絶好調のセールスを飛ばし続けているハリアーだが、注目なのは録画機能付インナーミラーがラインアップされている点にある。
ざっくり言ってしまえばルームミラーにドラレコ機能が付いているモノで、後付けする必要がないのだ。BMWやテスラなど一部の輸入車にも採用例はあるものの、まだまだ広まっていない状況である。
なぜハリアーに続かない!? ドラレコ「後付け」主流の現状と今後の動向
ところが、その流れが変わりつつある。新型クラウンシリーズは先進安全装備のカメラを応用し、ドラレコ機能を搭載! それを皮切りに風向きが大きく変わる可能性が出てきたのだ。
だが、国産他社はまだまだ現状維持といった状況。ドラレコは今や当たり前に購入するモノのため、ハリアー&新型クラウンのように純正装着してくれるのはコスト的にもかなり嬉しいはずだ。なんで広まらないのか!?
文/高山正寛、写真/TOYOTA、AdobeStock(トップ画像=morico@AdobeStock)
■現在の市場は圧倒的に「後付け」
ハリアーはミラーにドラレコを内蔵。標準化に向けて一歩踏み出た
今回のテーマである「ドラレコ」はもちろんスマホやパソコンであろうと日々性能は向上、進化を続けていることは当たり前のことだ。
現在半導体を始めとする部品類の不足により自動車産業は深刻な納期遅れが目立っているが、その中でもドラレコ自体はまだマシな方だ。実際、販売の現場でも一時期ほどの品不足は無く、新製品もほぼ予定通り販売されている(もちろん人気モデルは入荷待ちという場合はあるが……)。
そしてそのドラレコは毎年新モデルが発表され、前述したように性能は向上。言い換えると「スペック競争」に陥っている部分も否定できない。画素数の向上、夜間でもしっかり録画できる画質。そして視野角の拡大や現在のトレンドのひとつである駐車時における「監視機能」も市場を牽引している。
現在の販売の動きからここ数年はまだまだ市販ドラレコの市場は堅調だろう。ただ、そこに「待った」をかける存在が登場した。それが「純正装着ドラレコ」の存在なのだ。
■ハリアーはドラレコではなかった
前述したように現行型のトヨタ ハリヤーは2020年6月に発売を開始。その際に設定されたのが「デジタルインナーミラー」。ついにドラレコも純正装着か!と話題になったことは記憶に新しい。
しかし実際のところ、当時トヨタはこれを「ドラレコ」とは呼んでおらず、車両前後の映像を高解像度で記録することを目的としている。
実際、ハリアーのシステムは現在の水準から見てもドラレコとしてのスペックは正直低い。解像度、画角、そして音声の記録ができない点も実用性はあまり高くなかったのが現実だ。
■ADASのカメラを活用する方式が主力
では輸入車はどうなのか、と言えば、当時としては国産車より進んでいた。BMWはADAS(先進安全支援システム)用のカメラを活用した「BMWドライブレコーダー」という機能を「サブスクリプション」で行うなどアプローチとしては斬新であった。
またカメラやセンサーの塊(かたまり)と言えば思い浮かぶのがテスラだ。こちらも搭載するカメラを活用した「ダッシュカム・セントリーモード」をグローバルで展開。
そして最近話題となっているヒョンデ・アイオニック5には「ビルトインドラレコ」と呼ばれる機能を搭載、工場装着の車両で「ドラレコ」という表記は国内では初めてのはずだ。各社それぞれ微妙にアプローチは異なるが、その点も輸入車の方が一歩先を行っていた印象は否めない。
■遂に来た! 新型クラウンにドラレコが初採用!
