフェラーリ。テスト開始のわずか2日前のことだったが、2022年は「2月16日から18日のどこかになるだろう」とマティア・ビノット代表がローンチ日程を示唆している。
■3:2022年のF1マシン−データやデザイン、スピード−
2021年までと2022年用マシンの空力パッケージにおける大きな違いは、グランドエフェクトカー(マシンフロア面が大きなディフューザーとして機能するベンチュリ構造を持つマシン)が戻ってくることだ。
ロータスが1977年にグラウンドエフェクトの概念をF1に持ち込んで以降、他チームもロータスを模倣しF1はグランドエフェクト全盛期を迎えた。しかし、フロア面に大量の空気が入り込み、グラウンドエフェクトを失った際にマシンが舞い上がるという危険性から1982年以降、F1ではグランドエフェクトを生み出すアンダーボディトンネルが禁止された。これまでフロア面が平らなフラットボトムカーが用いられてきたが、近年はむしろグランドエフェクトカーの復活を望む声が大きくなっていた。
フロアではなくフロントウイングやリヤウイングなどの空力パーツで十分なダウンフォースを得るコンセプトを続けてきた現代F1は、それらによって引き起こされる後方乱気流(ダーティーエアー)に長年頭を悩ませてきた。前車から発生するダーティーエアーの中をかき分け進む後続マシンは、コーナリングで必要なダウンフォースを十分に得られずオーバーテイクが難しくなるのだ。そのため、マシン上部の空力パーツを削減しながらも十分なダウンフォースを生み出せるグランドエフェクト復活というアイデアがレギュレーション制定を行なうFIAにとっては魅力的に映ったのだろう。
フロア前部(サイドポンツーン下)に設けられた大きな取り入れ口から入った空気は左右のベンチュリトンネルを通り後方へ流れていく。弧を描くトンネルを通る空気は地面とトンネルとの距離が近づけば近づくほど圧縮され、極度に気圧の低いエリアがマシン底部に作られる。マシン上部との大きな気圧差によってマシンを地面に押さえつけるダウンフォースが生まれるという仕組みだ。
2022年マシンはフロア面で大部分のダウンフォースを発生させることから、フロントウイングやリヤウイングから生み出されるダーティーエアーを削減できるという寸法だ。
かつてのグラウンドエフェクトカーにはフロントタイヤやサイドからの余計な乱気流をフロアに入れないようにブラシやサイドスカートが設けられ、これまではバージボードがその役割を果たしていたが、2022年からはボルテックス(渦流)を生み出すフィンを下部に配置することで、外部からの乱気流を抑えることになる。フロア本来の使い方を各チームにさせるべく、フロア前部に取り付けられる標準の”ティートレイ”(アンダーフロア先端部)が開発されることになっている。
これまでの13インチから2022年から18インチホイールに移行するのに伴い、タイヤも変更される。タイヤを供給するピレリは18インチタイヤの導入に先立ち、各F1チームともにミュールカーを用いたテストを実施している。
グランドエフェクトカーの復活に伴い、新時代のF1マシンからは巨大化と複雑化が進んでいたバージボードが完全に取り除かれる。その代わりに、回転するフロントタイヤから発生する乱気流を抑えるべく、ホイールボディーワークが導入。2009年シーズン以降禁止されていたホイールカバーが標準パーツとして復活し、フロントタイヤ上部に覆いかぶさるように伸びる”オーバーホイールウイングレット”が装着されることになる。
最終戦アブダビGP終了後に行なわれたポストシーズンテストでは、マクラーレンがLEDライトシステムを搭載したホイールカバーを装着して走行実験を行なっていた。将来的には、ポジション表示やデジタル広告として活用される可能性があるという。
現時点ではドラッグ・リダクション・システム(DRS)は継続して実装されることが決まっているが、新レギュレーション下のマシンが期待通りオーバーテイクしやすいモノに仕上がれば、DRSの撤廃も視野に入れている。
新レギュレーション下の仮想マシンを用いたシミュレーションでは、良好な数値が出ている。FIAとF1は、1シャシー分の車間距離で前車を追いかけた際のダウンフォース量は、現行マシンでの55%から86%に増加したことを発表した。ただし、これはあくまでもシミュレーションであり、各チームがオリジナルで作成したマシンが実際にレースを行なうまでは、その答えが正しいかどうかは未知数だ。
また、研究開発コスト削減のため、ギヤボックス開発は2022年から2025年まで凍結される。その間の仕様変更は1度のみ許されている。
サスペンションのレギュレーションでは、スプリングとダンパーは使用が許されている。つまり、空力的に有利なトーションバーのみを使うことはできなくなったのだ。加えて、システム全体を簡略化するべくヒーブサスペンション(ピッチコントローラー)の使用も禁止される。サスペンションのアップライトはホイールアッセンブリー内に入る設計が求められ、外部へ飛び出す設計は認められない。