2022年7月に発表された新型トヨタ クラウン。ついに「ドライブレコーダー」という名称でオプション設定した
そして市販ドラレコにおける日々の進化、輸入車勢の先進性にやや「守りに入っていた」感のある国産車も遂に重い腰を上げる時が来た! それが7月15日に発表された16代目となるトヨタ 新型クラウンだ。
最新モデルらしく、ADAS領域は同社が誇る「トヨタチームメイト」や「トヨタセーフティセンス」をさらに進化させたもの。これだけでも従来より大幅に安全性能を向上させているが、ついにトヨタもこのタイミングで「ドライブレコーダー」という名称で工場装着(ラインオプション)を設定した。
ADASのカメラを活用するという考えは他社と基本的な概念は同じだが、クラウンの場合はフロントはADASカメラ、リアはデジタルインナーミラー用カメラを活用する。冒頭に述べたように市販ドラレコが売れる理由のひとつに「日々スペックが向上する」点が大きい。
一方メーカーの工場装着の場合、カメラの基本的スペックは装着した段階で固定され、たとえOTAを活用しても画質の向上はチューニング程度、根本の解決にはならない。
また自動車メーカーがこれまでドラレコ(名称も含め)を設定してこなかった理由のひとつに「肖像権」の問題もある。これは語り始めるとページが膨れ上がってしまうので割愛するが、昨今のネット時代を鑑みると二の足を踏むのも理解できる。
しかし、クラウンの場合は前述したようにカメラ性能を含めた物体認識能力や車両の制御能力も格段に向上しているとのこと。
気になるカメラの解像度も前後フルHD化(1920×1080ピクセル)されており、現在の水準としても十分通用する。きっかけを作ってくれたハリアーとは正直比較するのはしんどい位なのである。
■完璧ではないが、新しい試みもあり
この新型クラウンのドライブレコーダー、当然のことながら「トヨタ車初」となる。
常時録画は最大約100分で本体内蔵のメモリーに記憶され、満杯になると、いわゆる「上書き記録」をくり返す。
また一定以上の衝撃が加わった場合、前後10秒ずつ合計20秒の映像が別途用意された専用フォルダに記録される。車載Wi-Fiの活用や専用スマホアプリによる映像確認機能など、この辺は市販ドラレコと変わらない。
残念なのは前述したトレンドのひとつである「駐車監視機能」が衝撃が加わった時に初めて録画を開始する仕様になっていること。市販のドラレコの同機能はモデルにもよるが、衝撃を検知する前も録画できるのでその部分はOTAなどによるアップデートに期待したい。
また安全面を考慮して、音声操作による録画に対応した点は大きな訴求ポイントだろう。利用シーンは様々あるが、社会問題となっている「あおり運転」を受けた際など、ステアリンから手を離すことなくマニュアル録画が行えるメリットは大きい。
■なんとヤリスクロスにも設定を開始、トヨタの本気が伺える
2022年7月19日に一部改良されたトヨタ ヤリスクロス。ドラレコ付自動防眩インナーミラーが全グレードにオプション設定された
新型クラウンのドライブレコーダー機能は一部のグレードに標準装備、または「パッケージオプション」で設定される(11万5500円~23万6500円)。単独装着はできないのでそれなりの価格もアップするが、安全面を考慮するとコスパは優れた部類に入るだろう。
と言っている間に7月19日に一部改良された「ヤリスクロス」にも「ドライブレコーダー付自動防眩インナーミラー」が全グレードにオプション設定(5万3900円)された。
ここから見えてくるのは、いよいよ本腰を入れたトヨタが今後発売される新型車、さらにマイナーチェンジなどのタイミングでドラレコを工場装着化してくることだ。
車両と一体設計によるメリットはADASとの協調制御(まだ少ないが)、物騒な車両盗難時の通信を活用した連携、また何よりもカメラが目立たない点などメリットは大きい。価格面はこれから勝負だが、徐々に下がっていくだろう。
今後は市販ドラレコは画質の部分はより高機能に、純正装着のドラレコは車両制御や取り付けた際の見栄えなども考慮した棲み分けするように共存していくだろう。この辺はカーナビのこれまでの歴史と似ているが、それでもまだ市販ドラレコ有利は数年は続くと考えている。
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みんなのコメント
今のディーラーオプションなら最新の市販品の方が良い場合も多いけれど、メーカーのライン装着で車種別専用で安全装備と連携しているドラレコならもっと普及していいと思う。
ただ、360度モニターが欲しいという人もいるので、後付けでも良いかと。