フロントウイングも再定義され、最大でも4つのエレメントで構成されるように単純化が行われた。ここで最も重要視すべきは、フロントウイングの翼端板の形状が大きく変わったことだ。フロントウイングを構成する1パーツから、航空機の主翼端に取り付けられる翼端板のように1枚の反り返った大きなパーツへと変わった。フロントウイング自体も、フロントノーズに吊るされる形ではなく、1990年代半ばまでのF1マシンに見られたようなノーズに直接つけられている。
リヤウイングも大きく変更が加えられる。これまでリヤウイングのの上に伸びていた翼端板はほとんどゼロになる。ここには、リヤウイングの翼端板から発生するダーティーエアーを削減し、マシンの追従性を高める狙いがある。
来季に向けシミュレーター作業を開始しているF1ドライバーたちは、2022年のマシンは「あまり良くない」としているが、2021年マシンとのラップタイム差は当初の予想よりも縮まると予想している。
■4:2022年のF1カレンダー
F1は2022年に過去最多となる23レースの開催を予定している。
初開催となるマイアミGPは、マイアミ・ガーデンズにあるハードロックスタジアム周辺におよそ5.407kmの特設サーキットを設け、5月上旬に開催される。
また、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航規制で2年連続の中止となっていたオーストリア、シンガポール、日本でのグランプリも2022年のカレンダーに載っている。
オーストラリアGPはカレンダーに戻ってきたものの、コロナ禍より前までアルバート・パーク・サーキットを舞台に開催されてきた開幕戦は2021年シーズンと同様にバーレンで行われる事になった。開幕戦から1週間後の第2戦サウジアラビアGPを経て、第3戦オーストリアGPは4月10日に予定されている。
ヨーロッパラウンドは第4戦エミリア・ロマーニャGPから始まり、アメリカでのグランプリ1レース目となる第5戦マイアミGPを挟んで第6戦スペインGPが行われる。
5月29日の第7戦モナコGPで一旦ヨーロッパラウンドは中断。第8戦アゼルバイジャンGPと第9戦カナダGPを開催した後、再びヨーロッパへF1は戻る。
9月25日の第17戦ロシアGPから、F1のフライアウェイ戦が開始される。2019年シーズン以来の開催となる第18戦シンガポールGPを行なった後、こちらも2年ぶりの開催となる第19戦日本GPを鈴鹿サーキットで続けざまに開催する。
アメリカ大陸でのレースを行なった後、2021年シーズンよりも早い11月20日の第23戦アブダビGPを最後に2022年シーズンは締めくくられるが、これはF1がコンパクトなスケジュールを望んだためだ。
なお、中国GPは2022年シーズンの開催契約を結んでいたが、渡航制限の見通しが不透明のためカレンダーから外された。また、2021年シーズンにF1初開催を果たしたカタールGPは、2022年の11月21日からFIFAワールドカップ開催を迎えるため、その年のグランプリ開催をスキップすることとなった。
■5:2022年プレシーズンテストはいつ始まる?
2022年シーズン開幕に先立ってプレシーズンテストが、ふたつのサーキットで実施される予定だ。テスト前半をスペインのカタルニア・サーキットで2月23日から25日にかけて行なった後、開幕戦バーレーンGP前の3月11日から13日にかけてテスト後半を実施する。プレシーズンテストが2022年用マシンの走行を初めて目にする機会となるが、当然ながら各チームは手の内を隠すだろう。
■6:2022年シーズンに向けたレギュレーション変更
F1は2022年シーズンに向けて、テクニカルレギュレーションの変更に加え、風洞とCFD(数値流体力学)を通じた試験ルールにも手が加えられている。2021年のコンストラクターズランキングに応じて、試験時間数が制限されるのだ。
1シーズンを6つの空力テスト期間(ATP)に分け、1ATPあたり320回の風洞走行と80時間のウインド・オン(風速15m/s以上)、計400時間の風洞実験が許可されている。これが基本値だ。
各チームの順位に応じて、風洞実験を行なえる時間が変動することになる。2021年コンストラクターズタイトルを取ったメルセデスには基本値の70%しか試験が許されず、風洞実験を行なえる時間でハンディキャップを負うことになる。また、ランキング10位だったハースには115%の試験が許可され、他チームより多くの風洞実験を行なうことができるようになる。CFDでの試験も風洞実験と同様だ。
また、2022年シーズンではスプリント予選レースフォーマットでのレース開催が増やされる見込みで、2021年の3戦から6戦へ拡大する予定だという。バーレーンGPやエミリア・ロマーニャGP、カナダGP、オーストリアGP、オランダGP、サンパウロGPがその候補地に挙がっている。
加えて、2022年の予算制限は、2021年の1億4500万ドル(約165億円)から1億4000万ドル(約159億円)に下げられることになるようだ。
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